取材・写真=古後登志夫

延岡学園と県立小林の2強体制が長らく続く宮崎県。延岡学園はベンドラメ礼生や岡本飛竜など後のBリーグのスター選手を擁して高校3冠に輝いた2011年など印象的な活躍が続く男子に比べ、女子は県立小林の壁をなかなか越えられずにいる。それでも今回の宮崎県予選では決勝リーグで県立小林に競り勝った。3年生の選手にとっては高校生活で最初で最後のインターハイ出場のチャンスを見事モノにしたことになる。内村昌弘監督に意気込みを語ってもらった。

「女子を指導する面白さや魅力が分かってきました」

──県立小林のご出身ですよね? まずは簡単に自己紹介をお願いします。

鹿児島出身で小林高校に進学し、先輩たちが頑張ってくれたおかげで熊本国体で優勝しました。その後は2年連続でウインターカップ準優勝を経験させてもらいました。北郷純一郎先生にお世話になって、大学を出た後にも北郷先生に声をかけていただき、延岡学園で勉強させてもらっていた時の2011年にウインターカップで優勝するなど、貴重な経験ができました。

そこで女子チームも強化しようということで、私が監督になって6年目になります。3年目にインターハイに行きましたが、ここ2年は勝てず、今年ようやく雪辱を果たしました。

──もともと男子を指導していたのが女子の担当になり、苦労もあったのでは?

こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、男子と女子では全く違うので苦労だらけでした(笑)。男子は乗せれば空も飛ぶというか、褒める基準が大事です。ところが女子はそれだけじゃなく、どこを叱るのかという基準も持っておかないといけない。女子はネガティブになりがちなので、叱り方を間違えてはいけないんです。バスケットの技術を教える上でも粘り強く、粘り強くやっていかなければいけない。男子の指導しか経験がなかったし、自分もおだてられると「ウォーッ」と乗っていくタイプでしたから、女子を教えるのは最初は難しかったですね。

でも、またこう言うと失礼かもしれませんが、女子は一度信頼関係が出来上がってチームになると、コーチである私を含めた『チームを信じる力』というのが男子よりも強いと思います。正直なところ最初は「男子のほうが面白い」と思うところもあったのですが、ここにきて女子を指導する面白さや魅力が分かってきて、私個人としても充実しています。

「3年生を中心に上から下まで仲の良いチームです」

──今年の延岡学園はどんなチームですか?

ウチは留学生がいるのが最大の特徴ですが、まだ2年生と1年生の非常に若いインサイド陣なので、「ここに依存するバスケットじゃ勝てないよ」と3年生にはいつも言っています。アウトサイドは3年生がほとんど、2年間悔しい思いをしてようやく出られるインターハイなので、その苦労を晴らすためにも留学生を使いこなすんだぞ、と。留学生にもその思いが伝わっています。ワガママし放題みたいなイメージを持っている人もいるかもしれませんが、みんな真面目にチームのためにやってくれています。

おかげで留学生に依存しないし、自立できていて、チームとしてのつながりもあります。ウチは3年生を中心に上から下まで仲の良いチームです。

──留学生の選手について、もう少し詳しく教えてください。

1年生のファーロンは身長が193cmあるんですけど、バスケットでは素人に近いです。でもこの選手を上級生がみんなかわいがって育てている。バスケットのプレーもそうですし、プレー以外でのベンチでの接し方やアップの仕方、ファーロンをみんなで育てている感じがウチのカラーなんじゃないかと思います。

ファーロンの表情や、ファーロンに接している周囲の雰囲気を見て楽しんでもらいたいです。バスケット的にはディフェンスを頑張って走るのが軸となっていて、そこに高さを融合できればいいかなと思います。もちろんバスケットもですが、オフショットの部分がウチのチームを表しているので、そういう部分も見てください。

「コートの中とベンチが一つになれるチームです」

内村昌弘監督が「上から下まで仲の良いチーム」と自慢する延岡学園。キャプテンでシューターの白川万智(写真右)が「上下関係があまりなくて、元気が良い」とチームを表現すれば、フォワードの千々岩美菜(写真左)も「コートの中とベンチが一つになれるチームです」と仲の良さを強調する。

白川は前十字靭帯損傷の大ケガを負い、2年生の時はほとんどプレーできなかった。「手術をして8、9カ月はバスケができず悔しかったです。でもケガしてる分、外からバスケを見て得たことを復帰して生かせるようになりました。それをインターハイでもつなげていきたい」と語る。

高校ラストイヤー、キャプテンとして県予選を勝ち抜き、インターハイ行きを決めた。「今まで築いてきた信頼関係とかコミュニケーションの大切さとかをインターハイでもしっかり出して、他のチームよりも仲の良さをしっかりアピールしながら頑張っていきたいです」と白川は言う。

千々岩もケガに苦しんだ一人。ようやく巡ってきたインターハイというチャンスに懸ける思いは強い。「1年生からずっと2位で、勝ってみんなで泣きました。負け続けてきた私たちには初めてのインターハイ、自分たちらしく、みんなで仲良くいきたいです」