佐古賢一

世界と戦い、あらためて明らかになった他国との違い

日本代表のバスケワールドカップは、5戦全敗で終わった。この結果を『現場』はどのようにとらえているのか、モンテネグロ戦の前日に、アシスタントコーチを務める佐古賢一に聞いた。

プレーヤーとして、そして指導者として20年以上に渡って世界と対峙している『Mr.バスケットボール』は、他国と積み重ねてきたものの差を挙げる。「いろいろな順序を追っていくと、一番はこの大会に出ている各チームが築き上げてきただけの歴史、重みが日本にはない。我々はBリーグができてこういう形になり、良い世代が出てきて、若い選手たちが希望をすごく高いところに持って臨みましたが、目標に届かなかった」

さらに佐古は、初戦のトルコ戦で序盤から2桁の点差を許し、そのまま押し切られての完敗を喫したことのダメージを語る。

「初戦を落としたことによって、自分たちのバスケットを信じきれない部分が出てきた。そういうところは若さだと思います。また、初戦のゲームの入り方がまずく、最初から追いかける自分たちの思惑ではなかったなど、いろいろ感じるものはあったと思います」

男子日本代表

「このチームにはすごく可能性がある」

様々な部分で世界との差が明らかになる中でも「戦術が間違っているとか、そういう問題ではない」と佐古は言う。「ゲームへの入り方、プレッシャーに対しての排除の仕方など、いろいろなことに対する経験値が足りていません」と経験不足を強調する。

また、長らく世界と戦ってきている佐古本人の感覚でいえば、世界との差の本質的な部分に変化はない。「もちろんバスケットはずっと進歩していますし、新しい情報が毎年いっぱい出てきます。でも根本的な戦っている感覚で言うと、20年前も今も変わらない。あくまでも僕の考えですけど」

「いろいろな試合を見て、このレベルの中でも特にすごいなと思う選手に関しては次のプレーを読めるゲーム勘、予測能力の高さをすごく感じます。それは20年前、超一流と言われる選手に自分がついた時にも感じたものです」

結果が示すように世界との差はとてつもなく大きい。しかし、佐古は「ただ、このチームにはすごく可能性がある。個々のスキルレベルや、今まで日本のウィークポイントだったビッグマンのサイズ感など、大きな希望はあると思う」と断言する。また、自身がすごいと感嘆したような予測能力についても、「今の日本代表にはそこに達する可能性がある選手がいる」と続ける。

佐古賢一

「続けて世界と戦うチャンスはこの世代が本当に初めて」

今大会が日本にとって実りあるものとなったのか、その成否は1年後の東京オリンピックの戦いで明らかになると考える。

「今までの日本の歴史を見ると、単発でワールドカップを経験する世代はいても、続けて世界と戦うチャンスがあるのはこの世代が初めてと言っていいくらいです。今回得たものを来年のオリンピックでどう生かしていけるのか、たぶんそこがすべてです。皆さんが思っているような、期待ができるチームですから」

ワールドカップ以上に過酷な戦いとなるオリンピックで、果たして日本がサプライズを起こせるのか。そのためには、今のスタッフ陣で誰よりも日の丸をつけて世界を相手に戦ってきている佐古の知見、指導力に期待する部分も大きい。