文・写真=鈴木栄一

エース不在をカバーするネイミックの奮闘

11月4日、栃木ブレックスが千葉ジェッツと対戦した。長谷川健志ヘッドコーチが先週のレバンガ北海道戦に続き体調不良でチームを離れており、さらにエーススコアラーのライアン・ロシターが欠場と厳しい状況の中、試合の大半でリードする奮闘を見せるが、第4クォーター残り5分から失速。69-76で惜しくも難敵相手の勝利を逃した。

第1クォーター、栃木は欠場の大黒柱ライアン・ロシターに代わって先発出場のアンドリュー・ネイミックがいきなり連続得点を挙げるなど奮闘。ロシター不在の影響を感じさせないプレーにより20-18とリードを奪う。こうして良い流れをつかむと、第2クォーターにはタフなディフェンスで失点を10に抑え、34-30で前半を終える。

後半に入っても栃木のリズムは続き、僅差ではあるが常にリードする展開で第4クォーターに突入。ところが、ここから反撃を許してしまう。

「特に最終クォーターで阿部(友和)選手がハードにディフェンスをして、チームに勢いをつけてくれたことが勝利につながった」と大野篤史ヘッドコーチが称賛した阿部と、西村文男のガードコンビによる堅い守備に苦しむと、ギャビン・エドワーズ、マイケル・パーカーの2人にゴール下で得点を許す。その結果、第4クォーターで12-23と大きく失速したことで逆転負けを喫してしまった。

ファウルトラブルが栃木のブレーキに

栃木の安齋竜三ヘッドコーチ代行は、「練習でやってきたディフェンスの部分は、選手が頑張って出してくれたと思いますが、前回ここ(ブレックスアリーナ)で千葉さんと戦った時と同様、最後の5分に流れを持ってこられなかったことが今のウチの課題。明日はしっかり40分間戦えるチームにしていきたい」と試合を総括する。

第4クォーターの失速については、「ファウルが混んでしまったこと。そして千葉さんが(セドリック)ボーズマンとパーカー選手のマッチアップのところで、ボーズマンにガードをつける変更をした時、ウチが構えてしまいました。それでボールも人も動かない時間が1、2分続いたことでオフェンスの流れが作れなかった。これがディフェンスにも響いてしまいました」と、相手の守備の仕掛けに対応できなかったことを理由に挙げる。

黒星が先行する成績の中、ヘッドコーチに加えチームの絶対的なエーススコアラーであるロシターの欠場は大きな痛手だ。しかし、「ライアンが出られないことで厳しい部分はあります。ただ、逆にドリュー(ネイミック)の良い部分であるスクリーンの強さ、ディフェンスでのブロックなど高さがあるところを生かすことで戦えると思っていました。ドリューもファウルがかさんでしまう前、30分から35分の間は、そういうことをしっかり継続してやってくれました」と、安齋ヘッドコーチ代行はロシター抜きでも戦えることを強調。指揮官の発言の妥当性は、千葉を相手に終盤まで互角に渡り合ったこの試合での戦いぶりが何よりも示している。

「チーム全員がまず同じ方向を向くこと」

長谷川ヘッドコーチが復帰できるのか不透明な中、安齋ヘッドコーチ代行は明日の試合を含めた立て直しへ、次のことを重要視する。「チーム全員がまず同じ方向を向くこと。そして自分たちがダメになった時、誰か一人が下を向いたり、ミスを悔やむとそれが伝染してしまいます。そういう時こそチームで助け合う、切り替えて次のディフェンスに集中する。そこをまだまだ徹底できていないので、一人ひとりが強く意識していかなといけない」

敗れたとは言え、試合内容は決して悪くなかった栃木。「こういう時こそ、チームの力が問われます。今シーズンはまだファンの方、相手チームに、全員で激しいディフェンスをしてからの素早い攻守の切り替えという栃木ブレックスのバスケットボールを見せられていません」。ヘッドコーチ代行がこう語るように、良い内容だけでなく、勝利という結果を得るには原点回帰でこれまで自分たちが培ってきたバスケットボールをいかに出せるかにかかっている。