決戦の舞台は聖地、代々木第2体育館

2連勝で王手を懸けたアイシン三河に対し、第3戦で東芝神奈川が一矢報いて2勝1敗。3連勝で決まらなかったことにより、NBLの前身である日本リーグ時代から長きに渡って数々の名勝負を繰り広げてきたバスケの聖地・代々木第二体育館でラストシーズンのチャンピオンが決まることになった。

ここまでの3戦は両チームの『表』と『裏』、つまり良い面と悪い面の両方が見られた。第1戦、東芝神奈川がスタートダッシュに成功。しかし、牙を向いた王者アイシン三河が流れを呼び込み、前半で東芝神奈川を捕らえる。オンザコート1と2の時間帯でメンバーを総入れ替えする東芝神奈川だが、ベンチメンバーが5点しか挙げられず、65-70で逆転負けを喫した。

第2戦、橋本竜馬が思い切り良いアタックを仕掛けて第1ピリオドで13点を挙げ、今度はアイシン三河が序盤から10点リードを奪う。消極的になった東芝神奈川のオフェンスはボールを回すだけオフェンスとなり、リードを守るアイシン三河の盤石な試合展開となった。

攻め手を欠いた東芝神奈川はガマンし切れずにニック・ファジーカス、ブライアン・ブッチの両外国人選手がファウルアウト。74-63で勝利したアイシン三河が2連覇に王手を懸けた。「負ける気がしない」と自信に満ち溢れていたのは、エース比江島慎だった。

対する東芝神奈川のキャプテン、篠山竜青は「ギクシャクしてしまったところが修正できず、最後までこの点差のまま終わってしまった」と反省点を挙げる。北卓也ヘッドコーチは、「コート上で問題を解決しようとしてないところが一番問題」とコミュニケーション不足を指摘。第2戦を終えた時点で、大田区総合体育館でNBLのラストシーズンが終わると予想した人は少なくはなかった。

ファイナルの第1戦と第2戦で連勝。前年王者の強さを見せ付けたアイシン三河。

裏と表が入れ替わった第3戦

一夜明け、前日とは真逆の展開となった第3戦。「もう後はないという形で終始激しく、東芝神奈川がやりたいオフェンスを完璧に近いほど気持ち良くやられてしまった。ファジーカス選手もそうだが、特に辻選手にはあまりにも気持ち良くやられすぎた」とアイシン三河の指揮官、鈴木貴美一もこの日はお手上げだった。

辻直人は3ポイントシュート7本を含む30点を挙げ、ニック・ファジーカスは25点とダブルエースが本来の力を発揮。第2戦の東芝神奈川同様に、今度はアイシン三河がガマンし切れず、桜木ジェイアール、アイザック・バッツがファウルアウトしてしまう。88-73、東芝神奈川が息を吹き返す1勝目を挙げた。

3先勝方式のファイナルは綱渡りのようだ。

ピンと張り詰めた緊張感という綱の上を、慎重かつ大胆に進まねば、勝利へ向かって渡り切ることはできない。第2戦、3戦はそれぞれ勝利という向こう岸を見ず、足元ばかりを気にするようにレフェリーと戦ってしまったことで、張り詰めた綱がプツンと切れてしまい1勝1敗の痛み分け。

もう後がない東芝神奈川だが、次戦に勝てば2勝2敗で並び、アイシン三河にプレッシャーを与えられる。逃げ切りたいアイシン三河は、焦らずに王者の戦いをしてあと1勝を挙げるだけだ。

『表』も裏も出たこの3戦をしっかり分析し、どちらが冷静に綱を渡り切れるかどうかがカギとなる。運命の第4戦は6月4日(土)15:00TIP-OFF。東芝神奈川が勝利すれば、翌5日(日)に最終戦が行われる。願わくば、どちらも『表』を出し切る最高の週末になれば良い。

後がない状況に追い詰められた第3戦を会心の試合運びで制し、息を吹き返した東芝神奈川。