トム・ホーバス

「相手の大きさとパワーvsウチの速さと規律」での勝利

試合開始から5分とたたずに2桁のビハインドを背負った、女子アジアカップの準決勝オーストラリア戦。高さとパワーはもちろん、チームで連動した走りからシュートチャンスを作り出す能力はFIBAランク3位の前評判通り。日本にとっては思うように進まない立ち上がりだった。

ただ、相手が強いからこそ日本代表のチーム作りの成果が出た。トム・ホーバスヘッドコーチが「今日の試合は長く感じました」と語ったように、最終スコアは76-64と2桁の点差を付けたが、決して簡単な試合ではなかった。「でも、みんなすごく我慢した。ディフェンスもアジャストして第2クォーターからチームディフェンスが効きました」

チームディフェンスの要となったのはインサイド、髙田と渡嘉敷の粘り強い守りだ。2人ともシュートタッチは良くなく、サイズのあるオーストラリアを相手にオフェンスでは苦しんだが、不調をディフェンスに持ち込むことはなかった。ともに34分のプレータイムを通じて粘り強いディフェンスを続け、インサイドで相手に優位を与えないことで味方の爆発を待った。

爆発のきっかけを作ったのは、流れの悪い中でチーム最初の3ポイントシュートを決めた林咲希であり、3ポイントシュートにドライブで割って入ってのレイアップと大暴れ、ゲームハイの22得点に加え、6アシスト2スティールと活躍した本橋菜子のベンチスタート組だ。立ち上がりは全くシュートが決まらなかった宮澤夕貴も、試合中に自らアジャストしてこの流れに乗る。

「前半はアース(宮澤)があまり良くなくて、ベンチが助けてくれた。第3クォーターから宮澤の3ポイントシュートも熱くなり、本当に良かった。ウチの3ポイントシュートが40%近く入れば相手が大変になる。インサイドアウトのオフェンスのバランスがすごく効きます。アースが3ポイントシュートを決め、菜子もすごく良い仕事をしてくれて、そこから相手が迷っていた。相手のディフェンスを崩すことができました」

女子日本代表

「ちゃんと走ったら相手はリバウンドに行けない」

「今日の試合は相手の大きさとパワーvsウチの速さと規律」とホーバスヘッドコーチは言う。インサイドで相手に優位を与えない統率の取れたチームディフェンスと、そしてスピード。この試合、『大きさとパワー』のオーストラリアを相手にリバウンドで52-45と上回った。ディフェンスリバウンド(36-33)、オフェンスリバウンド(16-12)と、ともに日本が上。これもホーバスヘッドコーチに言わせれば速さの勝利だ。

「やっぱりウチのトランジションは、ちゃんと走ったら相手はオフェンスリバウンドに行けなくなる。相手はディフェンスに戻りたいから、オフェンスリバウンドに行かなくなります。その意味でもウチには速さがすごく必要だと思います」

日本代表は、今夜21時15分からのファイナルで中国と対戦する。昨年のワールドカップで敗れた中国に、ここでリベンジを果たせるのか。それでも、ホーバスヘッドコーチを始め選手たちは自信を持ってこの一戦に臨むはずだ。リオ五輪を終えて新体制になってから築き上げてきたスタイルが間違っていないことは、ここまで十分にコート上のパフォーマンスで証明できている。あとはファイナルでの勝利をつかみ取るだけだ。