大学生の気持ち良さに魅せられた、早稲田大学の女子バスケットボール部を率いる藤生喜代美ヘッドコーチの『今昔物語』

2017/09/16
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文=丸山素行 写真=古後登志夫

シャンソンで8年プレーした後に早稲田大に入学

9月2日に開幕した関東大学女子バスケットボールリーグ1部。銀メダルを獲得したユニバーシアード代表12選手のうち、5選手がこの1部リーグでプレーしている。そのうちの2人、田中真美子と中田珠未を擁する早稲田大は、13日に行われた専修大学との試合に勝利し、東京医療保健大学とともに首位につけている。

「とりあえず、ホッとしました」と安堵の表情を見せたのは早稲田大を率いる藤生喜代美監督だ。

藤生は高校を卒業しシャンソン化粧品でプレー。早稲田大に入学したのは現役引退後、そう聞くと違和感を覚えるが「そういう時代だった」と藤生は説明した。「昔の世代はバスケットがしたい人は実業団、そうでもない人は大学っていう時期だったんです。今は大学に行ってからでもいいんじゃないのっていうのがありますが、私たちの時はバスケットボールを本気でやりたいのであれば、大学に行ったらもったいないという時代でした」

藤生が引退したのは2009年。シャンソンで過ごした8年の間に、高校を卒業し大学に進学してから実業団へ、という選択肢が生まれたと藤生は言う。

ポイントガードとしてシャンソンで長く活躍した藤生だが、「向上心や闘争心が、日本一を目指すチームの選手として足りなくなってきてるのを感じたんです。バスケットがお腹いっぱいになってしまった」というのを理由に引退を決める。早稲田でバスケ部に入るつもりはなかったが、総監督の倉石平の言葉を断ることができず練習に参加したことをきっかけに、一度消えたバスケの火が再び灯った。

「受験するにあたって倉石さんのところに話を聞きに行く時に、練習に誘っていただいたんです。やるつもりはなかったのですが断ることができなくて。そうしたら学生がすごく気持ち良く迎え入れてくれて、楽しかったんです」

藤生が大学バスケに関わることになる瞬間だった。

各競技のトップアスリートが集う環境もプラスに働く

こうして再び選手に戻ることになったが、実業団のトッププレーヤーだった自分が大学でプレーをしていいのかという疑問が生じる。「ルール上は問題ないんですけど、はたから見たら『おいおい』ってなりますよね(笑)。私としては縁あって、もう一度バスケを楽しく、なおかつ本気でプレーできる機会をもらえたことは本当に感謝しています。その2年間、早稲田の選手として納得のいく時間を過ごすことができました」と藤生は話す。

ただ、もうバスケットから離れるつもりはなく、早稲田での3年次からはプレーするのをやめて本格的にコーチングの勉強を始めた。当時、早稲田のヘッドコーチをしていた萩原美樹子の下でアシスタントコーチを経験し、昨年からヘッドコーチとなった。

ヘッドコーチとして独り立ちした今、大変なことは多い。それでも「大変だから面白い」と元アスリートらしく藤生は笑う。「選手それぞれがキャラクターを持っていて、個性が違う中でチーム全体を見ながら個別の関わりをしていく、というのが理想です。でもトータルのマネジメントをしないといけないので、余裕がない時はうまくできないのですが、大変だから面白いです」

バスケに限らず各競技のトップアスリートが集う早稲田の環境もプラスに働くと藤生は言う。「トップレベルのチームを見ている先生が朝早くから夜遅くまでずっとビデオを見ている姿を見ると自分も頑張ろうって思いますよね。頑張ってる方が周りにたくさんいるから、自分が大変なんて言ってる場合じゃないなって、それはすごい大きいです」

「素直に純粋にバスケに向き合っているところに感動する」

そんな藤生に大学バスケの魅力を聞くと、こんな言葉が返ってきた。「プレーの一生懸命さはどこにでもありますが、素直に純粋にバスケに向き合っているところや、ひたむきにボールに向かう姿に感動するんです。選手の声の掛け方とか、ベンチの選手たち、それからエントリーされてない応援席にいる選手たちの姿や表情とか含めて生で見てほしいと思います。その空気感を感じでほしいので、会場に足を運んでもらいたいです!」

引退後に自分が大学生となり、大学生特有の『ひたむきさ』に触れたことをきっかけに大学バスケの道を進み始めた藤生。大学バスケのレベルを高め、その魅力を伝えるべく、これからも日々精進していく。