
「流れを変えられなかったので責任を感じています」
「自分、もっとやれるなって。チームを助けられるのに。でもそれが出せていない」
11月15日に開催されたホーム戦で、大阪エヴェッサに最大19点差をひっくり返されて97-102で敗戦を喫した富山グラウジーズの岡田雄三は、試合後に自身の不甲斐なさを感じていた。岡田は今、自分の能力をチーム内で最大限発揮する難しさの壁にぶち当たっている。
序盤からチームスタイルであるトランジションバスケが機能した富山は、前半終了時には16点のリードを築いたものの、後半に入って追い上げを受けると粘りきれず最終クォーター残り5分7秒に逆転を許し、接戦を落とした。
97得点を挙げながらも102失点を喫した。外国籍選手のトレイ・ケルは33得点、ブロック・モータムは30得点と活躍を見せたが、日本人選手の得点は伸びなかった。それが敗因だと岡田は振り返る。
「接戦になった時、どうしてもプレーが止まってしまって。ブロックかトレイにボールを渡して、他が動いていないのが、コート上に立っていてもそうですし、ベンチから見ている時でもすごく感じました」
昨シーズン、B1得点王に輝いたモータムと、NBL(オーストラリアリーグ)でオールファーストチーム(ベスト5)に選出されたケルは、ただ得点力が高いだけでなく自身でクリエイトする能力にも長けている。しかし、2人がいくらオフェンスを構築しても勝利には届かないことは実証されてしまった。岡田は自分がオフェンスの起点を担わないといけないと言う。
「本来であれば、コントロールしたりピックを使ってズレを作ったり、ゴール下での合わせやキックアウトするのが自分の強みでもあるんですが、まだ富山に来てから全然出せてないです。それをやりたいし、やれるのにやれていないもどかしさが出た後半でした」
第3クォーターで追い上げを受けた時間帯、岡田はベンチで戦況を見守っていた。「これまで勝った試合は、自分たちでハドルを組んで乗り越えられました。今日は、それぞれベクトルが違う方向に向かっていると感じました」
そうベンチで感じたからこそ意気込んで最終クォーターの頭からコートに立った。しかし、その役目は遂行しきれなかった。「プレーで力を出せなかったですし、流れを変えれなかったので責任を感じています」

「自分がオフェンスの起点になるために富山に来た」
岡田は、昨シーズンまでベルテックス静岡で中心を担い、クラブのB2昇格後、2シーズン連続でのプレーオフ進出に大きく貢献した。司令塔としての実力とキャプテンシーを買われ、今シーズンから富山で初めてB1のコートに立ち、チーム内の日本人選手では最長となる平均25.42分のプレータイムを得ている。
「B1の強度に対応できていない部分もあります。ディフェンスは自信があるんですけど、オフェンスではB2にはなかった強度やサイズ感の選手とマッチアップすることが多いです」と、カテゴリーが変わったことでの違いを感じているが、それ以上に新加入のチームへフィットすることへの難しさの方が大きいと心の内を明かした。
「チームにフィットするためには土台への積み重ねが必要です。プレーに迷いがあるとその積み重ねになっていかないので、ミスを恐れずにやっていくしかないです。しかし、やってみて何がダメなのが分からないと、どう変えていいかも分からないですし、このままトレイとブロックに任せきりだと、シーズンが終わった時に自分が何を残せたのか振り返れなくなってしまいます」
チームへフィットすることに関しては、シーズン前にダビー・ゴメスヘッドコーチに次のように言われていた。「ダビーから『11月ぐらいまではフィットしない。自分のバスケは特殊だから』と言われていました」。これは岡田だけでなく、新加入選手全員に言えることだと岡田は続ける。
「確かに昨シーズンの富山もそうでした。前半戦は良くなくても、プレーオフに向けて仕上げていって優勝しました。でも思っていた以上に難しいですね。自分でピックをもっと使っていいのか、トレイやブロックにボールを預けた方が良いのか、そこを悩んでる時点で良いプレーはできないですよね」
その影響は、この試合でも見られた。最終クォーターでオフェンスをコントロールしていたが、ケルとモータムが徹底マークにあった結果、攻め手を失った岡田は良い判断ではないシュートを2本放ち、外した。それがすべての要因ではないが、岡田は最終局面をベンチで過ごすこととなった。
「もちろん出る準備はしてましたけど、客観的に見て自分は今日良いプレーができていなかったと思ったので、采配に文句はありません。でも、ブロックとトレイ任せにしないで、最後の時間帯で自分がオフェンスの起点になるために富山に来たので、それはここからの課題ですね」

「まだ迷いもあって、なかなか感情が出しにくい」
静岡時代の岡田を知る人は、闘志溢れるプレーで相手を威圧するかのような熱さをイメージするだろう。しかし、今シーズンはそのような姿は多く見られない。何か心境の変化があったかと問うと、二つの要因を挙げた。
「ああいう時って『自分がやるんだ!』という気持ちが出ている時だと思うんですよ。もちろんその気持ちはありますが、静岡は中心でやらせてもらっていたので、気持ちが出やすいと言えば出やすかったです。今年はさっき言った迷いもあって、なかなか感情が出しにくいんだと思います」
さらにヘッドコーチとの関係性を重要視していることが影響していると続ける。「ダビーには咄嗟の言葉が通じるわけではないので、熱いアクションをすると誤解されることがあって、ダビーが嫌がることもあります。当たり前ですが、ヘッドコーチの言うことを聞いてやるようにしています。ダビーが熱いタイプなので、僕はチームがやることにフォーカスできるように意識しています」
個人での能力ではB2時代とギャップを大きく感じていないが、チームメートとの連携や役割分担で、自分の強みを出す難しさに直面している。この現状を打破するために何が必要か聞くと「練習がすごい大事ですが、B1の難しいところで水曜ゲームが入ってくると練習ができず、ゲームの中で慣れていくしかないです。それは良い経験をさせてもらっていると思います」と、B1特有のハードスケジュールにも慣れる必要があると語る。
今節を終えると中断期間に入るため、練度を増して迷いを払拭した岡田に今後は期待したい。移籍をしてチーム内の役割が変わり、自身の想定以上に現状は苦しんでいるが、チームを勝たせることにフォーカスして、岡田は前を向く。「誰かのせいにすることはないですし、チームに自分の良さをどう還元できるかですね」