テーブス海

デビュー戦で12得点2アシスト

「出だしからスピードと視野の広さ、彼の持っているものがかなり出たんじゃないかと思います。想像以上に活躍してくれました」。

この言葉は、宇都宮ブレックスの指揮官、安齋竜三のテーブス海への評価だ。

1月15日、宇都宮は天皇杯を制したサンロッカーズ渋谷をホームに迎えたが、インサイドを効果的に攻められ84-88の惜敗を喫した。それでもテーブスは、20分強のプレータイムで12得点2アシストと堂々のBリーグデビューを飾った。

第1クォーター残り3分、宇都宮が4点リードの場面でテーブスに出番が回ってきた。最初のミドルシュートは外れるも、力強いパスで山崎稜の3ポイントシュートを演出すると、直後には自ら3ポイントシュートを沈めて、リードを拡大。その後も、吸いつくようなボールハンドリングや、高速ドライブからのキックアウトパスでズレを作るなど、特にオフェンス面でインパクトを残した。

SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチも「前半はテーブス海くんにやりたい放題やられていた。判断も素晴らしく、とても良い選手だと思いました」と、テーブスの印象を語る。

以前の取材でテーブスは「ポイントガードはチームが勝ってこそ」と話し、チームの勝敗だけがポイントガードの評価だと語っていた。テーブスのプレーに観客は魅了され、至って普通のキックアウトパスにも歓声が上がったが、テーブスは「負けたので0点です」とシビアな自己評価を下した。

テーブス海

パスファーストの良し悪し

昨シーズンのテーブスはNCAAディビジョン1に所属するノースカロライナ大ウィルミントン校で平均7.8アシストを記録するなど、クリエイトの能力に長けている。彼自身も「パスファースト」を自認し、「チームのために一番良いシュートを打たせる」ことを第一に考えている。

だが、昨日の試合ではライアン・ロシター、比江島慎に次ぐ10本のシュートを放つなど、積極的に得点を狙った。これはパスを警戒するSR渋谷を出し抜くための作戦だったと明かした。

「実は前半にドライブして無理やりパスを出そうとしたら、向こうもパスをすると読んでるからリングにアタックしろとコーチに言われました。自分の一回目の判断はパスを出そうとするので、今日は攻める意識ができました」

結果的にジェフ・ギブスの19得点、比江島の14得点に次ぐ12得点を挙げたが、「チームメートが空いていたら絶対にパスを出しますし、自分が何点取っても、毎回ベストな判断ができたらそれでいいと思っている」と、パスファーストの精神は揺るがない。

しかし、テーブスのパスファーストのプレースタイルはSR渋谷も理解しており、伊佐コーチはあえてテーブスにシュートを打たせるように守り、結果的に勝利を手にした。

「彼はパスが好きな選手と聞いていました。彼がペイントタッチしてヘルプに行ったところで良いシューターをワイドオープンにしてしまったので、そこを下がり気味でいいので、彼のスコアはある程度仕方がないと修正しました」

テーブスも「ピック&ロールでアンダー(スクリーンの下を通って守られること)されて、自分しか空いてない状態だった」と、その時を振り返っている。それでも、デビュー戦にもかかわらず、天皇杯王者が『テーブス対策』をした時点で、どれだけ相手にとって脅威な存在であるかが分かる。

テーブス海

相手を知らないこともプレーに影響

テーブスは素晴らしいパフォーマンスを見せたが、ディフェンス面に課題を挙げ、ターンオーバーも数字では1だが、ミスが多かったことを悔やんだ。

「ビッグマンからの指示が聞こえても早く判断できなかった時とか、ピック&ロールのカバレッジ。ファウルをしてしまったり、最後のターンオーバーは自分のせいだと思っているので、常にミスは直していきたい」

ただ、合流してからの準備期間の短さはプレーに影響していた。「チームのルールとか、セットプレーは全部は覚えてないですし、相手があまりシュートが入らない選手なのにオーバー(スクリーンに対してシュートを打たせないよう追いかけること)してしまったり、シュートが入るのにアンダーしてしまうなどスカウティングのミスとかもありました」

相手選手の特性が分からず、チームルールの徹底ができていないのは無理もない。だが、「ライアンとかジェフは僕にアドバイスをしてくれるので、全部吸収しようとしています」と言うように、助言を素直に受け入れる姿勢があれば、ある程度の時間があればこれらは解決できる。

現在リーグ2位の宇都宮だが、テーブスはチームをさらにもう1段階ステップアップさせる存在になりそうだ。