取材・写真=古後登志夫

Bリーグや代表チームで活躍する人材を多数輩出する福岡大学附属大濠だが、インターハイでは過去2年連続で1回戦負けという不本意な結果に終わっている。キャプテンの永野聖汰はこの2年の悔しさを身をもって経験してきた。そして3年生になった今、絶対に雪辱すると燃えている。司令塔の中田嵩基は高校生として唯一、日本代表の一員として先日のU-19ワールドカップを戦っている。U-19のエリートであっても「勝ててない」のは同じ。今回のインターハイに懸ける思いは並々ならぬものがある。

ここ2年が失敗続きだったからこそ、また失敗して「今後の糧に」と切り替えることはできない。失敗はもう十分してきた。それを糧に今回のインターハイで頂点に立つ──2人はそのことだけを考えている。

「ディフェンスとブレイクの組み合わせができれば」

──いよいよインターハイ開幕ですが、今のチームの状況はどうですか?

永野 新チームになってから雰囲気が良くなっていると感じます。チームのバランスも良くて、どこからでも点が取れるチームであることは強みになります。フォワードに横地(聖真)が入って得点力が上がりました。ガードの3ポイントシュートの確率もどんどん上がっています。

──中田選手はU-19ワールドカップを経験して戻って来ました。気持ちの切り替えはできていますか?

中田 今回はドイツ遠征もあったのでチームを離れる期間がいつもより長かったです。それだけに帰って来た時には戸惑いもあって、合わない部分もありました。U-19代表はみんな大学生でレベルが高く、パス一つにしても合わなかったり。それでも修正するためにみんなとコミュニケーションを取って、しっかりプレーにつなげようと心がけています。あとは暑さに慣れることですね。

──チームとしてまだ課題はありますか? 中田選手不在の全九州大会では優勝を逃しましたが……。

中田 チームディフェンスが良くなってきたので、今度はそこからのブレイクです。走らないと勝てないですが、ブレイクはまだ噛み合ってないので。ディフェンスを頑張るけどブレイクは出ないとか、ブレイクだけになってしまう時が多いので。そこの組み合わせがしっかりできれば負けないチームになると思います。

永野 全九州大会ではシュートが入らず慌ててしまい、全員がオフェンスリバウンドに入ってしまって走られることがありました。そこはガードはセーフティにやるとか、一人ひとりが役割を理解する必要があります。

中田 映像を見る限り、オフェンスの終わり方が悪くて簡単に走られていました。ウチも走りでは負けないんです。自分が戻って来たので、流れが悪くなった時にはガードが中心となって良い流れをこちらに持ち込むことが自分の仕事だと思っています。その流れを早く持ってくること。行く時は行く、という見極めを大事にしていきたいです。

永野 アンダーでメンバーが抜けると得点源の選手がいなくなるので、そこをみんなでカバーして全員が点を取れるようになっていければいいですね。

U-19で世界を経験した中田「負けるわけにはいかない」

──中田選手は代表で不在の間、チームに対して申し訳なさを感じたりしましたか?

中田 そこはもう代表で良い経験ができるし、そちらが優先だと監督も理解してくれたので。チームのことは気になってはいました。実際に自分抜きでも第一シードを取ってもらいたかったのは正直な気持ちです。とはいえ、バスケットの内容としては改善できる部分ばかりなので、ここから詰めていけば大丈夫。今は良い状態になっています。

僕自身、ワールドカップではプレータイムがもらえないと思っていたのですが、意外に使ってもらえました。世界の大きさや手の長さ、身体能力を経験して帰って来ると「負けるわけにはいかない」と思います。その経験は僕にしかないもので、東山(京都)のカロンジ・カボンゴ・パトリックみたいな選手がガードをやっているのと対戦してきたので、その点はうまくチームにアドバイスできます。

「この経験を糧に次は頑張ります」ではなくて、このインターハイに向けてやっています。今年のチームは去年と違って面白いバスケができると思うので、そこに関しては気負わずに、今年は絶対に決勝に行けるように。そうなればウインターカップにもつながります。そういう気持ちでやります。

──チームを引っ張っているのはキャプテンの永野選手ですか?

中田 はい。キャプテンと副キャプテンの山本(草大)、そして自分が中心となってやっています。前のチームはすべてをネガティブにとらえてしまう傾向にあったので、今回はそこをなるべく明るいムードでやって、なおかつ詰められるところはしっかり詰めることを目標にしています。そこをキャプテンがうまく引っ張ってくれて、自分や山本がまとめる感じです。

──それでも監督に怒られてヘコんでしまうようなことはない?

永野 僕や中田は中学校からああいう指導を受けているので慣れています。でも他の選手は言われたらすぐ下を向いてしまったり、ヘコんだりするので、もっとメンタルが強くなってほしいという思いはあります。

中田 練習中はあえて声をかけないようにしています。自分で考えなきゃいけないと思うので。本当に困ったら聞いてくるので、そこは答えますけど。でも試合になったら別で、先生が怒る前に自分たちで「よし、行くぞ!」という雰囲気を作って、悪循環をなるべく作らないようにしています。練習中はとことん怒られても大丈夫です。

永野「今年こそは絶対に日本一を取るという思いで」

──最近は優勝から遠ざかっている大濠ですが、プレッシャーはありますか?

永野 確かに最近は勝てていませんが、自分たちは日本一しか見ていません。先を見すぎると去年や一昨年みたいに初戦で崩れてしまいます。まずは1回戦から、目の前の試合を頑張っていきます。そのためにはリバウンドやルーズボール、球際です。泥臭くやることを自分たちは心がけています。カッコつけたりクールなプレーはやらないようにしています。

──エリートの大濠だからと天狗になっている選手はいない?

中田 いや、勝ててないんで(笑)。今年はそれを隠さずにちゃんと言えるチームなんです。誰かを気遣うのではなくて「お前、違うやろ」ってストレートに言えるのが今年のチームの強みです。先輩とか後輩は関係なくどんどん言うし、それを聞き入れるチームでもあります。今年は勝たないといけないって全員が分かってます。

永野 自分は結構プレッシャーを感じています。ご飯を食べられないということはありませんが、プレーの判断が悪くなったりすることがあるかもしれません。だからプレッシャーを感じながらも、自分たちらしいプレースタイルでやっていこうとも思っています。

──それでは最後に、インターハイへの意気込みをお願いします。

永野 今年こそは絶対に日本一を取るという思いでやっています。勢いも良くて、みんなすごいやる気があるので、全員で切磋琢磨してやっていきます。泥臭いバスケを見てもらいたいです。

中田 一昨年や去年、すごいタレントが揃っていても勝てなかったのは、泥臭い部分、キャプテンが言ったルーズボールなどの部分の差だったと思います。今年はその点、みんなが泥臭いプレーをしっかりやろうという意識ができています。今年は自分たちらしく、ルーズボールにも飛び込んでいくプレーを見てもらって、感動を与えたいと思っています。そうなれば自分たちもまた成長できると思うので、しっかり頑張ってきます。