ユージーン・フェルプス

長いウイングスパンと屈強な身体、そしてパスセンス

先週、琉球ゴールデンキングスにとっては痛恨のニュースが発表された。大黒柱ジョシュ・スコットの右膝蓋腱術後再断裂によるインジュアリーリスト入りだ。症状の深刻さから見て今シーズンの復帰はほぼ絶望で、チームが大きなショックを受けたことは想像に難しくない。

その一方で、11月17日の滋賀レイクスターズ戦で、スコットに代わる新戦力ユージーン・フェルプスが光をもたらしてくれたのも事実だ。この試合、琉球デビュー戦となったフェルプスは15得点8リバウンド3アシスト2スティール3ブロックを記録と、攻守に活躍した。

身長198cmは大型ではないが、佐々宜央ヘッドコーチによるとウイングスパンは212cmで、高さで引けを取ることはなさそうだ。筋肉隆々の体格を生かしゴール下でも力で押し込んでいく。身長こそ低いがリーチが長く、パワー満点の選手ということで、宇都宮ブレックスのジェフ・ギブスと同タイプの選手と思われるかもしれないが、それも違う。フェルプスは自ら点を取るより、シュートチャンスを作り出すことにより力を発揮する。

佐々は、自身がかつて栃木ブレックス時代にアシスタントコーチを務めた時に在籍し、2015-16シーズンのNBLでアシスト王を獲得したトミー・ブレントンに似ているタイプと評する。「ブレントンのようにペイントにアタックしながらパスも出せるし、そのままフィニッシュできる。攻撃の起点となってくれる。これまでのチームには今までにいなかった選手ですが、もともと僕がすきなタイプの選手です」

また、指揮官は「最初の予定では天皇杯の2次ラウンドで出られればいいなと思っていました。それが意外と早くビザが得られました。そして特に滋賀さんとの相性が良いと思っていました」と、合流して間もない状況で実戦起用した意図を語る。

滋賀の外国籍は、3番タイプのヘンリー・ウォーカーに加え、ビッグマンのクレイグ・ブラッキンズも3ポイントシュートを積極的に打ってくる。そのため重戦車タイプのジャック・クーリーでは、機動力の面で外のシュートのカバーが不安。動けるフェルプスは、滋賀の外国籍のアウトサイドシュート封じに最適だった。この起用がずばり的中したことは、81-45の圧勝が示している。

ユージーン・フェルプス

「新しいチャレンジを求めて日本を選んだ」

会心のデビュー戦となったフェルプスは、「まずは勝って良かった。これまで7カ国でプレーしたけど、今までで一番熱狂的なファンの皆さんの前でプレーできるのは光栄なこと。でも、連携もまだまだだし、もっとプレーを詰めていきたい」と振り返る。

複数の選択肢の中から新天地として琉球を選んだ理由をこう明かす。「日本でプレーしていた友人が何人かいたので情報を得ていた。ファンが素晴らしく、競争力があってエキサイティングなリーグと聞いていたよ。去年は韓国のKBLでプレーしていて、今年も2チームからオファーがあった。昨シーズンのKBLでは素晴らしい経験ができたけど、新しいチャレンジを求めて日本を選んだ。自分は複数のポジションを守れるので、佐々ヘッドコーチが求めるディフェンスにフィットすると思う。オフェンスでもピック&ロールが得意なので、チームの戦術にうまく合うと思うよ」

佐々ヘッドコーチが、フェルプス加入で何より期待するのは、チームとしてより気持ち良くシュートを打つシチュエーションを作ることだ。「中で起点になってパスをさばいてくれる選手と一緒にプレーするのは、誰にとっても楽しいもの。このリーグの特に外国籍選手は得点面を期待されていることもありますが、フィッシャーでいたい選手が多い。その中で効果的にボールをシェアできる選手がいることで、チームの雰囲気が良くなります。これから彼には期待しかないです。あとは点数をどう伸ばしていくのか、そこの方法を見つけていくことです」

ユージーン・フェルプス

「チームにポジティブな影響を与えられること」

フェルプス本人も、自身の持ち味を「チームにポジティブな影響を与えられること」と言い、味方を生かすチャンスメークへの拘りを見せる。

「このチームでは僕が20点、25点を挙げる必要はない。多くのシューターがいて、3ポイントシュートを打っていける。自分の役割を遂行して、チームにケミストリーをもたらしたい。リバウンド、ディフェンスをしっかりやってパスも出す。それが求められていることだ」

オフシーズンには日本代表経験のある複数の選手が移籍。さらに圧倒的な個の打開力を備えたスコットの離脱で、琉球はチーム一体となって戦うことがこれまで以上に求められる。だからこそ、チームメートの力を引き出す術に長けたフェルプスは、琉球をステップアップさせる特効薬となり得る存在だ。