伊藤達哉

プロ3年目のシーズンを、伊藤達哉は大阪エヴェッサの一員として迎えることになった。外国籍選手が待ち構えるゴール下に果敢に飛び込んでいく積極的な姿勢が持ち味の伊藤だが、新天地となる大阪では司令塔としてチームを動かし、勝利に導くことを重視していく。夏真っ盛りのある日、練習を終えたばかりの伊藤は「死にそうなぐらい走ってます」と苦笑いしながら、昨シーズンの屈辱、大阪での意気込み、そして日本代表への思いを語ってくれた。

外国籍頼みの京都「立て直せなかったのはガードの責任」

──新シーズン開幕に向けたチーム練習がスタートしました。現状どんな感じですか?

エヴェッサの練習開始が結構早くて、最初からハードな練習をやっています。最初は外国籍選手が来ていませんでしたが、シューティングだけじゃなくランメニューが初日からあったことには正直「こんなにやるの!?」と驚きました。

京都にいる時は、最初は一番の年下で、ベテランのチームメートが多かったので甘えてばかりでした。逆に大阪は若い選手が多いです。(今野)翔太選手のようなベテランもいるんですけど、年齢の近い選手が多くて自分から動くという意味ではやりやすいですね。合田(怜)選手はミニ国体で一緒だったりして、スムーズにチームに入れました。練習中から切磋琢磨して、今は良い意味で激しく楽しくやっています。

──昨シーズンを振り返ると、何度かケガでの欠場があって難しかったと思います。

ずっとポイントガードとして試合に出させていただいて、上手くいかないことが多かったです。チャンピオンシップに出るという最低限の目標も果たせず、悔いの残る終わり方でした。その前のシーズンにチャンピオンシップに進んで、アルバルク東京と良い試合をして、敗れたのですが良い終わり方ができたと思うんです。メンバーもほとんど変わらずその次のシーズンに行ったので、チャンピオンシップ進出は当然で、それより上に行こう、優勝チームのA東京に今度は勝とうという気持ちだったので、悔しい終わり方になりました。

昨シーズンの京都は外国籍選手の2人が中心でやっていて、その2人が動けていたら良い時間帯だし、そうじゃないと悪い時間帯で崩れていく。その中で立て直せないのが一番の問題だし、それはガードの責任だと思っていました。そこは悔しかったですけど、学ばせてもらったことは本当に多かったです。

──こうすれば崩れなかった、というのは例えばどんなことですか?

例えば外国籍選手とのコミュニケーションです。英語がしゃべれないのは本当にダメで、小さい頃から親に「勉強しないと後悔するぞ」と言われていたのを、今になって痛感して(笑)。今の若い子たちにも「英語はやっておけ」と言いたいですね。

伊藤達哉

「走るバスケをやるために是非来てほしいと言われた」

──そうは言っても京都では中心選手で、伊藤選手が移籍を選択したのは意外でした。

京都にはジュリアン・マブンガ選手がいて、実際に彼が中心のバスケになります。40分間で一緒にプレーする時間帯は、半分ずつでポイントガードの仕事をするじゃないですけど、実際は僕がコーナーでステイしている時間が多かったり、それで納得いかないわけじゃないですが、日本代表を目指す意味ではポイントガードとして経験を積んでアピールする、試合に勝って存在感を示す、ということが上手くできませんでした。コーナーでステイしてシュートを決めればいい話ではあるんですけど、それで環境を変えることも自分には必要なのかもしれないと考えました。

実際、大阪はbj時代から伝統があるチームで、体育館などの設備も良いし、選手にとっては素晴らしい環境だという話も聞いていたので、京都から大阪に来ることに決めました。

──同じ西地区で対戦も多い中、大阪にはどんなイメージを持っていましたか?

正直、どちらかと言うとやりやすい印象だったんです(笑)。個々で見れば能力の高い選手が揃っているので、上手くフィットすればずっと良いチームになるとは思っていました。

──大阪の眠っている力をポイントガードの自分が引き出してやる、という感じですか?

そういう気持ちです。自分で点を取ることももちろん狙いますが、それより周りに気持ち良くシュートを打たせることを考えたいです。そうなれば若い選手がガンガン走るバスケが機能すると思います。今回はアイラ(ブラウン)も加入して、ハードにプレーする選手がまた増えたので、ポイントガードとしてそこをどう上手く使っていくかはしっかり考えたいです。

富樫(勇樹)選手は、チームでは自分で点を取りますが代表になると周りを生かすことをより考えて、ここぞという時に決めてきます。自分もそこを目指さないといけないと思います。

──大阪からグッと来るような口説き文句があったからこそ移籍となったのでは?

僕は京都の時から浜口(炎)ヘッドコーチにもっとブレイクして走るバスケをしたいと言っていました。その中で今回、ヘッドコーチが天日(謙作)さんになり、走るバスケをやるためにボールプッシュできる選手が必要だと、だから是非来てほしいと言われました。それを聞いて「やりたい」という気持ちになりましたね。

伊藤達哉

「ポイントガードはチームを勝たせることが大事」

──チーム練習が始まって、天日ヘッドコーチからは走るバスケだとずっと言われますか?

まだ戦術についてはそんなに話はないですが、プッシュについては言われます。走るバスケはヘッドコーチが自信を持ってやっていることなので、あとは選手が応えるだけです。練習でも毎日、死にそうになりながらやっています。本当にキツいんですよ。天日さんの練習は休憩時間がすごく短くて、すぐ切り替えて次の練習なんです。それを倒れるんじゃないかってぐらいまでやって、またちょっとだけ休憩を挟んで次のメニューです。

でも、練習でやったことが試合に出るのは今までも実感してきたことです。優勝するためなら当然乗り越えていかなきゃいけない。だからキツいですけど練習から全員で助け合って、全員で戦うチームになっていければと思います。

もう一つ考えるのは、対戦相手として見ていた大阪のイメージが、オフェンスもディフェンスも何となくやっている感じだったことです。例えばディフェンスだったら全員が一つになって前からプレッシャーを掛けるだとか、そういうことをいかにハードに続けられるか。シーズン60試合は本当に長いですけど、続けていかなきゃいけないです。「大阪は出だしから激しく当たって来る嫌なチームだな」って印象を相手に持たせることが必要だと思います。今やっているのはそういう練習なので、これを続けていけば絶対に良いチームになると思います。

いや本当に、すごく激しくやってるんですよ。自信を持って言えるぐらいやってます。

──移籍して最初のシーズン、伊藤選手の目標はどこに置きますか?

個人的には昨シーズンをすべての面で超えることです。シュートの確率だったり平均アシスト数だったりを上げることです。でも、個人じゃなくチームの勝利が一番で、ポイントガードはチームを勝たせることが大事だし、日本代表に対してのアピールになるとも思っています。そこは強く意識してやっていきます。

あとは京都でできなかった地区優勝です。さっきも言ったように全員で戦って地区優勝して、最終的にはチャンピオンシップで勝ち進んで頂点に立ちたいと思っています。

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