ポール・ジョージ

各クォーター頭の5分だけのプレータイム制限付き復帰

セブンティシクサーズのポール・ジョージが戦線復帰を果たした。昨夏にシクサーズの一員となったジョージは、相次ぐケガで41試合にしか出場できず、チームの不振の大きな要因となった。今シーズンも膝を手術した影響で出遅れ、ようやくのシーズンデビューとなった。

試合開始から約30秒、タイリース・マクシーとともにジェームズ・ハーデンを追い込むディフェンスでボールを奪ったジョージは、実戦の感覚を確かめるようにボールを運び、マクシーへとボールを預ける。すぐにパスが返って来てリングが見えると、自然に身体がシュートを選択した。これがリングの中央に吸い込まれてシーズン初得点を記録。彼は表情を変えずにディフェンスに戻ったが、心の中では喜びを爆発させていた。

「シュートが決まるまでボールの軌道を見つめていた。様々な感情が渦巻いていた」とジョージは言う。「試合に意識を集中させなきゃいけないと思い、感情は表に出さないようにしていた。でもあのシュートが決まった時、内心では最高の気分だったよ」

完全復活はまだ先のこと。ジョージには20分のプレータイム制限があり、しかも各クォーターの最初から5分だけ、つまりそれ以上は連続してプレーできないという縛りがある。「一つずつチェックリストを埋めていく作業だった。動ける、反応できる、コンタクトも大丈夫、相手より先にポジションに入れる、リバウンドを取れる、とね」

「でも5分はあっという間で、気付いたら交代になる。短いプレータイムで実戦のリズムを取り戻さなきゃいけないと焦って、逆にリズムが乱れてしまった」とジョージは振り返る。21分の出場で9得点7リバウンド3アシスト2ブロック。リズムの乱れはフィールドゴール9本中2本成功と効率の悪いシュートに表れた。

だが、まだ復帰初戦だ。彼が最後にプレーしたのは3月上旬で、その後も常に何らかの問題を抱えて高い強度での練習もできなかったのだから、リズムを取り戻すのに多少の時間がかかるのは無理もない。

試合後、ヘッドコーチのニック・ナースは「悪くなかった」とジョージのパフォーマンスを評価した。「シュートを打つ動きのリズムにズレはあったと思う。だが、リバウンドで良い仕事をして、ボールを取ったらすぐに攻撃に繋いでトランジションの起点となった」

避けるべきはケガの再発で、ナースはジョージをゆっくり試合のリズムに慣れさせていくつもりだ。今もシクサーズはジョエル・エンビードが膝の痛みで4試合を欠場しており、ケリー・ウーブレイJr.とアデム・ボナも戦線離脱中だ。

エンビードとボナが離脱する状況で奮闘しているのが、32歳のアンドレ・ドラモンドだ。器用さを欠く屈強なセンターは時代遅れで、ピストンズを退団した2020年以降は目立った活躍のなかったドラモンドが、クリッパーズ戦では38分の出場で14得点18リバウンドを記録。唯一のセンターである彼が、クリッパーズで大きな強みであるはずのイビチャ・ズバッツを上回る働きを見せたことが、接戦を制する大きな要因となった。

シクサーズは昨シーズンに続いてケガの連鎖に見舞われているが、それでも8勝5敗と結果を残している。今は様々なラインナップを試す難しさに直面しているが、今回のジョージの復帰、ドラモンドの復活のような発見を積み重ねていくことが、シーズン後半に生きてくる。