マオールHC「良いパサーが良いシューター」

長崎ヴェルカは10月29日に京都ハンナリーズをホームのハピネスアリーナ(長崎市)に迎え91-73で快勝。これで連勝を9に伸ばす快進撃を見せつけ、西地区のトップを走る長崎。この試合でも試合開始直後から相手のターンオーバーを誘い出し、開始2分半で10-3のランに成功。第3クォーターには3点差だった前半から15点差まで引き離して勝利を手繰り寄せた。

後半に強さを発揮しているチーム状況にモーディ・マオールヘッドコーチは「チーム内での競争心の高さが関係している」と振り返った。

10試合を終えて、チームの完成度は高いレベルを維持している。チームの3ポイントシュートが得点に占める割合は45.0%で、現時点でリーグNo.1の数字(第6節終了時点)。今の長崎は玉離れが非常に良い。無理に個人で打開しようとするシチュエーションは少なく、それぞれが役割を発揮している。

長崎を創成期から支えるベテランポイントガードの狩俣昌也は、悔しい結果に終わった昨シーズンのチーム状況を振り返り、伊藤拓摩ゼネラルマネージャーに自分より能力の高いポイントガードの補強を打診していた。チームのことを第一に考える狩俣ならではの提案に白羽の矢が立ったのが、前シーズンは秋田ノーザンハピネッツで全試合に出場したエースガードの熊谷航だった。彼の加入によってオンコートプレーヤーのボールタッチは目覚ましく増え、共通認識の下、良いシチュエーションで効率の良いシュートを決められている。マオールヘッドコーチは熊谷のゲームコントロールについて「正しいプレーをして、良いパスを出し、良いシューティングシチュエーションを作っている」と高く評価している。

シックスマンながらチームトップの平均22.1得点を記録するスタンリー・ジョンソンもまた自分の役割を徹底する。Bリーグ初年度となる今シーズンは試合の開始をベンチで静観し、試合の状況を観察している姿がうかがえる。レフェリーのジャッジに苦しむ1年目の選手が多い中、ジョンソンは器用に自分の持ち味であるボールプッシュと屈強な体躯を使って、ドライブからフィニッシュに持ち込む瞬間にコンタクトをし、バスケット・カウントを獲得するシチュエーションも多く見られる。チームメートも彼のプレースタイルを理解しているからドライブレーンの確保がしやすい動きをし、フィニッシュが難しければ外角へのキックアウトパスを選択できるようにスペーシング良く待ち構えている。

その外角にアジアカップでも韓国代表として活躍したイ ヒョンジュン、日本代表の馬場雄大らが待ち受けている。データでも先発の熊谷、イ、馬場、ブラントリー、アキル・ミッチェルは3ポイントシュート成功率がブラントリーを除き、平均40.0%付近を推移している。除いたブラントリーでもアテンプトが6.3本に対して34.9%と、長崎でのキャリアでは一番の成功率を収めている。

最後にマオールヘッドコーチはチームメートの特性を理解し、正しいプレーを遂行して高確率でシュートを決めている選手たちについてこう語った。「高いシュート成功率を打ち出すには、いつどのような状況でボールが来るのかわかっている必要がある。そしてそれが自信を持って打てるシュートへと繋がっていくんだ。良いパサーが良いシューターなんだよ」