デビン・バッセル

オフェンスへの関与を減らし、ハードワークに徹する

2022-23シーズンのスパーズは、主力を立て続けに放出した。この時にNBAキャリア3年目だったデビン・バッセルは、ケルドン・ジョンソンと並んで攻撃の主軸に据えられ、得点を前年の12.3から18.5へと伸ばすも、痛めていた左膝を手術したために38試合出場に留まった。

その後、ビクター・ウェンバニャマとステフォン・キャッスルと『超』の付く即戦力ルーキーが加わる中で、バッセルは『将来のエース』の立場を返上してロールプレーヤーを受け入れた。キャリア6年目の今シーズン、バッセルのプレータイムと得点は3年目以降で最も少なくなっているが、初めてプレーオフを戦う今が最も充実しているのは間違いない。

サンダーとのカンファレンスファイナルでは第2戦で22得点、第3戦で20得点を記録するも、いずれもチームは敗れた。第3戦を終えた会見で、彼は「良いプレーをしたと言われても、重要な試合を落として満足できるはずがない」と憮然とした表情を崩さなかった。

こうして迎えた第4戦、彼はそれまで平均13本打っていたシュートを7本しか打たず、その代わりに走り、ぶつかり、ボールに食らい付く泥臭いプレーの強度を一段階も二段階も高めた。非凡な身体能力をオフェンスではなくディフェンスとリバウンド、ルーズボールに向け、激しい削り合いの応酬となっている試合でスパーズに優位をもたらそうとした。

その第4戦はサンダーを82得点に抑え込む、まさにディフェンスの勝利となった。バッセルはシュートを減らして得点は13に留まったが、33分の出場で得失点差+27とハードワークで勝利に大きく貢献した。

「ディフェンスこそ僕たちのアイデンティティなのに、負けた2試合では発揮できていなかった。ディフェンスで良い修正ができて、詳細は秘密だけど(笑)、しっかりローテーションすることで相手のシューターにチャンスを与えなかった。サンダーのシューター陣が勢い付くと手が付けられないから、その前に断ち切るんだ。集中すべきはオフェンスではなく、自分のマークを死守してまず止めることだ」

6年目の25歳でも、若いチームでは中堅となる。キャリア初のプレーオフであっても、『先輩』としてチームを引っ張る意欲が彼にはある。「この6年間ずっと、シュートが決まるかどうかはコントロールできないけど、エネルギーと努力は自分でコントロールできると思ってプレーしてきた。エネルギーは出せているか、それは正しい方向かを常に意識している。そうやって全力でディフェンスとリバウンドに行く姿勢は、チームに伝染する。どうせ影響を与えるなら、シュートを外して下を向くネガティブな姿じゃなく、良いインパクトを与えたい。それが僕の考え方だ」

第3戦でダンクを狙ったキャッスルが後方からの接触を受けた際、相手のアジャイ・ミッチェルに猛然と食って掛かったのも、良いインパクトをチームに与えるためだ。「危険なプレーから兄弟を守るという一心だった」と彼は言う。

サンダーとスパーズの対戦は激しい削り合いの応酬となっており、そこで引いてしまっては前年王者を相手に勝機は見いだせない。バッセルはそれを理解し、「お互いに敵意が蓄積していたけど、僕はそれで構わない」と、一歩も引かない姿勢を示した。

『プレーオフは経験がモノを言う』との言葉をバッセルは「経験なんて関係ないよ」と否定した。「僕たちはレギュラーシーズンを通じて必要な経験を積んできた。周りがどう言おうと関係ない。僕たちはカンファレンスファイナルを戦っていて、人々の認識が間違っていると証明してみせる」