
「『このチームのエースはトレイ・ジョーンズなんだ』と全員が再認識した」
「昨日めちゃめちゃ悔しい負け方をしたので……。コートに立たなくても、あんな負け方すると悔しいです」
群馬クレインサンダーズの谷口大智は、3月7日に行われた京都ハンナリーズとの第1戦をそう振り返った。第1クォーターで28-11と大量リードを奪ったものの、第2クォーター以降に失速して65-67で逆転負け。谷口は、この試合で出場機会がなかった。
しかし、翌日に行われた第2戦では今シーズン最長となる16分9秒コートに立ち、92-68の快勝に大きく貢献した。起用の理由を谷口は次のように語る。
「後半の動きが明らかに悪くなることをコーチ陣は気にしていたので、ローテーションが昨日よりキツくなる今日は、なおさら僕の出番が多くなるかなと思っていました。メインで出る選手たちを休ませるのも僕の役割の1つです」
前半で50-27と大きくリードを築いたことも出場時間が伸びたことの一因だが、コーチ陣の期待に谷口が応え続けたことが一番の要因となった。
前日の悔しい敗戦を受けて、チームでは次のような会話がなされたと谷口は明かした。「『このチームのエースはトレイ・ジョーンズなんだ』と全員が再認識した上で、今日はトレイが全部スコアに行くんだ、30点以上取ってきてくれというのがありました」
外から聞けば、ワンマンチームととらえられてネガティブなイメージも感じられるかもしれないが、そうではないと谷口は続ける。「トレイを中心に周りがしっかりと援護射撃をしていく。トレイが止められたら、他の選手がどんどん活躍しだす。そんなスタイルを意識して、形になりました。停滞しそうなタイミングでの突破口を1つ見出せたかなと」
実際にジョーンズは、12本中9本のフィールドゴールを成功させて、シーズンハイとなる26得点を挙げる活躍でチームを勝利に導いた。しかし、谷口の言う通り、ジョーンズだけではなく全員が得点を挙げ、チーム全体で躍動を見せた。

大先輩の欠場に発奮「絶対に辻さんの分までやったる」
谷口個人としては、年が明けてからは試合の行方が決まったガベージタイムでの起用や不出場が続いていた。しかし、この試合では第1クォーターの残り2分49秒でコートに立つことになった。「少しアタフタした部分がありました」と言うように、ボールが手につかずにターンオーバーを喫するなど、ミスもあった。
「久々のことで舞い上がり、普段しないようなドライブを仕掛けに行っちゃって……。逆にターンオーバーをして頭を冷やしたので、その後はうまくコントロールできたかなと思います」
本来の動きができなかった第1クォーターを経て、谷口は第2クォーターで持ち味を発揮する。残り8分29秒、藤井祐眞が放った3ポイントシュートがリングに弾かれたが、谷口がリバウンドに飛び込み、ボールを弾いてヨハネス・ティーマンがオフェンスリバウンドを回収。ケリー・ブラックシアー・ジュニアがセカンドチャンスポイントをねじ込んだ。
一連のプレーで谷口にスタッツは付かないが、間違いなく谷口のリバウンドへの意識がなかったら、起こり得なかったプレーだった。ブラックシアー・ジュニアのシュートがリングを通り抜けると、谷口は大きく拳を振り下ろすガッツポーズを見せた。
「シュートもですが、リバウンドやディフェンスをしっかりやって、チームの足元を固めていこうという気持ちでした。ボールを弾けば誰かが取ってくれると信じているので、泥臭いことを続けてチームに勢いをつけていきたいです。それはベテランもルーキーも関係ないですね」
さらに残り2分34秒に得意の3ポイントシュートを決めると、この日、欠場だった辻直人のセレブレーションを見せて会場を沸かせた。洛南高でともにウインターカップ制覇を遂げた先輩である辻に対する特別な思いがあった。
「今日は辻さんが出られないので『絶対にあの人の分までやったる』という気持ちがありました。辻さんにこのチームを背負ってもらっている部分もあると感じます。こういう時は僕が引っ張っていくので、すぐ戻ってくるようにケアして準備して、またしっかりと帰ってきてください、と」

「後悔するのはシーズンが終わってからやれば良い」
谷口はシーズン序盤から長くはないものの、コンスタントに出場時間を得ていた。しかし、前述の通り直近に試合では、その機会を失っていた。
「天皇杯以降は(淺野)ケニーがすごい上がり調子で、それはうれしいことです。ケニーが努力した結果だと思います。僕よりもケニーのほうができることが多いので、ケニーを使う一択になったかなという感じでした」
同ポジションではないものの、ポジションレスバスケを志向する群馬において、淺野の成長は谷口の活躍の機会を奪う一因となった。しかし、その状況になり谷口は再確認できたことがあったと明かす。
「試合に出られなくて悔しい気持ちが自分の中で強くて『試合に出たい。まだまだプロ選手でいたい』と確認できたのはよかったです。ベテランであることや日本人ビッグマンであることを理由に試合に出ないことを受け入れてしまったらコートに立つ資格はないと思うので、変わらずに準備し続けて、チームの危機を救えるように慢心することなく自分のプレーを続けられたら良いですね」
チャンピオンシップを争う東地区の上位4チームはいずれも今節を連勝している。一方の群馬は1勝1敗で終えて、チャンピオンシップ進出圏内から3ゲーム差がついた。
「この後のことを考えると簡単な順位にいないです。僕たちだけの力でCSに進めるかどうか分からない状況かもしれません」と谷口も現状を理解した上で前を向く。
「1試合1試合をしっかりと勝っていき、その後に結果がついてくるようにしたいです。この状況を受け入れるとか後悔するのはシーズンが終わってからやれば良いことなので、今はCSがどうこうよりも目の前の試合に意識を向けることが重要です」
残り19試合。現状はチャンピオンシップ圏外だが、まだまだ可能性は残されている。谷口は、構えることなく今後の逆襲を誓う。「この状況をプレッシャーに感じたくないので、全員で楽しみながらもシリアスに今シーズンやりきりたいですね」