文=泉誠一 写真=B.LEAGUE

天皇杯で意地を見せたB2上位チーム

天皇杯のファイナルラウンドへ進んだ8クラブはいずれもB1勢だった。だが、その一歩手前の3次ラウンド5回戦では、B2クラブがB1クラブを破る下克上が4つもあったことに驚かされる。

秋田ノーザンハピネッツ(B2) 85-83 富山グラウジーズ(B1)
ライジングゼファー福岡(B2) 76-70 大阪エヴェッサ(B1)
愛媛オレンジバイキングス(B2) 90-85 三遠ネオフェニックス(B1)
茨城ロボッツ(B2) 75-74 サンロッカーズ渋谷(B1)

言い訳を考えれば、富山は平均15.9点を挙げているエースの宇都直輝が、三遠は日本人ビッグマンの太田敦也がワールドカップ予選のため不在だった。オン・ザ・コート「1-2-1-2」と固定されている天皇杯だけに、直近のリーグ戦とは異なる布陣で臨まねばならない。

しかし、試合経過を見れば、タレントで上回るB1勢だけに富山は16-12、三遠に至っては17-9と大きくリードを奪って第1クォーターを終えており、その支障はなかった。体格差やプレー強度の違いを生かしてB2勢の体力を消耗させていけば、後半に失速させることができたはずだ。ところが勝負の終盤、逆に勢いを増したのはB2クラブの方であり、いずれも競り負けてしまった。日本代表選手不在の大阪とSR渋谷は言い訳すらできず、不甲斐ない敗戦である。

B2の粘り強さと日本人選手たちの活躍

B2側から見れば、B1と遜色ない力があることを証明できた。B1返り咲きを狙う秋田は、昨シーズン1勝も挙げられなかった富山を破り、B2でも成長できている。B3から昇格したばかりの福岡は、現在西地区の首位に立つ。ライセンス基準を満たせずにB3からのスタートを強いられただけであり、自分たちの強さを示すことができた。B1を目指す意味で、フロントスタッフにも良い刺激を与えられたことだろう。

下克上を起こしたのはいずれも現在B2の上位にいるクラブだった。中地区3位の茨城だが、首位との差はたった1ゲームしかない。その茨城は、2次ラウンドでは劇的なブザービーターで金沢武士団を破って勝ち上がってきた。B1全体でも6位に位置する強豪SR渋谷に対し、名産の納豆のような粘り強さで競り勝ったことは今後の自信につながる。眞庭城聖、前田陽介とともに、ベンチスタートながら高橋祐二も10点を挙げ、日本人選手3人が2桁得点を挙げる活躍を見せた。秋田も中山拓哉と谷口大智がいずれも14点を奪っており、B1を相手にも日本人選手たちが輝きを放っている。

アップセットの勢いで激しさを増すB1昇格争い

リーグ戦が再開となる今週末。その秋田と茨城はいきなり直接対決を迎える。アップセットした両クラブであり、さらに勢いづくのがどちらになるか、楽しみな一戦である。西地区首位の福岡は同じ九州の熊本ヴォルターズとのダービーマッチで、試合前からバチバチと火花が散っている。西地区2位の愛媛は、前節で秋田を破ったくせ者、アースフレンズ東京Zと対戦。B1昇格を懸けて上しか見ていないB2クラブたち。

B2の上位チームは開幕時から一つも落とせない激しい戦いを続けており、だからこそ下克上が起きたのは必然だったと考えられる。

昨シーズン、入替戦で敗れた広島ドラゴンフライズだが、その時が初めてのB1との対戦だった。昨シーズン、B2には天皇杯の出場権も与えられず、「B1と戦える機会があれば面白いのに……なんでないんですかね?」と山田大治がむくれていたのを思い出す。今シーズン、ようやくその機会が回ってきた。勝ち星こそ得られなかったが、レバンガ北海道に59-68と惜しくも9点差で敗れた。第4クォーターだけを抜き出せば21-18と広島が3点上回っており、あきらめずに挑むことで爪痕をしっかり残している。

勝っても負けてもすでに一度対戦できたことで、今シーズンの入替戦は昨シーズンとは違う結果が待っているかもしれない。現在、B1の下位に甘んじているクラブたちにとってはすでにお尻に火がついていることを認め、テコ入れしなければ手遅れになるぞ。