メンバーを固定しない戦い方がライバルの脅威に
プレーオフに進んだチームの主力ほとんどを残したまま、オフにカワイ・レナードとポール・ジョージを獲得し、豪華メンバーで戦うクリッパーズはその強さを存分に発揮しながら、24勝11敗で2019年を終えました。その戦いぶりは西カンファレンス首位のレイカーズに2連勝する強さがあるものの、順番に欠場する選手がいることもあってチームとしての連携に課題を残し、安定して勝ち続けているわけではありません。
エースとなるレナードの成績はクリッパーズの現状を表しています。平均25.6点と例年通りの得点力を発揮しながら、キャリアハイの5.2アシストを記録しており、個人技での突破が中心ではあるものの、チームメートに合わせることを意識したオフェンスを構築しています。その一方でターンオーバーもキャリアで最も多い3.3となっており、「強さを感じさせるけどミスも多い」というチーム状況と重なります。
リーグ5位となる平均115点を奪いながら、チームのアシスト/ターンオーバー率1.47はリーグ24位と悪く、チーム全体が連動しているようなオフェンスではありません。
本職のポイントガードを置かずに構築しているオフェンスは、スターターではジョージをポイントガードに近い役割にし、レナードとともに2人がそれぞれ個人技を使って崩していきますが、ベンチメンバーになるとルー・ウィリアムスとモンテレズ・ハレルのコンビプレーを中心とした形に変化します。
選手交代に応じてオフェンスパターン自体が変化することで、多少の連携不足が発生してもディフェンスに止められることが少なく、しかもキーマンとなる選手も固定されないため、対策を講じにくいオフェンスになっています。その一方で個人でのアタックが止められるとターンオーバーに繋がり、カウンターでの失点が増えるのが負けパターンにもなります。
A well-balanced line from @kawhileonard to start the year.
? 18 PTS / 6 REB / 5 AST / 2 STL / 1 BLK pic.twitter.com/OGUHAPbQ6W
— LA Clippers (@LAClippers) January 3, 2020
4人で1試合平均87点を奪うカルテットを形成しているものの、4人同時にコートに立ったのはわずかに98分しかありません。その間の得失点差は+68点と驚異的な数字を誇っており、『奥の手』を隠しながら戦っている雰囲気なのが勝率以上にクリッパーズの怖さを感じさせています。
この4人とパトリック・べバリーが中心のチームですが、特定のユニットで固定化するのではなく、周囲の選手の組み合わせで変化をつけることを好み、オールラウンドに守れるウイングを並べてディフェンスを強めたり、ストレッチタイプのパワーフォワードで3ポイントシュートを狙ったり、ガードを増やしてトランジションを増やしたりと多彩な戦い方を可能にしています。しかし、その戦い方は連携が深まらない課題を生んでもいます。
この判断はヘッドコーチによって大きく分かれる部分で、シーズン序盤には起用する選手を絞って連携を深め、形になってからベンチメンバーを増やすチームもあります。クリッパーズが選択したのは余裕のあるシーズン前半に多少の敗戦を受け入れてでもバランスの良い戦い方を探すやり方でした。連携構築に時間がかかるものの、ベンチメンバーも自分の役割をしっかりと感じながら戦え、長いシーズンの中でケガ人が発生しても対応して戦えるチーム力を持つことにも繋がります。
ローテーションを定めておらず、チーム全体の連動性に欠けることで勝利を逃している一面もありますが、時間をかけて個々の強みを活用することを目指してきたからこそ、勝率以上の強さを感じさせています。
ここから少しずつ選手と戦い方を絞って連携を深めていくのか、それとも最後まで多様性を持った戦い方で行くのか。プレーオフに向けてのチームプランが問われるところですが、ヘッドコーチのドッグ・リバースの傾向を考えると、おそらく最後までこの戦い方を続けてくるでしょう。まだまだ完成形とはいえないクリッパーズがプレーオフに向けてどんなチームになっていくのか、楽しみな一面もあります。
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