竹内譲次

今シーズンのアルバルク東京は、馬場雄大がアメリカ挑戦でチームを離れ、開幕早々に小島元基が負傷離脱するアクシデントに見舞われたが、結局は誰が出ても力の落ちない総合力を発揮して、東地区優勝を成し遂げた。新戦力がフィットしたことでチーム力が上がったのはもちろんだが、既存の主力選手が揺らがなかったことが、A東京の強さを支えたと言える。その一人、竹内譲次はシーズン41試合すべてに先発出場して主力の働きを見せたが、本人は「サポートする力が乏しかった」と総括する。シーズンを終えた今、Bリーグを代表する日本人ビッグマンは何を思うのか──。

オールスターの打ち上げで感じた折茂の違和感

──シーズン終了から2カ月が経過しましたが、まだ外出自粛が続いています。現在はどのように過ごしていますか?

買い出しは妻が行ってくれるので、僕はほとんど外には出ていません。たまに朝ごはんを食べてすぐとか、人がいない時間帯に子供と散歩をしたりはします。シーズンオフも比較的身体を動かすタイプなのですが、何もしないと逆に疲れが溜まりますね。

──ストレスが溜まる中でおうち時間を楽しむ工夫はどうしていますか?

簡単なものですけど、子供と一緒にご飯を作ったりしています。昨日はパンケーキを一緒に作りました。僕は好きじゃないですけど、子供が好きなので(笑)。

──一般的にZOOM飲みが流行っていますが、チームメートと飲んだりはしませんか?

あまり家では飲まないんです。ZOOM飲みはまだやったことないですが、そういう機会があるなら参加したいとは思います。でも自分から言い出すのは……(笑)。

──なるほど(笑)。先日のBリーグアワードでシーズンが完全に終了しましたが、『折茂軍団』の一員として出演されていましたね。やはり折茂選手への思い入れは強いですか?

そうですね。仕方がないですが、良い形で送り出してあげたかったという思いがあります。今年のオールスターの時に、折茂さんも寂しいんだろうなと感じました。あまり弱いところを人に見せるタイプではないのですが、オールスターの打ち上げではいつもとテンションが違いましたね。最初に一緒にご飯を食べたんですけど、ちょっとテンションが低いというか。チームも勝ったし、MVPも取って文句なしのオールスターだったので、あの流れだったらずっとイケイケだと思ったんですけど。なんかいつもと違うな、寂しいのかなって。それが印象に残ってますね。

引退試合に呼んでいただいていたのですが、それも流れてしまったので、まだちゃんと挨拶できていないんです。新型コロナウイルスが終息したら何かしらあると思うので、その時に今までの思いを伝えるつもりです。

竹内譲次

上達のカギは「やり続けるしかない」

──シーズンの話に移ります。馬場選手が抜け、小島選手が早期離脱と戦力的に厳しかったにもかかわらず、今シーズンも安定した強さを見せ、地区優勝を果たしました。チームの戦いぶりをどのように評価しますか?

ケガ人がいた中でもチーム全員でカバーできたというのは、チームの総合力の証明になったと思います。昨シーズンよりも総合力で前に進めたと感じました。自分たちは一つのことを突き詰めてやってきたので、そこに対して自信を失うことはなかったです。やり抜くだけという気持ちでやっていたので、不安もなかったです。その分、過度な期待もありませんでした。

──期待がないというのは興味深いですね。個人的なパフォーマンスはいかがでしたか?

まず、ケガ人が出たことによって、ウチの三本柱の安藤(誓哉)、田中(大貴)、アレックス(カーク)の負担が増えました。

──そこは竹内選手も入れて『四天王』ではありませんか?

いや、僕は三本柱だと思っています。ルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチが就任してから大きく崩れなくなって、僕はその3人をサポートする役割だと思っています。今シーズンはその3人をサポートする力がまだ乏しかったと感じていて、その負担を分散させることが自分のステップになります。年齢も年齢ですし、もっと効率の良さを上げないと、今後は厳しくなってくると思います。

──NBL時代は平均プレータイムが30分前後で、出ずっぱりの状況でしたが、BリーグになるタイミングでA東京に加入してからはローテーションを守り、ここ3シーズンは平均21分から22分の出場です。数字ではなく意識の面で『サポート役』を受け入れるようになったのはいつからですか?

アルバルクに来たBリーグ初年度からそう思うようになったかもしれないですね。もちろん、主力でいたい思いはありますが、チームの勝利を優先するなら、自分の役割はそっちだと思いました。でも、サポート的なことしかやらないわけではなく、違う部分を伸ばそうと思っています。

──竹内選手のようにトップレベルで長く活躍して、完成された選手がさらに実力を伸ばすことは大変な作業かと思います。

今やっていることの精度を高めることもそうですし、新しいことを足していくことも一つですね。確かに難しいですし、それがチームが求めていることじゃないかもしれないのですが、コントロールしながらやるしかないですね。

ただ、上達のカギはそれしかなく、一朝一夕でできるわけじゃありません。コーチもやり続けることが大事とよく言います。簡単に結果が出なくてブレることもありますが、結局それ以外に方法がないので、やり続けるしかないです。

竹内譲次

「プロ選手であればみんな練習熱心なのは当たり前」

──愚直にやり続けることは精神的に大変ですし、特に練習がキツいと言われるA東京であれば、なおさらかと思います。

これが自分の仕事なので、しんどいとは思いません。キツい練習も嫌いではないし、逆に練習が軽すぎると不安になるので自分には合っているかと。

──日本でもトップクラスの実績を持つ竹内選手が不安になるというのが驚きです。

これでいいのかなって、不安になるんですよ。自分よりも頑張っている選手がたくさんいると思うので、自分がやると決めたことはやり切らないと。それに自分が必要だと思ってやることはさぼりにくいです。

プロ選手であればみんな練習熱心なのは当たり前です。それにプラスアルファして、コーチに言われてやるのではなく、自分で考えて動ける選手になりたいと思っています。

一つの例として言えば、身体に気を付けることです。健康法っていろいろな情報があるじゃないですか。でも結局、何が正しいか分からないですし、今は正しくても来年には正しくなくなっているかもしれない。やらないと分からないので、とにかくやってみることが大事だと思います。

──そういうことをやり続けていれば、目標がなくなることはなさそうですね。

目標って近いモノと遠いモノがあるじゃないですか。漠然とオリンピックに選ばれたいという目標がありますけど、直近の目標のほうが大事だと思っています。自分が納得できるパフォーマンスが練習でできたか、集中して練習ができたか。その積み重ねが未来の目標に繋がっていくと思っています。今はこうした状況なので、パフォーマンスを落とさないように、家の中でやれることをしっかりやるのが目標です。

──それだけストイックだから、今でも最前線でプレーできるのですね。では最後にファンの方へのメッセージをお願いします。

無観客試合では、自分の出せる力以上のものは出せなかったと思います。そういうあと一歩の力、自分を奮い立たせる存在としてファンの皆さんの力が大きいと思いました。僕たちがバスケをしたいようにファンの方も試合を見たいと思っていると思います。今はそれがお互いに叶わない状態なので、選手としても違う形でファンの皆さんが楽しんでもらえる何かを提供していけるようにしていきたいです。

来シーズンが開幕した時には良いパフォーマンスを見せて、ファンの皆さんを喜ばせるようなプレーができるようにコンディションを整えます。もうちょっと我慢してもらって、開幕したら喜びや悲しみを共有したいです。会場で会えるのを楽しみにしています。