チーム事情に合う八村、開幕スタメンもあり得る
日本人初めてのドラフト1巡目指名を受けた八村塁。指名したのはジョン・ウォールとブラッドリー・ビールをチームに加えてから強豪チームへの階段を上っていったワシントン・ウィザーズでした。今シーズンは開幕から内紛が続いたことで、期待を大きく裏切って下位に沈み、主力のトレードも噂されているチームが、大学3年生で『即戦力候補』と認識される八村を加える選択をしました。
チームを編成するGMが決まっていないウィザーズが、ウォールとビールをトレードに出して再建する気持ちが薄いことを示したような八村の指名は、見方を変えれば単に即戦力というだけでなくウィザーズのチーム事情にあったポジション、能力の持ち主と判断されたことになります。
昨シーズンのウィザーズはインサイドにドワイト・ハワードを獲得したものの、ケガでほとんどプレーせず、センターには若いトーマス・ブライアントが納まりました。動けるセンターはアウトサイドから打つのも好きなタイプで、ウィザーズのオフェンスはポジションレスの方向に動きそうです。
高さのあるセンターがポジションレスというのは、4番ポジションでプレーするであろう八村にとっては組みやすい相棒で、状況を見て2人で柔軟にインサイドとアウトサイドのポジションを変えていきそうです。プレータイムを争うライバルになるのはボビー・ポーティスですが、そもそも残留するかどうかが不明で、八村の開幕スターターもあり得ます。
とはいえ、このチームの主役はやはりウォールとビールです。ウォールはまだケガからの復帰時期が見えてこないのですが、そのスピードはNBAの中でも特別で、ディフェンスを置き去りにして1人で速攻を決めることもあります。八村としては、そのウォールを追いかけられる走力があることがポイントで、非常に相性が良く、パスターゲットとしての信頼を得られれば早期に重要な戦力になれるはずです。
合わせのプレーを徹底しフィニッシャーの役割を
エースがいるチームなので、八村は自分でプレーメークするのではなく、合わせのプレーを徹底し、フィニッシャーとしての役割を果たすことが大事になります。これはむしろプラスの面が大きく、自分がやるべきことが明確であり、得意のショートレンジのジャンプシュートでフィニッシュするシーンがルーキーシーズンから見られそうです。
課題になるのはハーフコートオフェンスでの3ポイントシュート。ウォールとビールにスペースを与えるためのプレーも多くなるはずで、コーナーでパスを待ってしっかりと決めきる必要があります。エースに任せるプレーが多くなる試合終盤にコートに立っているためには、夏の間にコーナーからの3ポイントシュートを徹底的にトレーニングしなければいけません。
アメリカに渡ってからの成長も評価されており、ウォールとビールに上手く合わせ、3ポイントシュートなどの能力がこれから伸びるであろうこともウィザーズに期待されたのでしょう。
規律を欠いて内部崩壊したチームを立て直すキーマンに
これらプレーの面だけでなく、ドラフト前に『即戦力ながら素材型』に加えて『バスケットに対する姿勢、性格』といった八村の日本人らしい規律面が評価されるようになりました。そしてウィザーズが抱えている問題はプレー以上にチームの内面でもあります。
昨シーズンのウィザーズは規律とリスペクトを欠き、ロッカールームでの問題ばかりが注目され、実質的に内部崩壊していました。それはコートの上でもオフェンスからディフェンスへの切り替えが遅いなど、「ポテンシャルは高いけど規律とハードワークのないチーム」になったことで、成績もガタガタと音を立てて崩れていったのです。
オールスタークラスが2人もいるチームとは思えないプレーぶりとロッカールームの混乱に、フロントは八村の規律面にも大きな期待を抱いたのではないでしょうか。
『ウォールの高速突破から八村へのアリウープ』というプレーが想像しやすいだけに、日本のファンからするとワクワクする指名になりました。その一方でウィザーズが期待しているのはプレーだけでなく『ロッカールームの規律』という日本人らしさです。
苦汁を飲んだシーズンを経て、ウィザーズは今年唯一となる1巡目指名権を八村に使い、将来を託しました。噛み合えさえすれば一気に成績が上がる可能性を秘めたチームだけに、コートの上でもロッカールームでも八村がウィザーズのキーマンになるかもしれません。
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— バスケット・カウント (@basket_count) 2019年6月13日