「もっとステップアップしていかなくてはいけない」

『第101回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会』のファイナルラウンド準決勝が10月10日に開催され、三遠ネオフェニックスはアルバルク東京に最後まで喰らいつくも75-80で破れ、決勝進出を惜しくも逃した。

吉井裕鷹や佐々木隆成といった日本代表クラスの選手を欠き、若手主体ながら準決勝まで勝ち上がったことは及第点と言っても良いだろう。しかし大浦颯太とともにリズムが悪くなった場面でチームを支えきた津屋一球は、決して満足をしていなかった。

「メンバーがいなくても関係なく、やれば勝てるということを証明したかったです。ちょっとしたところのリバウンドや、エクスキューションといったコーチ陣が求めてることをやりきれなかったです。リバウンドの部分が 一番ですが、自分たちが我慢できなくなってファウルをしてしまい、プレーを遂行できない。まだまだだと感じました」

27歳の津屋は東海大から三遠に加入し、サンロッカーズ渋谷を経て2024-25シーズンに再び三遠に戻ってきた。津屋は今シーズンのここまでのレギュラーシーズンで3ポイントシュート成功率と38.9%と好調だったが、天皇杯では34.8%と確率を落とした。A東京戦では第3クォーター終盤、2桁に開いた点差をさらに広げられそうな場面でこれを決め切ったものの、試合トータルでは6本中2本成功に留まった。

「今日の前半は躊躇したり、いつもだったら打てるところで打てなかった場面がありました。大野(篤史)ヘッドコーチは『いいから打て』と言ってくれていたのですが、考えすぎたところもありました。後半は吹っ切れて『打てるところで打とう』と思ってやった結果決められたので、最初からそれができていればもっと脅威的な存在になれたかなと思います」

A東京戦後、津屋はこのように悔しさをにじませ、今後の課題についても触れた。「シューターとして出場していますが、僕は外国籍選手を一人で守れるので、それが僕の仕事だと思っていました。ですが、今日の試合でも好き勝手にやられたところもあったので、もっとステップアップしていかなくてはいけないと改めて思いました」

「さらに上に行くために今、試されているところ」

三遠は開幕から故障者が続出し、ベストメンバーでの試合はここまで実現していない。外国籍選手も短期契約が主で入れ替わりが激しく、理想的なチームビルディングはできていない状況だ。ほとんどのチームが成熟を進める中で、三遠は若手の育成路線を進まざる得ない。もちろんこれはネガティブな状況ではなく若手が粒揃いの三遠にとっては、ある意味退路を断って覚悟決めて進むポジティブな道となっている。

天皇杯における3試合中2試合の先発メンバー(根本大、湧川颯斗、浅井英矢、河田チリジ、デイビッド・ヌワバ)のうち、帰化選手の河田を除く日本人選手の平均年齢は22歳。A東京のそれは29歳だった。

その中で、オン・ザ・コート1ルールの兼ね合いもあり、日本人選手の活躍が必須となった今大会について津屋はこう振り返る。「負けはしましたが、どんな相手でもちゃんと自分たちがエクスキューションをすれば絶対に勝てるんだと改めて思わされました。これからさらに上に行くために、今は試されているところだと思います」

チームが上を目指すためには若手の成長が必要不可欠であるが、経験値の浅い若手選手は往々にして萎縮をしたり、ミスを恐れたりしがちだ。しかし津屋は、チームとして若手を支えているのが三遠だと語る。

「みんなそれぞれに『得意なことをやらせる』というのが三遠のバスケなので、若手がミスをすることはあるのですが、試合中はそこにとらわれ過ぎず、ヘッドダウンしないとチームで決めています。若手のミスが痛いと誰も思っていませんし、逆に躊躇したりビビっている感じがあると僕らもコーチ陣も『それは違うぞ』と伝えています。若手が思い切ってプレーをしてくれることがチームとしてプラスになるので、そこを一番求めています」

津屋はSR渋谷時代に、出場時間を勝ち取れず苦心した経験がある。「『バスケが面白くない』と公に言ったこともありましたが、それはコート上での役割が限られているにも関わらず、その役割を遂行できなかった自分への戒めでした。そこから、求められたことを少しずつ根気強くやり続けたことによって自身の幅を広げられることができました。それが今に繋がっていると思います」

苦しい時期を過ごした経験を持つ津屋は、若手の成長が必要不可欠な三遠にとってプレー面だけでなく精神面でも重要な存在だ。「プレー面のことは吉井(裕鷹)や(大浦)颯太が言ってくれるので、僕は気持ちの面をサポートしています。これまでに僕がやってくれていたことを下の世代に伝えています」と語るように自身が培った経験を還元し、さらなるリーダーシップを発揮して成長する彼の活躍に期待したい。