にわかファン時評「彼方からのエアボール」第12回:シーズン最後の「入れ替わらん戦」にガッカリする野次馬の身勝手

にわかファン時評「彼方からのエアボール」第12回:シーズン最後の「入れ替わらん戦」にガッカリする野次馬の身勝手

2017/06/01

文=深川峻太郎 写真=B.LEAGUE

「Bリーグといえば熊本」な無関心層の仇役、広島

この連載を始めて以来、B1や代表戦はもちろん、Wリーグや高校生の大会、さらにはB3の会場にも足を運んできた。栃木まで行って、餃子も食べた。にわかファンにしては、なかなか熱心な男だ。誰もホメてくれないので、自分でホメた(そんなの仕事なんだから当たり前だろ、と思ったあなたは全面的に正しい)。

だが、B3まで見たにもかかわらず、B2はエアポケットのごとき未体験ゾーンだった。会場に行っていないどころか、スポナビライブとかで試合を見たこともない。恥ずかしながら、B2の映像体験は『ワイドナショー』(フジテレビ系列)だけである。前園サンを送り込んで熊本ヴォルターズを密着取材し、番組をあげて熱烈応援するコーナーを、何度か見た。

震災の苦難を経てB1昇格を目指す姿を見れば、どうしたって熊本を応援したくなるのが人情だ。あの番組で、「B2といえば熊本」という刷り込みを受けたのは私だけではあるまい。いや、B1さえもろくに見たことがなく、「Bリーグといえば熊本」になってるバスケ無関心層も少なくないはずだ。もしかしたら、日本でいちばん有名なBリーガーは田臥勇太ではなく、「ココイチ」大好きのジョエル・ジェームスかもしれない。

いずれにしろ、そこですっかり仇役にされてしまったのが、最後まで熾烈なワイルドカード争いを演じ、熊本の野望を打ち砕いた広島ドラゴンフライズであった。必死でプレーオフ出場権を勝ち取ったのに、熊本のハッピーエンドを期待した全国の『ワイドナショー』視聴者に「あーあ」と溜め息をつかれちゃったわけですよ。気の毒すぎるぜ。

そういえば、アレの後に放送されるのでいつも何となく見ちゃうんだけど、『ミライ☆モンスター』なる番組も同じ構図だよね。さまざまな分野の「金のタマゴ」を応援する番組だから、取材対象のアスリートが負けると「あーあ」だ。勝ったライバル選手にも「負けられない思い」はあるだろうにねぇ。この二つの番組のおかげで、毎度「人の心を動かす情報操作なんて簡単なのね」と思わされる日曜午前なのだった。

入れ替わってナンボ、現状維持に終わったら企画倒れ

さて、その広島ドラゴンフライズと横浜ビー・コルセアーズが代々木第一体育館で激突した、5月28日の「B1・B2 入替戦」を観戦したのである。その日の朝、『ワイドナショー』ではバスケの「バ」の字も出なかった。ヒール扱いしてきたせめてもの償いに「ヴォルターズの分まで頑張れ」的なコメントぐらい、あってもよさそうなものだ。ますます同情心を募らせた私は、横浜ファンには悪いが、広島のハッピーエンドを期待していた。私の心も、そんなことで簡単に動くのである。

だいたい、試合の呼称からして、それを期待させずにはおかない。「B1・B2 入替戦」と言われたら、まるで最初から入れ替えるのが目的のように思うじゃないか。入れ替わってナンボ。現状維持に終わったら企画倒れ。つい、そんな印象を抱いてしまう。B1残留を目指す横浜サイドにしてみれば、「入替戦」なんて口にしたくもないだろう。ポリコレ的には「B1最後の椅子決定戦」である。来季は呼称の再考を求めたい。

にわか広島応援団の私は、ティップオフ前にオン・ザ・コートの件を知って憮然とした。広島は1-2-1-2、横浜は2-1-1-2と発表されたが、聞けば、B2のレギュラーシーズンは選択の余地がなく、どのチームも1-2-1-2で「固定」だというじゃないか。なんでやねん。誰か、にわかファンにもわかるように説明してください。

そもそも私は、外国人選手や帰化選手の出場を制限するこのルールがあまり好きではない。スポーツなのだから、能力の高い選手が長い時間プレーするのは当たり前。わざわざレベルを落とすルール設定は、スポーツの常識にそぐわない。いろんな「大人の事情」があるのはわかるけど、国連人権なんちゃらの人からお手紙が来やしないかと心配にもなる昨今ではある。

まあ、それはそれとして、決めたルールがフェアに運用されるならまだよい。しかし、はじめから「入替戦」をやる(つまり対戦がある)とわかっているB1とB2でやり方が異なるのは一体どういうわけなのか。プロ野球もパ・リーグだけDH制があるけど、日本シリーズではなるべく公平になるように配慮するでしょ。

