
「境界線を引けばそこにギリギリ届かない選手が出る」
NBAの『65試合ルール』が悪い意味での注目を集めている。NBAでは2023-24シーズンから、MVPやオールNBAといった個人賞に、原則として20分以上プレーした試合が65以上必要とする条件を付けた(実際にはより細かなルールがある)。
コンディションに不安を抱えるスター選手が頻繁に試合を欠場する『負荷管理』の横行がレギュラーシーズン軽視だとして問題となり、その対策としてこのルールが制定された。導入最初のシーズンには、前年のMVPに選ばれていたジョエル・エンビードが膝のケガで3年目の受賞資格を失い、MVPを受賞したニコラ・ヨキッチが「ケガをしている選手にプレーを強制させるルールだ。僕は気に入らない」と、普段は軽妙な彼らしからぬ怒りのコメントを残している。
「個人の栄誉よりチームの成績」と誰もが言うが、MVPやオールNBAはスーパーマックス契約を結ぶための条件となっており、スター選手にとっては譲れない一線でもある。
レギュラーシーズン終盤の今、この議論が再燃している。ピストンズのケイド・カニングハムが気胸(肺から空気がこぼれる病気)で資格を失い、現地4月2日にはティンバーウルブズのアンソニー・エドワーズ、レイカーズのルカ・ドンチッチもここに加わった。
エドワーズは右膝のケガによる欠場で受賞資格を失った。彼はデビューから昨シーズンまでの5年間で平均76.2試合に出場しており、『負荷管理』とは無縁の選手。『65試合ルール』さえ満たしていればオールNBA選出は当確だった。
Luka Doncic went back to the locker room after going down on this play.
The Lakers were down 32 points at the time.
Hope he’s okay 🙏 pic.twitter.com/7jqzU8cuOz
— ClutchPoints (@ClutchPoints) April 3, 2026
そしてドンチッチはサンダー戦の試合中にハムストリングを痛めた。グレード2の肉離れで、レギュラーシーズンの残り試合を欠場し、プレーオフの序盤まで戦線離脱が続く見込みだ。ドンチッチはここまで64試合に出場しており、あと1試合で資格要件を満たすところだった。ドンチッチはリーグトップの33.5得点を記録しており、特に3月は60得点ゲームがあり、16試合中7試合で40得点超えと絶好調。オールNBA選出が確実であり、MVP候補でもあった。
それでもドンチッチには可能性が残されている。戦線離脱が決まるとすぐに、彼のエージェントは『ESPN』に特例措置申請の意向を明かしている。『65試合ルール』には、「特別な事情がある場合は考慮する」との例外がある。ドンチッチは昨年12月に、娘の出産に立ち会うためにスロベニアへと帰国し、2試合を欠場している。
NBAコミッショナーのアダム・シルバーは、約10日前の定例会見でこの問題に触れている。この時はカニングハムが気胸で戦線離脱したところで、ピストンズを東カンファレンス首位へと押し上げた若きスター選手が個人賞から除外されることの是非を問われた。これに対してシルバーは「もともと皆さんはスター選手の行きすぎた負荷管理が不満だったはずだ」と言い、こう続けた。
「その解決策として選手会と一緒に導入したのがこのルールだ。境界線を引けば、そこにギリギリ届かない選手がどうしても出てくる。カニングハムには残念だが、彼が選ばれない代わりに別の選手がオールNBAに選ばれる。『65試合ルール』の導入が負荷管理への不満を解消したのは事実だ。一人の選手が不運に見舞われたからルールが機能していない、という判断にはならない」
このルールが検討段階だった頃、行きすぎた負荷管理は確かにNBAの価値を毀損する問題だった。だが、そこからの数年でNBAはよりフィジカルに、よりスピーディになって選手の身体的な負荷が増しており、『65試合ルール』は導入3シーズン目にして制度の歪みが露呈している。今シーズン終了後に選手会はリーグに条件の緩和を求めるだろう。シルバーは「選手会が話し合いを望むのであれば、拒むことはない」とコメントしており、今のルールは厳格に適用しながらも将来的な『調整』については柔軟な姿勢を見せている。