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表敬訪問を渋ったカリーをトランプ大統領が批判

NBAの優勝チームがアメリカ合衆国大統領を初めて表敬訪問したのは、1962年に優勝したセルティックスだった。1963年1月、当時のジョン・F・ケネディ大統領がホワイトハウスでセルティックスを歓迎し、それ以降はNFL、MLBの優勝チームもホワイトハウスを表敬訪問する慣例が生まれた。

だが、昨年秋にドナルド・トランプが第45代アメリカ合衆国に就任したのを機に、この行事は消滅することになりそうだ。

就任当初から人種差別的な言動が目立つトランプ大統領に対しては、NBA内にも抵抗勢力が多い。2016-17シーズン王者ウォリアーズのケビン・デュラントは、先月『ESPN』のインタビューを受けた際、「ホワイトハウスに行くつもりはない」と明言。ヘッドコーチのスティーブ・カーはこの件について「チーム内で話し合って決める」と、柔らかな表現ではあるが選手の感情を尊重する意思を明確に示した。

そして、先週末に行われたメディアデーで、ステフィン・カリーが「チーム内で訪問に関して投票をするのなら反対票を入れる」と語ったことにトランプ大統領が過激な反応を見せたことで、事態に火が付いた。トランプは「ホワイトハウス訪問は、優勝チームにとって非常に名誉なこと。だがステフィン・カリーがそれを躊躇ったので、招待を取り下げる!」とツィートしたのだ。

アメリカ大統領が個人を名指しで批判する事態は大きな波紋を生んだ。この発言を受け、ウォリアーズはトランプ大統領の方から招待を撤回したという事実を発表すると、NBAコミッショナーのアダム・シルバーも、ウォリアーズの選手たちが自身の政治的な考えを積極的に表明していることを「誇りに思う」との言葉で支持する声明を発表した。

さらにはカリーのライバル、キャバリアーズのレブロン・ジェームズも躊躇することなくカリーを擁護した。レブロンは明らかに怒っており、トランプ大統領を直接的な表現で批判した。「ステフは以前から行かないと言っていた。つまり招待するかどうかの話じゃない。そもそも、あんたが現れるまでは、ホワイトハウス訪問は名誉あることだった」

レブロンはその後、『UNINTERRUPTED』に発言の真意を説明する動画を投稿した。NFLの選手たちが試合前の国歌斉唱の際に起立しないことで人種差別に反対する意思表示を続けている行動について、トランプ大統領が「そんな選手は解雇されるべき」と、チームオーナーに向けて発言したことについても触れ「大統領はスポーツを使ってアメリカを分断しようとしている。選手たちは自分たちの権利を主張しているだけで、これは正しい発言とは言えない」と説明した。

『反トランプ』の流れはアメリカのスポーツにまで及び始めた。苦しい思いをして手にした優勝を、国の指導者である大統領に報告することは、アメリカのメジャースポーツで戦う選手たちにとって最高の栄誉だった。だが今回のような前例が生まれてしまった以上、トランプ大統領が退任するまでホワイトハウスを表敬訪問するチームは現れそうにない。