中山拓哉

秋田ノーザンハピネッツの中山拓哉は、特別指定での在籍時代を含めると今シーズンでチーム10年目を迎える生え抜きの選手。秋田のチームスタイルであるハードワークとタフなディフェンスを体現するチームの顔の一人だ。28勝32敗に終わった昨シーズンの反省を経て、今シーズンのステップアップに必要なことを聞いた。

「オフェンスを改善できれば、もっと上に行けるチャンスは広がっていく」

──昨シーズンはどのような1年でしたか?

接戦の試合が多く、そのほとんどは最後に勝ちきることができなかったもったいないシーズンでした。そして勝率5割を切ってしまったことも悔やまれます。その理由として、終盤でシュートを決めきれない、ターンオーバーをしてしまう場面が多かった印象です。ヘッドコーチが指示したことをチームとしてしっかりと遂行できていない、それができていれば違う展開になった試合はたくさんありました。ディフェンスはある程度、良かったのですが最後にリバウンドを取りきれなかったこともあり、リバウンドとターンオーバーが課題として浮き彫りになりました。

昨シーズンもディフェンスのレーティングではリーグ上位(24チーム中7位)です。言い方は悪いですけど、あのオフェンスでも半分は勝てました(笑)。そこは伸びしろだと考えています。オフェンスが改善できれば、もっと上に行けるチャンスは広がっていく。オフェンスでチームの意思統一をしっかりして、みんなが同じ絵を描いてバスケットをできるのかは大事です。そのためにも自分が率先してコミュニケーションを取っていきたいです。

──自身のパフォーマンスをどのように評価されていますか?

個人としても、あまり上手くいかなかったシーズンでした。基本的に接戦で迎えた終盤に出場することが多かったのですが、僕がもっと上手くプレーできていれば、チームをコントロールすることができたと思います。チームが負けてしまうことに責任を感じ、悔しいシーズンでした。

──スタッツについて意識する部分はありますか?

チームが勝つことが一番なので、自分のスタッツにはこだわっていなかったです。ただ、試合に勝てていないですし、僕自身がチームに対してやるべきことはもっとあります。今のスタッツでチームがチャンピオンシップに出場しているのなら、それで良いと思っていましたが、今はチームを勝たせるために、自分のスタッツの底上げも必要だと思っています。

──今シーズンのメンバーについて、どんな印象を抱いていますか?

ディフェンスは本当にハードにできて、フィジカルの強い選手たちがそろっています。また、サイズアップをしたことで、いろいろなディフェンスができると思います。オフェンスでいうと新加入のキアヌ・ピンダー選手、ヤニー・ウェッツェル選手の2人は本当に個の能力が高く、オフェンスが苦しい局面を迎えた時も打開することができる。彼らの加入によっても、オフェンスは良くなると思います。

「チームのことを考えて必要なことを伝えていかないといけない年齢に」

──バックコートで一緒にコンビを組むことになるポイントカードに菅原暉選手、アジア枠でレバノン代表のアリ・メザー選手が加入しました。2人との連携については、どのようなイメージを持って臨みますか?

暉は自分で得点を狙いながら、いろいろなことができるタイプです。彼と一緒に出ている時は、どちらもポイントガードができる、2人でオフェンスを作っていって状況に応じてお互いのポジションを変えていくような形になると思います。アリは生粋のポイントガードで、僕がハンドラー役を担うのではなく、彼が主体となってオフェンスを組み立ててくれる。彼と一緒の時は、自分が得点を取りに行く、リングに対してアタックしていくことが大切。誰と出るかで、自分の役割も違ってくると感じています。

──在籍10年目とキャリアを重ね、30代になったことでベテランになったと感じますか。

もう自分のことだけではなく、チームのことを考えて必要なことをどんどん伝えていかないといけない年齢になっていると思います。長く在籍していますし、新しい選手にチームルールなどを教えていかないといけない。また、秋田がずっとこだわっている激しいディフェンスを自分が誰よりも実践しなければいけない、そういったところへの責任感はあります。古川孝敏さん(現・京都ハンナリーズ)と一緒に長くプレーしていたこともあって自分がベテランだという感覚はありませんでしたが、年下の選手が増えてきて意識するようになりました。

──2021-22シーズン、秋田にとって初めてのチャンピオンシップ出場を果たした後、ここ3シーズンはリーグ中位の位置から抜け出せずにいます。優勝に向けてまずは越えないといけない壁が存在しますがどのような思いを持っていますか?

チャンピオンシップに出ることが決まった時の秋田の皆さんの盛り上がりはすごかったです。いつも盛り上げてもらっていますが、チャンピオンシップに出場することで皆さんをもっと盛り上げることができると感じました。能代工業(現・能代科学技術)が強かった時代の熱気を、自分たちが勝つことで再び秋田にもたらすことができれば面白いと思います。リーグ全体のレベルも上がっていて、チャンピオンシップ出場の難易度は毎年、上がっています。ただ、秋田のため、そして一選手としてチャレンジしたい舞台なので、今シーズンこそあの舞台に戻りたいです。

──リーグ全体で見れば、秋田は地方のスモールマーケットのチームという立ち位置です。そのチームが資金力のあるビッグクラブを倒すことの面白さだったり、地方から大都市のクラブを倒したい。環境の不利を覆してやる。といったアンダードッグ精神のようなものは意識しますか?

秋田に比べて人口が圧倒的に多く、予算も大きいビッグクラブと呼ばれるチームを倒すことは、めちゃくちゃ面白いことだと思います。チーム全体としても、秋田からやってやろうという気持ちです。個人としても、自分たちより規模の大きいチームや、日本代表がいるチームを相手にすると「やってやろう」というアンダードッグ精神の気持ちはより強くなります。