ミルザ・テレトビッチ

「アメリカでは何を目標にすべきか分からなかった」

欧州リーグで活躍した実績を引っ下げてNBAに挑戦する選手は少なくない。昨年の9月に現役引退を表明したミルザ・テレトビッチも、その一人だった。2012年から2018年まで、ネッツ、サンズ、バックスに所属し、現在はボスニア・ヘルツェゴビナのバスケットボール連盟代表を務める彼は『Radio Vitoria』の取材に応じ、「NBAは退屈だった」とアメリカ時代を振り返った。

「ウォリアーズとキャバリアーズだけが優勝争いをしていた時期で、2強に所属しない選手はNBAでプレーする意味を見いだせないと思っていたんだ」とテレトビッチは言う。

NBA行きを決断する前に所属していたのはスペインのバスク州に本拠を置くバスコニア。この時にはリーガACB優勝2回、オールACBチーム選出、ユーロリーグ出場を果たした。そんな彼からすれば、NBAであっても下位のチームから見る景色は決してきらびやかなものではなかった。「バスコニアでプレーしていた時には、必ず何かしらの目標に向かってプレーしていた。スーペルコパや、コパ・デル・レイ、ユーロリーグのファイナル4進出などね。それがアメリカでは、何を目標にすべきか分からなかった」

「私にとっては退屈だった。良い経験ではあったけれどね」とテレトビッチは打ち明ける。「世界でベストなリーグで、ベストプレーヤーと対戦できる。レジェンドから指導もしてもらえる。ただ私にとっては、ユーロリーグやスペインでプレーするほうが楽しかったよ」

長くブルズで活躍し、今シーズンはペリカンズとバックスでプレーしたセルビア人のニコラ・ミロティッチは、今オフにフリーエージェントの権利を得ると、NBAのチームではなくバルセロナと契約して周囲を驚かせた。

テレトビッチは、ミロティッチのような選手は今後増えると予想する。「ヨーロッパに戻る選手は増えるだろう。若い選手がなぜアメリカに行きたがるのか、私には分からない。3年間はベンチを温めるか、Gリーグでプレーすることになるのは分かっているのに」

NBAは確かに世界最高のリーグかもしれないが、トップレベルのリーグは他にも存在する。プロ選手として充実したキャリアを形成する道は、NBAでの成功だけにあるのではない。テレトビッチがそう主張するように、キャリアの形は選手の数だけ存在する。