ラッセル・ウェストブルックがもたらす新たな刺激はロケッツを限界突破に導けるか

2019/10/08
NBA&海外
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ロケッツ

ウェストブルックがチームの様々な課題を解決

2年連続プレーオフでウォリアーズに敗れ、チームの再構築も噂されたロケッツ。オフシーズン序盤こそ動きが重かったですが、サンダーがチームの再編を打ち出すと即座に反応し、ラッセル・ウェストブルックの獲得を決めました。その一方で弱点となったインサイド側の層の薄さを解消する手立ては打てておらず、影響力の大きいスーパースターの獲得で大きな注目を集めている一方で、弱点を改善できないまま開幕を迎えることは不安要素となります。

決してシュートが得意ではないウェストブルックが、3ポイントシュートの多いロケッツのスタイルに噛み合うのかが懸念されていますが、フィールドゴールアテンプトが平均24.5本のジェームズ・ハーデンに頼りすぎ、単調だったオフェンスに多彩さをもたらすメリットのほうが大きいはず。止められない突破とキックアウトパスというウェストブルックの個人技はシューターたちをより輝かせてくれます。負担の減ったハーデンのフィニッシュ力も磨きがかかりそうです。

3ポイントシュートを多投するロケッツのオフェンスシステムはインサイドへドライブするスペースがサンダーよりも広く、50%程度しか決まらなかったウェストブルックのペイント内シュートの確率向上が期待されます。このドライブの脅威が増せば増すほど、相乗効果で3ポイントシュートの威力も増していきます。

ただしこれらの要素を総合的に見ると、ミスが少なく堅実でシュートも上手いクリス・ポールと比較して大幅な向上は見込めません。むしろウェストブルックのもたらす他の要素がロケッツに良くも悪くも変化をもたらすはずです。ヘッドコーチにマイク・ダントーニが就任してからのロケッツはラン&ガンスタイルを志向し、リーグで最も早いペースでシュートを打っていました。ところが、ハーフコートオフェンスを好むクリス・ポールがポイントガードになったこの2シーズンは、リーグの中でもペースの遅いチームへと変化していました。

この堅実な試合運びはチームの勝率を上げ、優勝も現実的に狙える安定感をもたらしましたが、2シーズンが経過するとチーム全体の運動量の減少が目立ち、オフェンス力で圧倒する勝ち方が減りました。NBA全体の高速化の流れに反転した戦い方は限界を見せ始めていたと言えます。

自らディフェンスリバウンドを奪って、そのままドリブルでトップスピードに乗るウェストブルックのプレーは、ロケッツが失っていた速攻でのイージーな得点を増やすはず。ポイントガードの変更は本人同士の比較以上にチーム全体への波及効果が大きいため、頭打ちになりかけていたロケッツの戦い方に新たな刺激をもたらすはずです。

また昨シーズン問題だったのはディフェンスリバウンド奪取率がリーグで2番目に悪く、失点を大きく増やしたことでした。これは頻繁にスイッチするディフェンスシステムではセンターのクリント・カペラがアウトサイドに簡単に引き出されるため、そこでシュートを打たれるとリバウンドを確保できず、さらに3ポイントシュートを打たれた後のロングリバウンドへの反応の悪さも原因となりました。

この問題もウェストブルックがカバーしてくれる可能性もあります。トリプル・ダブルを量産するオールラウンダーは誰よりも広い範囲をカバーする驚異的な運動量を誇っており、ロングリバウンドやルーズボールへの反応といったスタッツでは見えにくい部分でロケッツの弱点を埋めてくれそうです。リーグ屈指のハードワーカーであるウェストブルックの加入はロケッツに欠けていた要素を埋めると期待できます。

ウェストブルックの加入は大きな話題と影響力を発揮してくれそうですが、ロケッツが抱えていた本質的な問題を隠してしまいました。それは選手層の薄さで、ライバルとなりそうなクリッパーズ、キングス、ジャズ、ブレイザーズあたりが分厚い戦力を揃えたのとは対照的に、ロケッツのベンチには不安が残ります。

特にインサイド陣はPJ・タッカーとクリント・カペラのコンビは強力なものの、オフに有力選手との契約はできず、働けるシーンが限定されるベテランや未知数の若手をプレシーズンで試すことになります。昨シーズンに活躍したダニエル・ハウス、ゲイリー・クラーク、アイザイア・ハーテンステインといった若手たちが優勝を争うチームの戦力として十分なレベルまで成長することが必要です。その点、トランジションが増えるのであれば若手が活躍するシーンも増えるはずで、日本でのプレシーズンゲームからそのプレーが注目されます。

平均36.1点と歴史的な得点を記録したハーデンでしたが、その負担はあまりにも大きくスタミナを消耗してしまい、またオフェンスパターンも限られてくるため試合後半になると苦しくなりがちです。特にプレーオフになるとエース依存のチームではいずれ限界を迎えます。ミスの多いウェストブルックの加入は安定感を失わせるかもしれませんが、現状打破には必要な刺激なのではないでしょうか。この刺激が良い方向に作用して、ロールプレイヤーも活躍しやすいチームに変化できるかどうか。ここが優勝候補と呼ばれるロケッツの成否を左右しそうです。