文=丸山素行 写真=FIBA.com

古川「1試合通して徹底し、やり続けることが大事」

アジアカップに挑む日本代表は10日のチャイニーズ・タイペイ戦に勝利し、フリオ・ラマス新体制初の公式戦勝利を挙げた。

チャイニーズ・タイペイは東アジアカップで対戦し、73-78と惜敗した相手。それだけに選手も力が入っているかと思われたが、チームハイの15得点を挙げ勝利に貢献した古川孝敏は至って冷静だった。「リベンジしたい気持ちもありましたが、それ以上に自分たちのバスケットをどう展開していくかが一番大事でした」

チャイニーズ・タイペイに先行を許した序盤、古川のジャンプシュートでつないだことが、その後の圧勝劇につながる流れを呼び込んだ。オフ・ザ・ボールの動きから得意のジャンプシュートを沈め、第1クォーターで8得点を稼いだ。

「過去にこだわるよりも、目の前の試合にどう向かっていくかというプランも昨日の練習ではあったので、その部分を1試合通して徹底し、やり続けることがすごく大事です。今日は上手くできた部分が多かったと思います」と『継続は力なり』の精神をコートで表現した。

オーストラリア戦ではベンチから2桁得点を挙げ、チャイニーズ・タイペイ戦では先発に抜擢された。ディフェンスの強度に差はあるが、オーストラリア戦よりもアグレッシブにプレーし、4本だったシュート数は10本に増えた。「試合をしていく中で見えてくることも多くあり、自分たちが成長できるチャンスも多くあると思っています」と語る言葉どおり、オーストラリア戦を経てステップアップしていた。

ディフェンスをかいくぐる篠山「しっかりパスを通すだけ」

ラマスコーチは49点に封じたディフェンスを勝因に挙げた。日本は1対1の対応で守り切ったことでヘルプに行く場面を減らし、その結果、ボックスアウトしやすい環境を作れたことでリバウンドの本数でも相手を上回った。

そのディフェンスで特に目立っていたのが篠山竜青だ。常に腰を低く落とし、抜かれないギリギリの間合いを保ってストレスを与え続けた。篠山も「ディフェンスに関して、自分がスイッチを入れないといけないことは常に意識しています」と話し、前線からプレッシャーを与える背中でチームを鼓舞していた。

指揮官は「特筆すべきは21本のアシストを成功させたことです。ボール回しが上手くでき、そこからシュートを決められる状況を作れたことで、良い試合をすることができました」とディフェンス以外の勝因を挙げたが、この部分についても篠山の貢献が大きい。

日本はこれまでもスクリーンを使ってボールを動かし、ドライブで切り崩すシーンは見られた。だが篠山のパスから生まれた馬場雄大とのアリウープのように、ディフェンスが密集している場所やゴール下への縦のパスなど、効果的ではあれリスクの高いプレーを選択できない傾向にあった。相手の高さや腕の長さを警戒し、ターンオーバーを恐れ安全策をとっていたのだ。

篠山は言う。「オフェンスはピック&ロールから良いズレができているとベンチで見ていても感じていて、そこにしっかりパスを通すだけであり、それがしっかりとチームとしてオフェンスが機能したことが良かったです」。これは裏を返せば、それまでは「パスを通す」ことができていなかったということだ。良いタイミングでスクリーンがかかりパスコースが一瞬開いたとしても、そこにパスを通すリスクを取らずにオフェンスを再セットしていた。

またサイドチェンジのパスはディフェンスにとってスティールされやすく危険なパスであるが、それを逆手に取ることでシュートチャンスも生まれる。相手の動きを観察し裏を取ることでディフェンスは迷い、止めどころを失う。まさにチャイニーズ・タイペイ戦ではそれを体現し、縦と横にボールが動き連動したオフェンスを生み出していた。

まだ2試合を終えた段階ではあるが、古川は25得点、篠山は6アシストでチームトップの数字を残している。アジアカップのような国際大会では『ヒーロー』が生まれることが好成績に直結する。東アジア選手権にはケガで不参加だった2人の、より一層の活躍に期待したい。