文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com、小永吉陽子

「全員で力を合わせて勝てたのは良かったです」

東アジア選手権の初戦、韓国とのいきなりの大一番を78-72で制した日本代表。勝利の立役者となったのはポイントガードのレギュラーに定着した富樫勇樹だった。

シーズンの好調を代表にも持ち込むことに成功。3ポイントシュートこそ3本中成功なしに終わったものの、2ポイントシュートは9本中6本(66.7%)と高確率で決め、チームハイの12得点を記録した。アシストは3と数字こそ平凡だが、富樫が出ている時間帯はボールも人もよく動き、スムーズなオフェンスが実現していた。これはポイントガードとしての富樫の『手柄』である。

試合が終わった直後、引き揚げてきた富樫は勝利をこう振り返った。「たくさんのファンの方々に来てもらって、レギュラーシーズン終わってすぐの大会で体力的にはキツい部分もあるんですけど、全員で力を合わせて勝てたのは良かったです」

課題の多い試合だったのは確かだ。韓国は若さを武器に果敢なプレーで日本を苦しめたが、チームとしては未成熟。『本気モード』の日本としては、もっと余裕をもって勝利してもいい相手だ。富樫は言う「オフェンスリバウンドを取られすぎた、セカンドチャンスポイントでせっかくのリードをなくしてしまった。そこは修正しなければいけない。ターンオーバーも13個ですけど、しなくてもいいところでのターンオーバーがあったので、そこは修正したい」

ただ、同時に口にした「完璧な試合ではなかったですけど、ホームで勝利できたことはすごく良かった」という言葉こそが本音だろう。実際、今日の試合は内容よりも結果に意味がある。今日のもう1試合は、中国が96-63でチャイニーズ・タイペイを圧倒。若手中心の中国ではあるが、今日勝ったことで準決勝での対戦は避けることができそうだ。

「どんな大会であれ勝ちにこだわって、勝ち切れたことが一番良かった」と富樫は言う。相手にかかわらず、勝つことに慣れていく、勝って当たり前になっていくことが、今のバスケットボール男子日本代表には必要だ。

2020年の東京オリンピックに向け「今日は初めの一歩」

先発ポイントガードとしてチームを引っ張る富樫だが、馬場雄大に次いでチームで2番目に若い選手とあって、チームリーダーというわけではない。ただ、必要な時にプレーでチームを引っ張る覚悟はできている。「代表ではディフェンス面のプレッシャーを大事にしているので、時間はシェアしながら、出ている5人がハードワークするということで。自分がリーダーという感じではないですけど、出ている時はポイントガードとしてチームをまとめられればと思っています」と富樫はその覚悟を語る。

今日対戦した韓国は若手中心。チームとしての練度も低かった。だが、勝利には勝ちがある。「今日は初めの一歩」と富樫は言う。その視野にあるのは2019年のワールドカップであり、2020年の東京オリンピックだ。

「もちろん、この東アジアをきっちり勝って、W杯予選にチームとして良い状態で入れるように頑張りたい。オリンピックが自国である機会は、自分が生きていくうちで次があるかどうか分からない。現役のうちは最後なので、絶対に出たいです。一つひとつクリアしながらステップアップして、2020年に出れるように頑張りたい」

この1年で大きく飛躍した富樫。2020年までこの勢いでステップアップを続けられれば、日本バスケットボール界を変える存在になっているに違いない。