文=丸山素行 写真=鈴木栄一

インサイドでも得点できる190cmのポイントガード

男子日本代表はワールドカップ1次予選の初戦を1カ月後に控え、3日間の強化合宿を行った。

今回が代表初選出の宇都直輝は「ポイントガードメインの動きがかなり多いですが、しっかりアタックしてファウルをもらったり、外にさばいてシュートを楽に打たせたりと周りをどれだけうまく使えるかを意識してプレーしました」と非公開だったスクリメージでの様子を説明した。

宇都は自らリバウンドを取り、ボールをプッシュしてトランジションを司り、190cmの長身を生かしてインサイドでも得点を狙う。ポイントガードとしてのスタイルは代表の他のメンバーにないものだ。

「僕が選ばれた理由を解釈すると、他のガードの人たちと色が違うので、そこはより出していくべきなのかなと。インサイドで点を取れるのもそうですし、去年アシスト王も取ってるのでパスをどれだけさばけるかを意識しました」とポイントガードとして異色であることを自認し、その強みを生かそうと考えている。

またルール改正もスピード自慢の宇都にとっては代表入りへの追い風となった。「ルール改正でストップファウルができなくなったおかげで、さらに僕の良いところが勝手に増えたので、ラッキーと正直思ってます」

この1年での急激な成長は『意識改革の成果』

選手にとって代表に選ばれることは目標の一つ。宇都も代表への思いを秘めていたが、このタイミングで招集されたことには驚いたと言う。「いずれ呼ばれたいなと正直思っていたのですが、今回の招集は早くてびっくりしました。まだ足りない、もっと活躍しないと、と思ってました。でも呼ばれたのでここで経験を積んでさらに良いガードになっていけたらと思います」

宇都は昨年の11月に発表された68名の重点強化選手にも入っていなかった。それでも富山グラウジーズでの突出したパフォーマンスが評価されての代表入り。彼自身、この1年で大きく成長した自覚がある。その要因が意識改革だ。「去年あたりからメンタル的なことを意識して変えました。チームを引っ張っていく姿勢や審判と戦わないことなど、それが実を結んだと思います」

宇都は闘志をむき出しにして戦うタイプの選手。その感情がうまくプレーに反映されれば強力だが、裏目に出るケースもたびたびあった。強みを残しながら弱点を消す。その取り組みがうまくいった結果、宇都はそのポテンシャルを正しくコートで発揮できるようになった。

また今シーズンから富山のアシスタントコーチを務めるBT・テーブスのアドバイスも宇都のメンタルコントロールの一助になっているという。「試合中に自分がシュートを外したり、仲間がミスしても顔に出すなとか、『リーダーは顔で表す』とBTがアドバイスをくれて、良いメンタルで試合ができています」

今までの代表にはいなかったタイプのポイントガード

富山はボブ・ナッシュからミオドラグ・ライコビッチへの指揮官交代があった。そして代表ではラマスコーチの下で新たなバスケを学んでいる。ポイントガードとして指揮官ごとに異なるスタイルに順応しなくてはならない。それでも宇都は「新しいコーチに学ぶのが好きなので」と意に介さず、ポジティブに現状をとらえている。

「前のコーチと全然違うことを言ってたりしますが、それってどっちが正解でどっちが悪いとかではないので。ラマスコーチやキーチャ(ライコビッチのあだ名)が思い描くことをすべて吸収して、速い展開もスローペースも、どのシチュエーションにも対応できるようなポイントガードになっていけたらと思います」

現在24人の代表候補はここから合宿を重ね、最終的に12人に絞られる。今までの代表にはいなかったタイプの宇都は、このまま一足飛びに評価を高めて代表に定着するかもしれない。そして代表での刺激が、また宇都のポテンシャルを引き出す好循環を生むことにも期待したい。高い向上心と勝利への意欲を持つ26歳は、今まさに飛躍の時を迎えている。