文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

杉浦佑成『仕事としてのバスケ』の責任感

サンロッカーズ渋谷は川崎ブレイブサンダースに連敗し、東地区での順位を1つ落とした。だが、新外国籍選手のブランデン・ドーソンが開幕からケガのため出場できず、長谷川智也、広瀬健太、伊藤駿といった主力も故障を抱える状況での18勝10敗という数字は上出来と言える。

だが、激戦の東地区を戦い抜くには新たな戦力補強が必要だった。そこで白羽の矢が立ったのが筑波大学4年の杉浦佑成と拓殖大学の阿部諒だ。

杉浦は昨シーズンの途中に特別指定選手として、大学3年生ながらSR渋谷と契約した。だが思うようなプレータイムを得られず、わずか6試合の出場にどどまり、その実力を証明できなかった。だが今回、川崎との初戦では10分のプレータイムを得て、第2戦では3ポイントシュートを決めるなど、昨シーズンよりも早く結果を残し始めている。

杉浦は意気込む。「すべてを理解しているわけではないので、オフェンス面での貢献は今のところ少ないです。でもここから期間が空くので、チームのことをもっと理解して、チームの一員として見てもらえるようになりたい。ディフェンスマインドのチームなので、まずそこで存在感を出していかないと試合に絡んでいけないと思います。シュートには自信があり、今はコーナーにいてパスをもらって3ポイントシュートという形なので、もうちょっと崩す側にもなっていきたいです」

これまでは後輩を引っ張ってきた立場だったが、「先輩にイジられるほうが好きというか楽なので、今のほうが良いです」とガムシャラに上を目指すだけでいい現在の環境のほうが、杉浦にとっては良い環境のようだ。

表情を変えずに堂々とプレーしているように見受けられるが、「ビビりやすいので無理やり」とポーカーフェイスを取り繕っているそうだ。それでも「お金をもらってバスケットが仕事となっているので、責任が違う」と、特別指定選手での契約だった昨シーズンとは意識が違う。

「阿部といったらディフェンスと思われるように」

杉浦よりも一足先にSR渋谷に特別指定選手として入団したのが阿部だ。拓殖大学では関東大学リーグで優勝を果たし、インカレでは優秀選手にも選出されている。

出場2戦目で初得点をマークし、川崎との第2戦ではチームを勢いづける3ポイントシュートを決めるなど、早くもプロの舞台に適応を見せている。それでも「大学生だったらオフボールではバンプしないですが、プロでは通りすがりの人でもバンプするのでそこが違いますね。身体の違いは感じました」とフィジカルの差を痛感。

もちろんフィジカル面は今後アジャストしていかないといけないが、阿部は高いバスケットIQで勝負をする。「高校の時から自分は身体能力がなく、勝つためには頭を使っていかないといけないと感じてましたし、大学でも個人の能力が高い選手が多い中で、どこで勝てるのかを考えてやってました」

ポジションはポイントガードとなっているが、ポジションに固執するのではなくディフェンス面での貢献が必要と認識している。「今は1番か2番ですが、大学の時もディフェンスのほうができていたので、阿部といったらディフェンスと思われるように頑張りたいです」

杉浦と『同期』であることで「メンタル的には安心する」と心強く感じながらも、「焦りはないけど彼が出る時は刺激になります」とライバル心は抱いているようだ。

2人の現役大学生を獲得しチームの底上げを狙うSR渋谷。まずは試合よりも練習場でのパフォーマンスで信頼を積み上げていく段階だが、フレッシュな2人が切磋琢磨してどの時点で大事な場面を任されるようになるか、これがSR渋谷のチャンピオンシップ出場を大きく左右するかもしれない。