日本代表の中学生プレーヤー田中力「もう慣れたし、気楽にプレーできています」

2018/02/09
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部

ワールドカップ予選の登録12選手入りに意欲

昨年10月上旬の時点ではU-16代表候補の一人でしかなかった田中力だが、ワールドカップ1次予選に向けた日本代表の強化合宿に呼ばれると、そのままA代表に定着した。Youtubeでのクラッチプレー動画で話題となっていた彼が、練習が終わるとすぐさまキー局のテレビカメラに取り囲まれる状況が出来上がっている。A代表に足を踏み入れてから3カ月、『規格外の15歳』はもうすっかりチームの雰囲気に馴染んでいる。

「もう慣れたし、気楽にプレーできています。周りの選手ともコミュニケーションが取れるようになって、楽しくバスケができるようになりました」と田中は言う。練習中でも自慢の1on1では盛んに仕掛け、それについては「タイミングも分かってきているので、こういう時にこうやれば抜ける、というのは分かります」と事もなげに言ってみせる。

課題はディフェンス。まだ成長期にある田中のフィジカルは、成熟した大人の日本代表選手とは比べ物にならない。身体で当たられる、押し合うような展開になれば不利は明らか。練習ではノビノビとやれているが、これが実戦になればそうはいかないことを田中も自覚している。

「一番はディフェンスのフィジカル。スクリーンがかかって、そこで行きたいけどフィジカルで押されて行けなかったり」と言う田中だが、今は毎日3時間の筋トレを欠かさず、プロテインを乗んで身体強化に励んでいるとのこと。184cm72kgの身体では、実戦になればディフェンスで狙い撃ちにされてしまう。もう一つ大事なのは身長で、成長期の間にどこまで背が伸びるかが、田中の将来的なポテンシャルを決めると言っても過言ではない。

体重で言えばあと10kgは筋量を増やしたいところだが、急すぎるサイズアップはバランスを崩すことになるので注意が必要だ。同時にスキルの習得も欠かせない。今回の合宿では足首に痛みがあり休んだそうだが、普段は代表のスキルトレーナーの下で他のどの選手よりも多くのスキルトレーニングを積んでいる。ここは過酷なスケジュールをこなすプロ選手と比べたメリットだ。課題としていた左手でのハンドリングはこの3カ月間で「相当上達した」とのこと。

15歳の彼には伸びしろも先のキャリアもいくらでもあるが、若者ならではの性急さもある。今回の代表合宿でも経験を積むだけでなく、12人の登録メンバー入りをあくまで狙う。「代表に呼ばれたらいいな、ぐらいの軽い気持ちでU-14に呼ばれてすごくうれしくて、そこで自分の力を見せてU-16にも呼ばれて、それで喜んでいたのでまさかA代表に呼ばれるなんて、夢のまた夢かと思ってましたが選ばれました。できればチームに入りたいと思います」

「ファンの方たちには感謝しています」

先日、とどろきアリーナで行われた川崎ブレイブサンダースと千葉ジェッツの試合をフリオ・ラマスが視察に訪れていた。昨夏に日本代表ヘッドコーチに就任したアルゼンチン人指揮官を筆者は何度かBリーグの会場で見かけているが、彼は関係者席ではなく一般の観客に混じって試合を見る。その理由はいずれ直接聞いてみたいところだが、この時のとどろきアリーナには田中力も姿を見せ、隣に座ってあれこれと言葉を交わしながら試合を眺めていた。

「前日に急に連絡をもらって、一緒に試合を見ようと誘われたんです」と田中は明かす。2人が観客席にいれば、当然ながらファンも気づく。大人数で一緒にフレームインしての自撮りや握手など、日本代表の指揮官と最年少プレーヤーは大いにファンサービスをしていた。

「全然嫌ではないですね」と田中はファン対応について語る。「応援してくれる人がいなかったら僕はここまで来れていないと思います。握手したいならするし、写真を撮りたいなら撮ります。ファンの方たちには感謝しているので、絶対にしますね」

Bリーグのファンには少々残念な話だろうが、アリーナの臨場感を前にしても「見てて楽しいとは思いますが、ここでプレーしたいというのはあまりないです。目標はBリーグじゃなくてNBAなので」と、やはり目指すのはアメリカだった。強化合宿で日本代表選手とともにプレーして刺激をもらいながらも、あこがれのステフィン・カリーやカイリー・アービングと同じコートに立つ日を夢見て、田中は挑戦を続ける。