開幕から9勝2敗、カニングハムが試合の全局面で活躍
現地11月10日、東カンファレンスの首位に立つピストンズは、CJ・マッカラムが42得点と大活躍するウィザーズに大苦戦。オーバータイムにもつれる死闘となりましたが、ケイド・カニングハムが46得点12リバウンド11アシストのトリプル・ダブルでチームを勝利に導き、首位をキープしました。
しかし、ピストンズの戦いぶりは『強い』という印象を抱かせるものではありません。ピストンズの得失点差は+5.3で、西カンファレンス首位のサンダーに+14.4と遠くおよばず、ニックスやヒートにも劣るリーグ8位の数字です。際どい試合になっても最後はカニングハムという『圧倒的な個』で勝利をもぎ取り、9勝2敗の成績を収めています。
ウィザーズ戦も第4クォーター残り1.9秒で3点ビハインドと敗色濃厚でした。最後のピストンズのオフェンスはカニングハムがスローインを担当し、ダンカン・ロビンソンに3ポイントシュートを打たせるプレーをセットしたものの、絶対に打たせたくないウィザーズのフィジカルなディフェンスもあって、パスを出す前に2人が転倒して万事休すと思われました。
しかしその瞬間、プレーセットに関与していなかったデイニス・ジェンキンズにパスが出ます。コート上の全員が虚を突かれたようなタイミングで放たれたカニングハムのパスは、シュートの構えをして待っていたジェンキンズの手元に寸分の狂いもなく収まり、美しさすら感じるキャッチ&シュートがリングに吸い込まれました。ドラフト外でNBAに入って2年目のジェンキンズは、この試合まで3ポイントシュート成功わずか1本のみ。その1.1秒前に決めた追撃のシュートに続き、カニングハムの神通力が宿ったかのようなキャリア3本目の成功が劇的な同点弾となったのです。
オーバータイムになればカニングハムが勝利を決めてくれます。ただし、それは個人技からの得点ラッシュではなく、ビハインドになってもあわてることなく、チーム全体を落ち着かせながら、時にはスティールで、時にはヘルプでのブロックショット、オフェンスリバウンドを奪ってのセカンドチャンスなど、試合の全局面におよぶ決定的なプレーです。時間と点差、そして試合全体をコントロールする支配力がカニングハムを特別な存在にしているのです。
この試合、カニングハムは46得点を奪ってのトリプル・ダブルよりも評価すべきスタッツがあります。それは31本ものフィールドゴールを外したこと。かつてコービー・ブライアントが記録した30本を上回る1試合での最多記録でしたが、それだけミスをしても下を向くことなくシュートを打ち続ける、コービーが重なって見えるかのようなメンタリティこそが、今のカニングハムの強さです。
ドラフト1位指名のカニングハムですが、評価されていたのはインテリジェンスの高さであり、得点面においてはシュート能力の低さもあって、大きな期待はされていませんでした。NBAデビューから瞬く間にチームを自分の色に染めましたが、再建を始めたばかりのピストンズはなかなか勝てず、カニングハムもケガで離脱するなど苦しいシーズンが続きました。
そして2年前に悪夢のような28連敗が起こります。その22試合目で4得点に終わったのを機に、カニングハムは明確にギアの入れ方を変え、以降は勝利を挙げるまで20本以上のフィールドゴールを打ち続け、スコアリングで引っ張る姿勢を明確に打ち出しました。負け続けた日々の地道な努力が、苦手だった得点面での大きな成長に繋がったのです。
あの28連敗の試合後、カニングハムは「僕らはこの負けからも学んでみせる。試合をコントロールし、自分たちの戦い方を見いだし、選手同士を上手く組み合わせて、継続して勝てるチームを作る。それを追い求めているんだ」と言いました。その言葉通り、今シーズンのカニングハムは自分のミスに下を向かずに前を向いて戦い続け、それだけでなくチームメートを鼓舞し続けるリーダーシップでピストンズを勝負強いチームに変えています。
