文=丸山素行 写真=FIBA.com

「スピードとボールキープ力」で代表に選出

U-19ワールドカップを終えた戦士たちは7月11日に帰国。空港で出迎えた東野智弥技術委員長に大会結果の報告を行い、チームは解散となった。

今大会で大きく成長したのが全7試合で先発ポイントガードを務めた重冨周希だ。昨年のU-18アジア選手権では代表落ち。そこから当時3年生でキャプテンを務めた福岡第一高校でインターハイとウインターカップの2冠を制覇。今年に入ってから代表候補に復帰すると、最終メンバー12名に入るだけでなく先発の座も勝ち取った。

「ガードのポジションが5~6人いたので、そこでポジションを勝ち取りこのような経験ができたのは大きいです」と重冨は満足気な表情を浮かべる。「スピードとボールキープ力が持ち味なので、それを最大限に発揮したことがヘッドコーチに認められたのかなと思います」と選出理由を分析。

実際、自分より一回りも二回りも大きい相手に激しいプレッシャーをかけられても、重冨は持ち前のキープ力を発揮。前線からのプレッシャーディフェンスに落ち着いて対処したことで日本のペースを作り出した。

また持ち味に挙げたスピードでも、世界で通用することを証明した。ボールをプッシュして素早いトランジションを作りだし、ドライブで敵を切り裂いた。特にドライブに関しては「最初は止められてしまうんだろうなと思っていましたが、初戦を戦ってみて『意外にいける』と感じました」と、思わず笑顔を見せて手応えを語った。

身体の強さも重冨の魅力の一つだ。トップスピードで強引に突っ込んでくる相手に対し、当たり負けせず出足を遅らせた。「走りの中ではそんなに当たり負けは感じなかったです」と重冨。逆に相手に接触してファウルを取られた際に「これがファウル?」といった表情を浮かべるシーンが頼もしく、印象的だった。

課題は「シュート精度とゲームメーク」

八村塁の加入がワールドカップでの躍進に大きく寄与したことは間違いない。それでも合流のタイミングが大会直前となり、連携面に難があった状態であれだけのパフォーマンスができたのは、周りの選手の協力があってこそだ。絶対的な個に対し、「自分が逆に合わせる。向こうがやっていることを見て、そこに自分が合わせていく」と重冨は明かした。

「外国の選手にも通用する選手なので、そこで自分がコントロールしようとすると、彼の持ち味が出なくなる可能性がある。自分が合わせるほうで考えていました」

司令塔の重冨と得点源の八村の連係は、急造とはいえ十分に機能した。その結果、八村は全体2位の平均20.6得点を挙げ、重冨もチームトップの3.9アシストを記録した。

自分の良さを生かしポジションを確保した重冨だが、得点力不足やターンオーバーの数など課題も自覚しており、「もっとシュートの精度と、ガードとしての視野の広さ、ゲームメーク的なことを個人的に考えていけたら」と語る。

特に彼が気に掛けるのは司令塔としての能力の向上だ。「ゲームコントロールの仕方をもっと考えると、自分のプレーの幅も広がるし、他の選手のプレーも広がってくると思います」

最後にワールドカップの中で最も楽しかったことを尋ねると、少し考え記憶をたどり、こう答えた。「楽しかったことはマリ戦で勝てたことですね。チームで最初に勝てたことが一番です」。これは重富に限らない。帰国した誰に聞いても「今回のチームは楽しかった」と口を揃えていた。

大会を通じて貴重な経験を積み、ポイントガードとして大幅にステップアップした重冨。専修大学に戻れば、一緒に世界へ挑んだ仲間はライバルへと姿を変える。そのライバルたちと切磋琢磨し、さらに成長した姿をいずれ披露してほしい。