文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「自分たちのリズムでやれなかった」

昨日のフィリピン戦、日本代表は立ち上がりの出来に大きな課題を残した。司令塔の富樫勇樹は先発出場したものの、第1クォーターは7分11秒プレーして無得点。この間、チームは守備で踏ん張ったものの、オフェンスは田中大貴の3ポイントシュート1本だけと不発に終わり、3-14と大きく出遅れた。後半になって一度は逆転したものの、この反撃にエネルギーを費やしたことで最後まで勢いが続かずに敗れている。

「フィリピンの選手に対してディフェンスのフォーカスが強かったのはもちろんですけど、それでもオフェンスの部分で自分たちのリズムでやれなかった」と富樫は振り返る。「一人ひとり積極的に打ったり、打たなきゃいけないシュートを打たずにパスしてターンオーバーになったり、躊躇するところがありました。ターンオーバーよりはシュートを打ち切ったほうが絶対良いので、そこは変えていかなきゃいけないと思います」

富樫自身も、ピック&ロールからの2対2でシュートまで持ち込む得意のプレーが全く出せなかった。「それはもう個人的な問題」と富樫は言う。「自分の意識の中で第1クォーターに積極的にやりたいという気持ちはあって、その中で出だしでしっかりボールを回して全員がタッチして良いオフェンスができるようにと心掛けてもいたので」

結局のところ、富樫でさえもワールドカップ予選という舞台でいつも通りのプレーができなかったということだ。「もっといろんな経験をしてリズムの取り方を勉強しなきゃいけないと感じた」と、富樫も素直に反省点を認めた。

富樫に限らず、多くの選手が最初は丁寧に行こうとするばかりに受け身となった。コートに入ってしばらくはボールが手に付かない選手もいた。国際経験豊富な比江島慎はいきなりエンジン全開のプレーをしたが、富樫も含めて多くの選手がスムーズに試合に入っていけなかった。高い勉強料を払う結果になったが、実体験したことですぐ修正できることでもある。次のオーストラリア戦以降でいかに同じミスをしないかが重要だ。

「明日現地に行ってしっかり切り替えて」

しかし、敗因は立ち上がりのオフェンスだけではない。大きなビハインドを背負う展開にはなったが、後半からコートに戻った富樫はオフェンスを引っ張り、28-37の9点ビハインドから約3分間で40-37と試合をひっくり返しているからだ。それでも富樫は、この逆転劇を「9点ビハインドの場面でカムバックできたのは一つの成長」と言いながらも、敗戦からポジティブな面を拾い出して言い訳しようとはしない。彼が言葉を費やしたのは、その後の展開だ。

「一時的なアップダウンは試合の中で必ずあります」と言う富樫は、その後にまたフィリピンの時間帯が来るのを理解していた。「その3点リードした時の次のディフェンス、次のシュートで点差を広げれられたか詰められたかは大きな部分。そこが変えられたら違う展開になっていたと思います」

第4クォーター終盤に、富樫は得意とするピックプレーからの展開で3ポイントシュート、アイラのダンクをアシスト、そしてまた3ポイントシュートと『らしい』プレーを連発し、残り1分38秒で69-72と1ポゼッション差に迫る。だが反撃はここまで。最終スコアは71-77だった。

「第4クォーターのあそこの部分で離されるのは実力の差だと思うんですけど、それ以上に第3クォーターの一気に逆転できた場面で勝ち切れずに、第3クォーターをそのまま終われなかったのが一番なのかなと感じています」と富樫。

だが、フィリピン戦はもう終わったこと。「次のオーストラリア戦に向けて同じ意識を持って、全員が格上のオーストラリアに勝ちに行く意識を持たないと絶対に勝てないので、そこを徹底して戦いたい」と富樫は言う。「明日現地に行ってしっかり切り替えて、本当に格上の相手ですけど、勝たなきゃいけないので『勝つ』という意識を全員で持って戦いたい」

代表チームは今日、27日のオーストラリアへ向けて敵地へと移動する。今回の反省を生かして試合の入り方、メンタルの部分は至急改善することが必要だ。ただ、戦いはまだまだ先が長い。過度に悲観的になることなく、敗戦を正しく受け止めて成長につなげなければならない。