アービングとルバートが両サイドから切れ込む新しい形
新天地ネッツに移籍したカイリー・アービングは開幕戦で50点を記録すると、ピストンズ戦ではキャリア3回目のトリプル・ダブルとフルスロットルで飛ばしています。まだ6試合しか消化していませんが、30.5得点、7.5アシスト、6.5リバウンドはいずれもキャリアハイを超えるスタッツで、新天地で順調なスタートを切りました。
アービングの強みは思うがままにボールを扱えるハンドリングスキルからスピードを落とさず生み出される突破と、ディフェンスに当たっても崩れないボディバランス、そこから放たれる正確なシュート。ディフェンスに生まれた小さなギャップに飛び込んで得点にしてしまう能力があります。加えてドライブからファールをもらうのも上手く、これまでのネッツになかった要素をもたらしています。
ガードコンビを組むことになったキャリス・ルバートもまた豊かなスピードと運動能力でディフェンスを切り刻むタイプで、2人で平均50得点近くを奪っています。ネッツは2人のガードをトップの位置にはあまり置かず、左右のサイドに開かせておくことで、それぞれがドライブするスペースを保つようなオフェンスを導入しました。ディフェンスからすると、サイドを変えるパスでポジションを移動した際に生じたギャップに、スピードある突破をしてくるので後手を踏むことになります。
広いスペースを有効活用する新たなガードデュオが破壊力あるドライブでインサイドを固められると、3ポイントシュートチャンピオンのジョー・ハリスと新加入のトーリアン・プリンスが高確率のアウトサイドシュートを次々に沈めていきます。これまでのオフェンスはコンビネーションを使うパスが中心でしたが、スピードでディフェンスを崩していく新しい形は開幕から機能しており、平均得点は昨シーズンを6.5点も上回る118.7点(リーグ3位)と、さっそくアービング加入効果が発揮されています。
this really doesn't get old pic.twitter.com/Aks4dLZqBQ
— Brooklyn Nets (@BrooklynNets) November 3, 2019
アップダウンの激しい試合展開で負け越しスタート
しかし、ネッツは2勝4敗とチームとしては苦しいスタートに。数字の上では機能しているオフェンスが勝利に繋がらないのは、毎試合のように一方的にやられる時間が生まれてしまうから。大量リードを追いつかれたり、逆に大量ビハインドを追いついたりと、試合の中でのアップダウンが激しくなっています。
アービングかルバート、そしてシックスマンのスペンサー・ディンウィディーの突破から始まるオフェンスは爆発力を秘めている一方で、流れが相手にある苦しい時間帯に、リズムを変えるためにゆっくりとハーフコートオフェンスを組み立てようとすると、スピードという特徴が消えてしまいます。ディフェンスからすると両サイドに展開される可能性が減れば、慌てず待ち構えることができ、守りやすくなるのです。
また得点が伸びた一方でチームのアシスト数は減っており、オフボールムーブの上手かったロディオンズ・クールッツは活躍の機会を減らしており、コンビネーションにはまだまだ課題が残っています。
本来ならば、そんな時間帯にケビン・デュラントにボールを預け、時間を使いながらも高い打点の正確なシュートで繋ぎたいところでしたが、今シーズンの復帰は絶望視されており、アービングを中心としたオフェンスには違うパターンも取り入れていく必要があります。
試合をこなすごとに連携の面は改善していくと思われますが、新加入のエースが好調ながらも、チームが負け越しスタートとなったことは『試合運び』という数字には表れにくい要素の大切さも感じさせられます。ネッツがプレーオフに進んだチームから中心選手を放出してまでアービングを獲得したのは、さらなる高みを目指すため。爆発力を残しながらも、より安定したオフェンス力を構築していかなければいけません。
? Team highlights from last night's WIN ?#WeGoHard pic.twitter.com/CrsUZ3CrPX
— Brooklyn Nets (@BrooklynNets) November 2, 2019