陳岡流羽

「先陣を切ってハッスルすることは心がけている」

最終クォーター残り715秒。茨城ロボッツの陳岡流羽はマッチアップしていた群馬クレインサンダーズのトレイ・ジョーンズに振り切られて、イージーバスケットを許し天を仰いだ。ルーキーシーズンを地元クラブで過ごしている若手選手は、期待とプレッシャーの間で歯がゆい思いを抱いていた。

1112日に行われた群馬戦は、94-70で敗戦。序盤からリードを許し、流れをつかむ場面もあったが、群馬に圧倒される時間帯が長く完敗を喫した。陳岡はこの試合で先発を務めて、日本人選手最長となる2357秒コートに立った。

この試合だけでなく、茨城はシーズン成績も214敗と苦しんでいる。その中で陳岡は直近4試合、先発で20分以上の出場時間を得ており、それゆえ勝てない状況に責任を感じている。

「『俺がやる!』という人がいなくなると勝てないです。僕も人任せにしたくないですけど、その実力がまだない。それが悔しいですね。試合に出ている分、もっとチームのために自分ができることがあるだろうと毎試合感じています」

序盤には群馬の起点となる中村拓人、時間帯によっては得点源であるジョーンズのディフェンスを任された。茨城のクリス・ホルムヘッドコーチは陳岡を次のように評価している。「彼はミスマッチの相手でも、頑張ってくれています。身体の強さは誰もが感じることですが、ディフェンスに対するマインドが素晴らしく、やるべきことをできるのが彼の才能なので、チームとして助かっています」

陳岡も自身の役割をしっかりと認識して、強い気持ちを持ってコートに立っている。「ディフェンスを期待されているのは自分でも分かっています。相手のメインハンドラーにやられてはいけないのは当然ありますが、トーンセットのために僕が先陣を切ってハッスルすることは心がけています」

ガード登録ながら、188cm93kgとルーキーらしからぬ恵まれたフィジカルで、ポジション関係なくディフェンスをしている。「クリスが相手のメイン選手のディフェンスを僕に任せてくれるので、責任は感じています。期待もプレッシャーも感じていますが、もう一生懸命にやるだけです」

しかし、完璧に守れるわけではない。前述の通り、能力も経験値も高いジョーンズにいなされる場面は少なくなかった。それでも陳岡はブレずに激しいディフェンスを見せていた。「外国籍選手とマッチアップし、すごい選手だとしてもやられたくないので、全力でぶつかっています。難しい時もありますが、悔しいというよりも『もっと頑張らなきゃ』とか『守れるようになりたい』という気持ちが強くなります」

陳岡流羽

「勝利が続くチームを作っていきたい」

ディフェンス面では一定の評価をしているホルムヘッドコーチだが、オフェンス面ではさらなるステップアップを望んでいる。「彼の未来を考えると、シュートが安定的に入らないのが課題です。課題に向き合ってトレーニングしているので、入るようになってくれば相手にとって嫌な選手になります」

陳岡はこの試合が始まるまで、11本の3ポイントシュートを試投し成功は0本。この試合でシーズン初の3ポイントシュートを成功させたが、自身も「ディフェンスだけにフォーカスするのはいけない」と前置きした上で、この課題に向き合っている。「昨シーズンはシュートとディフェンスを意識していましたが、今シーズンはシュートが打てる選手が多い分、ドライブを多くしています。でも両方できていません。ドライブを生かすためにも3ポイントを確率よく決めるのが課題ですね」

昨シーズンは平均0.6本試投と数こそ多くないものの、成功率は33.3%と決して悪くはなかった。「3ポイントを多く打っていこうと話している中で、アテンプトが少なかったです」と群馬戦の反省点を振り返る陳岡の3ポイントシュートが復調すれば、チームの1つの武器となるだろう。

ルーキーでありながらも、出場時間も長く重要な役割を担っている。チームは苦しい成績だが、個人としては充実しているのかと問うと、チームファーストな答えが返ってきた。「プレータイムが長く、いろいろ経験させてもらっていますが、勝ちに繋がらないのは僕の責任です。充実しているかと言われたら難しいところです」

子供の頃から憧れていた地元クラブの茨城ロボッツ。陳岡はそのユニフォームに袖を通して、チームの中心となるべく歩み始めたところだ。責任を背負うからこそ、成長への思いは強くなる。この苦しみを乗り越えた先に、きっと大きな飛躍が待っている。

陳岡は取材の最後に、応援してくれるファンへの思いと今後の意気込みを語ってくれた。「アウェーにも応援に駆けつけてくれてありがたいです。今は思うような結果にはなっていませんが、試行錯誤してチャレンジしている途中なので、この後、勝利が続くチームを作っていきたいです」