ドラマチックな「入れ替え」の期待は、はかなくも外れ

しかしこの入替戦では、B1のルールが適用された。試合前の駆け引きの時点で、横浜にアドバンテージがあったことは否めない。広島がレギュラーシーズンと同じ1-2-1-2を選択することを見越して、横浜は第1クオーターを「2」にしてきたわけだ。もちろん広島サイドもそれは想定していたはずだけど、オン・ザ・コート「1対2」の状況は初体験。第1クオーターで19-8と大差がついたのは、それも大きな要因だろう。

逆にオン・ザ・コートが「2対1」となった第2クオーターは広島が点差を詰めて、前半は30-26。ドラマチックな「入れ替え」を期待する私が身を乗り出す展開にはなった。ところがオン・ザ・コートが「1対1」のイーブンになった第3クオーターは25-13。第1クオーター以上の差をつけられたのだから、こうなるとルールの不公正は言い訳にできませんね。

ここで試合はぶっ壊れてしまい、結局は74-53で横浜が「B1最後の椅子」を勝ち取った。どうもおめでとうございます。初めて見たけど、横浜のウォッシュバーンの存在感は圧倒的。彼が故障でしばらく戦列を離れていなければ、入替戦に回るようなチームではなかったのであろう。あと、どうでもいい話だが、ビーコルはBGMの「ブルーライト・ヨコハマ」が好感度大だった。

……と、取って付けたように勝者を讃えてみたわけだが、試合終了と同時に「あーあ、入れ替わらん戦かよ」と溜め息をもらしてしまった事実は事実として告白しておかねばなるまい。なにしろ前日に栃木ブレックスと川崎ブレイブサンダースのあのスペクタクルなシーソーゲームを見ていただけに、大差の結末は残念だった。

断崖絶壁でのドツキ合いをヘラヘラと面白がるのは……

というか、どうしてファイナルの後で入替戦だったのよ。ふつう逆でしょ。それも何か「大人の事情」があるのか。きっとあるんだろう。どうもBリーグのルールや運営には、素人目には「なんでなんで?」と首を傾げる部分が多いように感じてしまう。

ファイナルや入替戦が中立地での一発勝負になったのも、「なんでなんで?」のひとつだ。地域密着を掲げ、チームが企業名を冠することも厳しく制限しているぐらいなのに、最重要の試合が代々木開催。「大人の事情」があるにしても、やはり筋は通らない。

「地域密着」という理念がちょっと脇に置ける程度の重要性しか持たないなら、企業名の件だってもう少し寛容になってもよさそうなものだ。私なんか、テレビ解説者が川崎のことを企業名で呼んだだけでも「あっ、東芝って言っちゃったね」とアワアワしてしまうぐらいタブーに敏感になっていたのに、なんか損した気分にもなる。あと、「せめてバスケで元気を出したかったろうに」とも思いました。東芝。

東芝の話はともかく、少なくともこの入替戦は、それぞれのホームでやらせてあげたかった。中立地で開催するから、私みたいな野次馬が勝手にエンタメ性を求め、期待ハズレに終わると「あーあ」と溜め息をついたりするのだ。当事者のブースターにとっては、どんな内容だろうがハラハラドキドキの試合に違いない。頂点を争うファイナルは別だが、「転落」の懸かった入替戦を第三者が娯楽として消費すること自体が間違っているような気もする。

たしかに、過去にはJリーグの入替戦でも凄まじい死闘があり、私も見ていて興奮した。だが、所詮それは「高みの見物」だ。転落しても痛みを感じるわけではない野次馬が、断崖絶壁でのドツキ合いをヘラヘラと面白がるのはいかがなものか。試合終了後、歓喜の横浜ブースターと涙の広島ブースターの姿を見て、私はおのれの態度をいささか反省したのだった。どうもすみません。勝つにせよ負けるにせよ、当事者にとってはいつまでも忘れられない一戦だったことだろう。その思い出は「地域に密着」させるべきだと思う。

にわかファン時評「彼方からのエアボール」
第1回:最初で最後のNBL観戦
第2回:バスケは背比べではなかった
第3回:小錦八十吉と渡邊雄太
第4回:盛りだくさんの『歴史的開幕戦』に立ち会う
第5回:吉田亜沙美がもたらした「大逆転勝利」
第6回:フラグなき逆転劇と宇都宮餃子
第7回:杉並区民の『地元クラブ』探し、今回は井の頭線ぶらり終点下車
第8回:ウインターカップとスラムダンク的自己啓発
第9回:Bリーグ初のALLSTARはバスケの『余興的エンタメ性』が炸裂!
第10回:W最終決戦は栗原さん以外も見どころ満点、驚きと発見の玉手箱や~
第11回:エモい娯楽を大発見! 「カップケーキ」はNBA優勝カップを抱けるか

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