文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「単純なことをしっかりやらなければいけなかった」

中地区2位として臨んだチャンピオンシップの初戦は、アルバルク東京に75-90で敗れた。

第1クォーターに15-26と突き放されたが盛り返し、終盤まで競った展開に持ち込んだものの、最後は15点差を付けられた。ディフェンスとリバウンドの差が勝敗を決する、プレーオフらしい試合だったと言える。

三遠ネオフェニックスの正ポイントガードである鈴木達也は、ロバート・ドジャーとジョシュ・チルドレス、点取り屋の2人にボールを集めて攻めが単調になった立ち上がりのゲームコントロールを悔やむ。「点を取るのは外国籍選手でいいんですけど、それに絡むような貢献を僕たち日本人選手もしなければいけない。僕たちも積極的にゴールにアタックするとか、オープンシュートをしっかり打つとか、単純なことをしっかりやらなければいけなかった」

それでも鈴木は、第2クォーター半ばにコートに戻って来た時にはしっかりと軌道修正ができていた。ここからチームが最も輝いた時間を演出し、22-37と15点あったビハインドを3点にまで縮めて前半を終えている。

この5分半の間、三遠はA東京を圧倒していた。リバウンドからの速攻が連続で飛び出し、イージーシュートのチャンスを作っては沈めていく。こうしてリズムが生まれると、それまでは落ちていたミドルレンジからのシュートも決まりだす。鈴木は素早く的確なプレー選択で流れを作り出し、さらに自らもこのクォーターだけで7得点を挙げている。

「セカンドチームがしっかりやってくれて、それをきっかけにスタートの僕たちも勢いに乗っていけました」とチームメートに感謝し、「ジャンパーは思い切り良く打てました」と自身の得点を振り返りながらも、「ポイントガードは自分の活躍よりチームの勝利なので。勝てなかったのは僕の責任」と鈴木は反省の言葉を語る。

ギャレットを『バチバチ』に抑えることで流れを呼んだ

ただ、もう長いリーグ戦の1試合ではない。反省を生かすのは『今後』ではなく『今日』、求められるのは『成長』ではなく『結果』だ。今日の第2戦に勝って『第3戦』に持ち込み、押し切るしかない。「相手はタレント揃いでタフなシュートも決めてくるので、攻撃回数を増やされるとキツい」と言うように、まずはリバウンドやルーズボールの争いで負けないこと。そして相手のキーマンを止めることが必要だ。

ディアンテ・ギャレットは第1戦で19得点と『控え目』だったが、彼がA東京のキーマンであることに間違いはない。第1クォーターは正中岳城とのマッチアップが主だった鈴木だが、第2クォーターにはギャレットを抑え込んでいる。

「マッチアップをいろいろ変えていくやり方だったのですが、僕がギャレット選手に付く時はバチバチやって。向こうもミスマッチを突いてこようとするので、それを簡単にやらせないよう、正当なディフェンスで」と鈴木は振り返る。

ギャレットと言えども万能ではない。激しいバンプを繰り返す鈴木の『バチバチ』は明らかに嫌がられていたし、抜かれたシーンも2つのファウルで止め、リズムを乱した。速攻が出せただけでなく、ギャレットを封じていたことが三遠の反撃を可能にしていたのだ。

もちろん、武器はチーム一丸で繰り出すトランジションの展開だ。「ディフェンスリバウンドを取れる時間帯、速攻につながるチャンスが多くて、そこは自分たちの武器です。相手も脅威に感じていると思うので、そこはしっかり出していきたい」と鈴木は語る。

「プレッシャーはもちろん感じますけど、楽しんでいきたい」と鈴木。三遠が秘める爆発力を発揮できるかどうかは、彼のコントロールにかかっている。