
「チームが前身するために必要だったと信じている」
セルティックスがジェイレン・ブラウンを放出した反響は、バックスのヤニス・アデトクンボより大きかった。バックスは勝利のサイクルを終え、ベテランとなったヤニスと道を違えるのは理解できる。しかし、セルティックスがブラウンを放出した理由は誰も理解できず、そのために様々な噂が飛び交うことになった。
ブラウンの人格否定や、ヤニスとのトレード要員になったことでフロントと対立した、オーナーグループがブラウンの年俸を無駄な出費と見なして放出を命じた、などの噂は多岐に及んだ。黙ったままでは混乱が広がると見たブラッド・スティーブンス球団社長と代表オーナーを務めるウィリアム・チズムは、このトレードを説明する会見を行った。
スティーブンスは、ブラウンの10年間に渡るセルティックスへの貢献に感謝し、「私にとっても辛い決断だった」と自分の心境を語った上で、このトレードはあくまでバスケの観点で検討し、決断したことだと説明した。
「今のチーム状況とNBAの進む方向性、今シーズンの素晴らしい戦いぶりが今後数年でどう変化するかを総合的に考え、このままでは今後は困難だと結論付けた。キャップの70%が2人の選手に集中するチームでNBAを勝ち抜くのは難しい。今シーズンに結果を出したチームを見ても、重要な個人をサポートする選手層の厚さが不可欠であり、そのためにはキャップの柔軟性が必要になる」
「ジェイレンには何の問題もなかった。彼がチームにいればプレーの中心に据え、多くのポゼッションを託すべきだが、それよりも選手層を厚くしてバスケを多様化する道を選んだ。この決断が批判されるのは覚悟している。その上で、今はただ皆さんと同じようにジェイレンが去ることに寂しさを感じている」
ブラウンの代わりとなる戦力はポール・ジョージ。彼もまたマックス契約を得ており、セブンティシクサーズ加入後はケガが相次いで信頼に応えられなかった選手だ。ジェイソン・テイタムと2枚看板でチームのレジェンドになりつつあったブラウンの対価としては「馬鹿げている」とファンが怒るのも当然だ。
ただ、2人ともスーパーマックス契約を結んでいても、ブラウンの残り3年1億8300万ドル(約280億円)に対し、ジョージの残り契約は2年1億1000万ドル(約170億円)と小さい。さらに「ジェイレンは主役として輝く選手だが、ジョージはサポートの役割もこなせる」と、オンコートの評価をスティーブンスは強調し、『使用率』もキーワードに挙げた。テイタムをエースに、ジョージはチームオフェンスを動かす役割に回し、他の選手がオフェンスに絡む回数を増やす。今シーズンにブレイクしたバイラー・シェルマンやウーゴ・ゴンザレスといった若手がさらなる成長を遂げるには、彼らにもボールを手にして攻める機会を増やすべきで、そのためにブラウンを犠牲にした。
He went to war for our city 😤 pic.twitter.com/nWzceP8EAz
— Boston Celtics (@celtics) July 7, 2026
スティーブンスは悩みに悩んだ末、それでも正解かどうか確信を持てないまま決断したことを正直に明かした。口調は淡々としていても、その言葉は悲痛な叫びのようだった。
「仮に『自分たちが指名した選手であれば、スーパーマックス契約を結んでも25%しかキャップに計上しない』というルールがあれば、彼を放出することは絶対にない。しかし、現実はそうはいかない。優勝した時は2人でキャップの47%だった比率がどんどん上がっていく中で、強力なロスターを維持し続けるのは不可能だ」
だからこそ、スティーブンスはブラウン本人がこの移籍に納得していないことを気にする。選手も自分の意見をいくらでも発信できる今、ブラウンはシクサーズへのトレードが決定する前からライブ配信で自分の気持ちを率直に話してきた。「移籍も仕事のうちだから受け入れるが、トレードの過程で僕に対するリスペクトはもっとあって良かったと思う」というのがブラウンのスタンスで、セルティックスのやり方を快く思っていないのは間違いない。
「彼がそう感じたなら申し訳なく思う」とスティーブンスは言った。ブラウンが加入した2016年は、スティーブンスがセルティックスのヘッドコーチになって3年目のこと。10年間の在籍のうち前半の5シーズンはヘッドコーチとして、そこからフロントに転身して球団社長として、スティーブンスはブラウンと強固な関係を築いてきた自負がある。
「この10年間、私たちは常に本音で語り合ってきた。エージェントも含めて私の考えは説明したし、どのチームが興味を持っているかも伝えてきた。それでも私のやり方が十分でないと彼が感じたのなら、それは私に非があったのだろう。彼とはいずれ、じっくり話し合いたい。難しい決断だが、チームが前身するために必要だったと信じている」