写真=野口岳彦

最高の準備で初戦に臨むも、勝利は手に入らず

国歌斉唱。これまでの代表戦にはないぐらい張り詰めた緊張は、観戦する者のテンションもこれまでにないぐらいに高めてくれた。
『AKATSUKI VENUS』はこの夜がお披露目。チアの日本代表である彼女たちは会場を一つにし、アリーナの雰囲気作りに一役買った。
試合開始前に集中を高めるフィリピン代表。球際の強さ、追い上げられても動じないメンタル、勝負どころでの決定力が光った。
ケガ明けでこの試合に何とか間に合わせた田中大貴だが、代表ユニを着てコートに立てば影響を感じさせないプレーで攻守を支えた。
小さな身体で日本を導く司令塔、富樫勇樹。日本代表の良い時間帯と悪い時間帯は彼の出来とリンクしていたと言っていい。
平日ナイトゲームではあるが駒沢体育館は即日完売、当日には立ち見まで出る大盛況。代表戦が『プラチナチケット』と化した。
センターとして出場しフィリピンの高さに対抗した竹内譲次。パワーでは圧倒されながらも経験豊富な読みを生かし守備で貢献した。
ベンチスタートとなった比江島慎は、コートに出るやいなや自慢のドライブを連発。日本に流れを呼び込むエースの働きを見せた。
立ち上がりの劣勢を受けて投入された篠山竜青。前から激しく当たるディフェンスで相手の勢いを削ぎ、日本の反撃を呼び込んだ。
持ち味が発揮できたとは言いがたい古川孝敏だが、タイムアウトのたびに一番に飛び出し仲間を出迎え、声を出す姿勢は目立った。
宇都直輝、代表デビューの瞬間。プレータイムは5分半と短く無得点に終わったが、重い展開を変える力強いボールプッシュを見せた。
アイラ・ブラウンはチーム最長の32分間プレーし、ゲームハイの15リバウンド。ダーティーワークを引き受けつつ10得点を挙げた。
センターの太田は自らの得点は2だが、後半立ち上がりの日本の猛反撃を演出。『縁の下の力持ち』として攻守に仲間をサポートした。
後半に入り得点ペースが落ちた比江島だが、要所でキレ味鋭いドライブを披露。常にフィリピンのディフェンスに脅威を与え続けた。
スタメン起用されるも前半は存在感を発揮できなかった馬場雄大。後半は気持ちを切り替えアグレッシブに攻め、持ち味を発揮した。
第3クォーター立ち上がりから、13-0のランで日本が猛追。攻守がガッチリ噛み合った時間帯、日本の目指すスタイルが垣間見えた。
張本天傑は11分半のプレーながら、果敢なディフェンスとリバウンド、逆転3ポイントシュートで日本の一番良い時間帯を演出した。
逆転で盛り上がるベンチ。浮き沈みの激しい試合にはなったが、日本代表はベンチの選手やスタッフを含む全員が一丸で戦っていた。
第1クォーターは仕事のできなかった富樫だが、ゲームが進むにつれて調子を上げ、第4クォーターにもう一波乱の展開を作り出した。
速攻からアイラが豪快なダンクシュートを叩き込む。ビハインドが続く展開でチームメートとファンを鼓舞する強烈な一発だった。
ファウルトラブルに陥るも最後までコートに立ち続けた。攻守にバランスの取れた田中に対する指揮官の信頼が見て取れた。
敗戦が決まった瞬間のフリオ・ラマス。勝てない試合ではなかっただけに悔いが残るが、短期間でどう立て直すか、手腕が問われる。
ゲームハイの20得点、数字以外の面でもこの試合で最もインパクトを残した比江島だが、欲しかった勝利は手に入らなかった。