ジェイレン・ブランソン

ドノバン・ミッチェル「どんな負け方でも1敗は1敗だ」

東カンファレンスのファイナル第1戦。セブンティシクサーズをスウィープで撃破した後、中8日の試合間隔があったニックスは、休養十分ではあっても試合のリズムを失っていた。中1日でこの試合を迎えたキャバリアーズには、ピストンズとの『GAME7』に競り勝った勢いがあった。

前半は互角の攻防となったが、ニックスは第3クォーターまで3ポイントシュートが23本中4本しか決まらず爆発力を欠き、キャブズのシュートが当たり始めるとズルズルと後退した。キャブズは単に外のシュートが決まったわけではなく、そのベースとして強固なディフェンス、攻めへと切り替わるスピード感、スペーシングの良さがあり、運動量でもボールへの執着心でもニックスを上回っていた。

83-69とキャブズ14点リードで迎えた第4クォーター、ディーン・ウェイドの4点プレーにドノバン・ミッチェルの3ポイントシュート、ジェームズ・ハーデンがフリースローで続いて点差は22点へと開いた。この流れをあと数分キープすればニックスは主力を下げて白旗を掲げるはずだった。

しかし、このタイムアウトでジェイレン・ブランソンが「あきらめず、少しずつ点差を削っていこう」と声を掛け、チームを奮い立たせた。ブランソンは振り返る。「一度のポゼッションで取り返せる点差じゃなかった。チームとして気持ちを切らさず、団結して戦い続けるんだと伝えた。結果がどうなろうともハビット(習慣)は次の試合に引き継がれるから、あきらめるわけにはいかなかった」

指揮官マイク・ブラウンも勝負をあきらめてはいなかった。「まだ時間はたっぷりあった。コートを広く使い、3ポイントシュートが決まればチャンスはあると思っていた。何度か守備で止め、何本かシュートが決まると、その勢いをファンが何倍にも増やしてくれた」

窮地に追い込まれたニックスは試合勘を急速に取り戻しつつあった。「試合が進むにつれて『錆』が落ちてきていた」とカール・アンソニー・タウンズは言う。「このチームには不屈の精神がある。あそこからの守備が本当に良かった。JB(ブランソン)、ミケル(ブリッジズ)、(ランドリー)シャメットが素晴らしいシュートを決めたけど、結局のところあの点差をひっくり返せたのはディフェンスが効いたからだ」

一方のキャブズは付け入る隙を見せてしまった。「もう勝ちは決まり」という油断がペースを必要以上に落とさせ、最初に何本かシュートを決められてもタイムアウトを取るでもなく、ブランソンがハーデンを狙ってアタックしているのが分かっていても修正しなかった。その緩みは大きな代償に繋がる。キャブズのシュートはリムに何度も弾かれ、ニックスのシュートは入り続け、約5分間で18-1のランで5点差に。この間、キャブズの得点はハーデンのフリースローによる1点だけだった。

ニックスが土壇場で追い付き、101-101で試合は延長へ。22点ビハインドから追い付く展開にマディソン・スクエア・ガーデンは興奮のるつぼと化しており、キャブズはその雰囲気に飲み込まれていたし、延長になればコンディションの差も露骨に出て来る。延長に入って最初の2分でブランソンとOG・アヌノビーの得点で6点差が付くと、もうキャブズは反撃する気力を失っていた。結果、ニックスが115-104で劇的な勝利を収めた。

キャブズのショックは大きい。ドノバン・ミッチェルは第3クォーター終了までに26得点を挙げたが、第4クォーターは3得点、延長では無得点と尻すぼみの結果に終わった。「チームとしてやれることはたくさんあったはずなのに、それができなかった。それは自分たち自身の責任だけど、今さら言っても仕方がない」と彼は言い、ショックを隠せない表情ではあったが言葉を続けた。

「どんな負け方でも、どんな大敗でも1敗は1敗だ。2日後には次の試合がある。そこでやり返すしかない。ここで落ち込んだら第2戦への準備に影響する。1つのクォーターでの失敗でシリーズ全体を投げ出す必要はない。勝つべき試合を落としたのは事実だけど、顔を上げて次に進むだけだ」