「ケガのリスクを負って戦う試合ではない」

ある日、NBAコミッショナー、アダム・シルバーのもとへ、クリス・ポールから電話がかかってきた。NBAの選手会会長でもある彼がシルバーに直接連絡を取ったのは、オールスターゲームの新しいフォーマットについて話し合うためだった。

ポールはこう言った。「僕は『The Basketball Tournament』が大好きなのですが『イラムエンディング』(Elam Ending)を知っていますか?」

『The Basketball Tournament』とは自由参加のバスケの大会で、『イラムエンディング』と呼ばれるルールが採用されている。この大会では第4クォーター残り4分を過ぎてプレーが止まったところでクロックを表示しなくなり、リードしているチームの得点に8点加えたスコアに先に到達したチームが勝利となる。

シルバーは「戸惑ってしまうファンもいるのではないか」と言った。彼自身も戸惑っていたのかもしれない。だが、イラムエンディングを参考に新しいフォーマットを考えたいというポールの提案を却下せず、NBA内部で検討することにした。そしてこのアイデアに全員が興味を持ち、イラムエンディング以外の内容も加わり、新しいNBAオールスターのフォーマットが固まっていった。

今回のオールスターゲームでは第4クォーターの時間制限がなくなり、目標スコアである『ファイナルターゲットスコア』を目指し戦うことになった。この「ファイナルターゲットスコア」は第3クォーターまでの合計得点に24点を追加したスコアであり、先にそのスコアに到達したチームが勝利となる。この『24点』にコービー・ブライアントへの追悼の意が込められていることは言うまでもない。

変化を好まない人は多く、内容はともかく変えること自体に批判が伴うことを、シルバーは長年の経験で知っている。それでもNBAオールスターゲームを意味のあるものにするために、勇気を持って今回の変更を決断した。

「スター選手による真剣勝負を見たいファンも多いだろうが、オールスターゲームは選手がケガのリスクを負って全力で戦う試合ではない」と彼は言い切る。その中でエンタテインメント性を高めるための工夫が、今回の変更だ。

選手会とリーグが共同作業で考案した新フォーマットは、果たしてファンから受け入れられるのか。オールスターゲームは2月16日にシカゴで開催される。