[CLOSE UP]小原翼(富山グラウジーズ)特別指定選手がチームの救世主に、自信とプライドを持って戦う『9×9』の男

2017/05/22
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

筑波大のチームディフェンスが認められ先発に抜擢

先週金曜の残留プレーオフ、富山グラウジーズは横浜ビー・コルセアーズとの死闘を制し、B1残留を勝ち取るとともにBリーグ最初のシーズンを締めくくった。

bjリーグ準優勝チームとして少なからず自信を持ってBリーグに挑んだ富山だが、大苦戦を強いられた。開幕戦で新潟アルビレックスBBに勝利したものの、そこから14連敗。その後も苦戦は続いた。チームが残留に向けて浮上し始めたきっかけは、2月25日の栃木ブレックス戦の勝利だった。

この栃木戦、特別指定選手として筑波大から加わった小原翼にとっては初スタメンの試合だった。その前週、アルバルク東京との試合でデビューした小原だが、ここでのプレータイムは2分と1分。それが、栃木戦では先発に抜擢され、31分間プレー。ここで富山はBリーグで上位争いを演じるクラブを相手に初めて勝利したのだ。

3月末に筑波大の吉田健司監督に取材した際、筑波から特別指定でBリーグ入りした選手たちについて「全員、いずれは出てくる力を持っていると確信しています」と語っていた。だが、インカレ3連覇の主役を演じた選手たちがプロでプレータイムを得られない中、筑波ではシックスマンだった小原が先発の座を勝ち取り、富山で主役を演じ始めたのだから面白い。

ブレイクのきっかけは、その栃木戦の前のチーム練習だったと彼は言う。「筑波はチームディフェンスが徹底されていたので、そのローテーションなりをチームの練習中にやっていた時に、外国籍選手やコーチが『翼、良いディフェンスだな』と反応してくれたんです。4番のディフェンスが若干穴だったので、そこをやっていくことで信頼を獲得していきました。それで栃木戦、いきなりスタートで出されて、勝ちにつなげた。ビッグチームに対して勝利をつかんだことが、これだけスタートでずっと出ているポイントだと思います」

外国籍選手にも当たり負けしない体格に自信

チャンスをもらっても、結果を出せなければプロとしては失格だ。良い経験を積むことはできても次のチャンスは保証されない。だが小原はプロで経験豊富なビッグマンにもバチバチと挑み続け、結果を出した。「誰が相手でもブレないですね」と小原は言う。「負けて当たり前だと思われるじゃないですか。それが嫌なんです」

「見ている人が『そこは止められないだろう』と思うところを止めた時の快感というか。全部止めなくてもいいんです。最後の一本を止めただけでも、止めたと印象に残る。それだけで『勝ったな』と思うんです。全部止めなくても一つ潰せば、このプロで日本人の役目としてはいいと思うので、だからそこに集中して。そこは本当に外国籍選手に負けない、というプライドを持ってやっています」

198cm97kg。体格に恵まれているとはいえ、2メートルを超えるわけではない。ただ、小原は「体格で負けたと思ったことはあまりないです」と言う。「ウチのデックス(デクスター・ピットマン/211cm128kg)には『かなわねえ』と思いますが、あとはオールジャパンの時(筑波大vsシーホース三河)でアイザック・バッツ(208cm133kg)とマッチアップした時は『あ、これはもう無理だ』と。ダバンテ・ガードナー(新潟/203cm132kg)もちょっとヤバいかなと思うんですけど、それ以外のライトなビッグマン、特に4番だったら当たり負けしない体格を持っていると自分では思っています」

先発に定着した小原が任されたのはオン・ザ・コート「1」の4番(パワーフォワード)のポジション。「僕が使われているのはディフェンダーという意味と、あとはリバウンダーというところです」と言う小原は、横浜との一戦でもジェフリー・パーマーとマッチアップ。第1クォーターに相手の得点源を抑え、チームに流れを呼び込んだ。「パーマーにマッチアップすることは最初から決まっていたので、簡単に3ポイントシュートを打たれないことと、左のドライブが多いのでそこをケアしろと。後は周りがヘルプするからと言われていました」と小原は言う。

ただ、自己評価は「50点」と辛い。「前半あれだけチームとして0点に抑えてた時間帯があって、結局パーマーの3ポイントから始まったので、そこは良くなかった。ですけど、最終的に第4クォーターでちゃんとコースに入れて、ファールなく止めれた部分もあったので、そこは自分でも評価したいです」

「継続していった先に代表という結果があるとしたら」

自分のオフェンスについては「本当にポンコツ」と独特の表現で厳しい評価を下しているが、横浜との大一番では、第3クォーターに逆転を許した場面、再びチームにリードをもたらすジャンプシュートを決めている。フリースロー1本と合わせて3得点だけだったが、重要な一発を決めたことは間違いない。

小原はそのシーンをこう振り返る。「チームが苦しい状況、追われている状況で、相手の流れを切れるシュートになったので、すごく良かったと思います。決め打ちじゃないけど、あそこでもらったら打っていいシチュエーションだと先輩方に言われています。デックスがリバウンドを取ってくれると信じて、思い切って打ちに行けました」

シーズン平均2.3得点の小原が繰り出した『会心の一撃』。ただ、マインドはやはり守備に置かれている。「安心しましたね。1本シュート打ったら気分が良くなるじゃないですか。その流れでディフェンスもいい流れを作れるかなと思いました」

こうして特別指定選手としてのシーズンは終了。小原にとっては貴重な経験の連続だったに違いない。それでもまだ満足はしていない。筑波大でもつけていた背番号81は「9×9=81」、「9」を「苦」に見立て、『苦しんでも苦しんでもはいあがる』というメンタリティを表している。まだまだ苦しい戦いは続くだろうが、22歳の秘める可能性は無限大だ。

可能性に目を向けた場合、日本代表はどうだろうか。Bリーグでここまでやれれば、代表でのプレーも意識していいはずだ。ところが意外にも「いやあ、正直全然考えてなかったです」と小原。Bリーグの外国籍選手には一歩も引かないが、代表選手には一目置いている。

「代表選手はすごいです。実際に対戦させていただいて、太田(敦也)選手とかは本当にすごいなと。『ここまで来るんだ』といううまさを身をもって体験して、まだまだだと思いました。2メートルオーバーじゃないので、そこの難しさを感じながらも、でもやめることはないので。継続していった先に代表という結果があるとしたらうれしいです。そこを目指すとかではなく、まずは一つひとつです」

そんな代表選手と比べても胸から肩、腕の筋肉量は抜群に目立つ小原。このオフにはさらなる苦行と苦行を重ね(9×9)、来シーズンにはまた一回りスケールアップした姿を見せてくれそうだ。