SoftBank 東北絆CUP

プロコーチの指導で成長、そのお披露目の舞台に

『SoftBank 東北絆CUP』は東日本大震災で津波被害を受けた岩手県、宮城県、福島県の沿岸部地域の小中学生に、スポーツや文化活動を楽しむ機会を提供するイベントで、バスケットボール、野球、サッカー、自転車、卓球、吹奏楽を対象にソフトバンクが主催する。そのバスケットボール種目の大会が7月14日、岩手県陸前高田市の夢アリーナたかたを舞台に行われた。

メインとなったのは男子6チーム、女子5チームが参加した親善大会。ユニークなのはワンデーの大会ではなく、ソフトバンク主催とあってICT(情報通信技術)を活用した『スマートコーチ』で遠隔指導を受けたチームが、その成果を披露する場として大会が位置付けられていることだ。

スマホを通じて参加チームの選手を指導したのは、仙台89ERSの志村雄彦GMと、仙台のアカデミーディレクターとU15チームのヘッドコーチを務める加藤真。プロチームのユースで行っている様々なドリルが各チームに提供され、選手たちはそのドリルを行い、プレーの動画を送って添削してもらったりアドバイスを受ける形で、プロによる質の高い指導を受けてきた。

『スマートコーチ』での指導にかなりの時間を割いてきた加藤コーチは「この世代は何本もシュートを打つことで自分のフォームを作ってほしいので、そこを意識してメニューを提供してきました」と振り返る。その加藤コーチにとっても、『スマートコーチ』で教えた選手たちと会うのは初めて。「始める前のレベルを知らないので、どれぐらい伸びたのかは分かりませんが、みんな良い形でシュートを打っていました」と手応えを感じていた。

大会にはチーム単位でなく個人で申し込み、『スマートコーチ』で練習を重ねた選手たちが集まる『混成チーム』も男女1チームずつが参加。女子の混成チームを率いた志村GMは初対面の選手たちに盛んに声をかけて緊張をほぐしながら、チームの輪を作っていった。男子の混成チームを率いた加藤コーチもアイスブレイク(初対面の緊張をほぐすこと)を重視。「選手たちは今後もいろんなチームでやります。バスケットはチーム競技でコミュニケーションを取るところから始まるので、チームに早く慣れる、新しいコーチの指示を理解して遂行する力を重視しました。その結果、チームとして団結できて勝てたのはすごく良かったです」と加藤コーチは言う。

女子の混成チームは初戦でフリースローのサドンデスを落とし敗れたものの、男子は3試合を勝ち抜いて優勝した。この日が初対面の選手たちがすぐにコミュニケーションを取り、個の力ではなくチームの総合力で優勝できたのだから、この経験はそれぞれの今後に生きるに違いない。大会開始前のウォーミングアップでは表情が固かった混成チームの選手たちが、トロフィーを受け渡しながら親のスマホで記念撮影する姿がとても印象的だった。

SoftBank 東北絆CUP

東北に縁のある選手が続々参加「もっと貢献したい」

夢アリーナたかたのコート3面は常にフル稼働で、試合以外のイベントも盛りだくさん。小学校4年生までの子供を対象にしたバスケ体験教室、それ以上の年代の選手向けのクリニックでは、渡邉拓馬と中川聴乃をメインコーチに、岩手ビッグブルズの澤口誠、今井宏樹、上田雅也、さらには千葉ジェッツの晴山ケビン(岩手県出身)も参加し、子供たちと触れ合った。岩手県釜石市出身の澤口は「貴重な機会をいただけた。バスケが好きな子供たちに接して、夢を与える活動ができた」と晴れやかな笑顔を見せた。

18歳まで過ごした岩手への恩返しのために参加したという晴山は、地元への思いをこう語る。「今の自分があるのは岩手でバスケを始めたから。岩手でクリニックなどをする機会がこれまでなかったので是非にと思い参加しました。僕が子供の頃はプロ選手に教えてもらうことはもちろん、接する機会もありませんでした。岩手は多くのプロ選手を出しているわけではありませんが、プロ選手と間近に触れ合う環境が少なく、きっかけだけの話だと思っています。きっかけを作れば、子供たちは目標を持ってどんどん成長できます。そこに自分がもっともっと貢献したい。それは義務であり使命だと思っています」

晴山は小学校低学年の参加者全員と触れ合う時間を用意し、サインや記念撮影に応じつつ「どうやったら背が伸びますか」、「好き嫌いはありますか」という質問に丁寧に答えることで子供たちとの接点を増やしていった。同じように、小学校高学年の参加者には、元日本代表の経歴を持つ渡邉拓馬と中川聴乃が『夢授業』を実施。「最初は全然うまくなかったし、正直に言えばバスケは嫌いだった」と自身のバスケキャリアをスタートから語る渡邉の言葉に子供たちは引き込まれ、渡邉と中川の経験を基に「口に出した夢はつよい」のテーマに沿った授業が行われた。

スポーツやICTの力を生かして、伸び伸びとスポーツや文化活動に打ち込める環境を継続的に提供することで、東北の子どもたちを応援していきます。──そんな思いが込められた『SoftBank 東北絆CUP』は盛況のうちに終了。参加した子供たちには非常に良い経験になったに違いない。今年の『SoftBank 東北絆CUP』はこのバスケットボール種目からスタート。野球は仙台市民球場、サッカーは福島県のJヴィレッジ、吹奏楽はユアテックスタジアム仙台、自転車は石巻発のツーリングイベント、そして卓球は再び夢アリーナたかたで、大会が行われていく。