ガード陣とビックマンのコンビプレーが生命線に
ビクター・ウェンバニャマに続いてステフィン・キャッスルがルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝き、さらにドラフト2位指名権を引き当ててディラン・ハーパーを獲得と、この3年間のドラフトで次々と有望株を手に入れたスパーズは、いよいよ2019年以来遠ざかっているプレーオフ進出を目指すシーズンを迎えます。
オフの間に更に身長が伸び226cmとなったウェンバニャマは、その身長に似つかわしくない多彩なスキルが特徴ですが、純粋なセンターとして起用するにはフィジカルが弱く、どんな役割でチーム戦術を作り上げるかは悩ましいものがありました。しかし、昨シーズン途中にディアロン・フォックスを獲得し、ガード陣のスピードを生かした突破が加わったことで、ウェンバニャマをストレッチビッグとして活用する形が見えてきました。
今シーズンは、この形を本格的に突き詰めることになります。オフにはストレッチタイプのケリー・オリニクを獲得し、ベンチメンバーでも同じオフェンスの形を導入できる準備を整えました。フォックス、キャッスル、ハーパーのガード陣とビックマンのコンビプレーが機能することは、スパーズが勝率を上げるための大前提です。
コンビプレーが機能すれば、キックアウトからウイング陣の3ポイントシュートが増えてきますが、昨シーズンは35.7%と成功率に課題があり、個人レベルで見ると40%を超えていたのはハリソン・バーンズのみでした。プレー精度の向上はチーム全体の課題ですが、特にウイング陣にはプレーの多彩さよりも精度が求められます。
ディフェンスにおいても、ウェンバニャマは強力なリムプロテクト力を発揮しますが、ウイングとしては左右の切り返しについていけない弱点を抱えており、できるだけゴール下にポジショニングさせたいところです。言い換えれば、ガード陣がスピードを生かして3ポイントシュートを防ぎ、ドライブさせてウェンバニャマが待ち構えるペイントエリアへ誘導するチームディフェンスが有効になります。個々のマッチアップで守り切ることも大事ですが、それ以上にチームとしての守り方が重要になります。
常識外のサイズとスキルを持つウェンバニャマは無限の可能性を感じさせますが、弱点も明確に存在します。この特殊な選手を中核において勝つための戦術とは何か。それを追求していくことが、プレーオフ進出へのキーポイントとなります。