
WNBAでのプレーを夢見て海外挑戦を続ける馬瓜ステファニーは、海外との文化のギャップに当初は戸惑いながらも、熱狂的なファンが存在するスペインリーグでプレーをする楽しさを見出した。スペインでの生活や自身の成長について語ってもらった。
海外でプレーをする時にも欠かせないもの
──海外でのシーズンは何年過ごしましたか?
スペインだと3シーズン目になります。今はサラゴサで2シーズン目を迎えているところです。
──海外での一人暮らしにも慣れましたか?
最初はどこで何を買ったらいいか分からなくて、なんて書いてあるのかも分からず「これは何?」みたいな感じでした(笑)。今は、スペイン語の勉強もして、結構聞き取れるようになってきたので割と生活には慣れましたね。
──スペインでは主食は何を食べていますか?
ご飯を持って行ってます。ご飯のストックは切らさないようにしています。
──大和魂ですね(笑)。
そこだけは欠かせないですね、ホントに。チームで試合前に提供される補食のほとんどが、リンゴやバナナとかパンなんですよ。だから自分でご飯を持って行ってます。
──おにぎりを作って持っていっているのですか?
いや、炊飯器を持って行くんですよ(笑)。弁当型の炊飯器でご飯を炊いて、試合前に食べています。
──海外でのプレーには慣れましたか?
慣れてきましたね。最初は日本だったらここまでやるのに、こんなにやらないんだというギャップに戸惑い不安になるところもありました。人それぞれという考え方があって自分自身に任されてる部分が多いのですが、今では逆にその方がやりやすいです。
──具体的にはどのような部分で苦労をしましたか?
言葉もそうですが、具体的には練習前とか試合前の準備ですね。自分だったら絶対に1時間半前に体育館にいて準備をするのですが、みんなは10分前に来てバッシュを履いてすぐに始めます。ストレッチからみんなで行うというリズム感に最初は慣れなかったです。バスケットの話だと日本では、このタイミングでみんながこれをするといった明確なルールが多いと思うんですが、こちらは自由なことが多いです。それでもみんなは頭が良いから、どの動きに対しても合わせができるので、それはすごいなと思っています。
──実際に日本とのレベルの差は感じますか?
正直、日本もすごいと思います。遂行力というか、一つのチームとして完成度があるのは、日本の良いところです。逆に言えば、ウチのチームは始まってまだ2週間しか経っていないですが、一人ひとりの責任感とか気持ちが強い。シーズンを戦っていく過程で、しっかりと出来上がっていく力があります。相性とかもちろんあると思いますが、どちらも高いレベルだと思います。

「マジで友達みたいな距離感です(笑)」
──今シーズンのチームはスペイン国内ではどこに位置していますか?
昨シーズンはユーロリーグに出場したチームです。今年もユーロリーグの予選を戦いますが、予選はホーム&アウェー形式の2試合で、1勝1敗の場合は得失点差でユーロリーグ進出チームが決まります。それに負けたらユーロカップ(ユーロリーグの下部大会)への出場となります。チームとしての歴史は浅いですが、スペイン国内で言うと去年はリーグ2位だったので強いほうのチームになります。
──試合の雰囲気はどうでしょうか?
正直ここがスペインの一番良いところですね。ファイナルの時は、1万人くらいの観客がホームチームの応援で来てくれます。
──そんなに来るんですか!?
すごいんですよ、本当に!自分たちのファンは、ヨーロッパの中でも結構すごいほうなので、それが今は楽しいですね。サッカーのバルセロナのサポーターのように吠えたりします。だから良いプレーをしたらその分、歓声が返ってくるし、悪いプレーをしたらまたその分がブーイングとして返って来るので分かりやすいですよね。
──そこまで熱狂的だと、外出先でも「あ!ステファニー選手だ。写真撮ろう!」というようなこともありそうですね。
あります、あります。子供たちもいっぱい来るし、大人の方でも会場の入場口の両サイドにいて聞き取れないのですが、スペイン語でまくし立てて話す人がいっぱい来てくれていて面白い距離感です。
──距離感が近いのですか?
はい、マジで友達みたいな距離感です(笑)。私は、体育館の近くに住んでいるので歩いて帰ると、ファンが隣に来て「頑張れよ」とか言われながら一緒に歩いたこともあるので普段から楽しんでいます(笑)。
──3シーズンをスペインでプレーして成長した部分や、得たものは何ですか?
最初のシーズンに所属したチームはあまり強くなかったのですが、それでも強豪のチームに対して勝ったこともあったり、スペインのリーグはこういうものなんだなということに慣れていくシーズンでした。2年目では、スペインリーグがスペイン人だけじゃなくて、アメリカ人だったり様々なところから選手が集まってくるので、その人たちに対する戦い方だったり、私が3番としてプレーする機会が多くなって、外のシュートが増えたりと、いろいろな経験させてもらっています。
──通訳はいないのですか?
いないです。プレー中は基本、英語で話します。あとは、フランスの選手が2人いて、コーチがフランス人なのでフランス語も入ってきています。しかも、そのコーチはスペイン語とフランス語しか喋られないから「コミュニケーションどうやって取るの?」ってなってしまっています。スペイン語の勉強は頑張っていますが、ノリでなんとか乗り切ることもあります(笑)。
──3シーズンを海外で過ごしましたが、今後も海外でプレーを続ける予定でしょうか?
引退は日本でしたいと思っています。でもこの先にはオリンピックもあるし、今のチームとは2年契約で来年が更新のタイミングになり、他の国でプレーをするのか、日本に戻るのか、悩んでいます。ただ、海外に出た一番の理由はやはりWNBAでプレーをすることで、海外でプレーすることでWNBAの関係者から見てもらえる機会は増えたと思います。そこに繋がるコネクション作りなど、まずはそこを達成するというのはこれまでも変わらずに一番高い目標になっているので達成するためにこれからも頑張っていきます。
──最後に、日本の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
遠く離れた国でプレーをしていて、自分の試合を観る機会もなかなかないと思いますが、姉(馬瓜エブリン)と週一で近況を報告するポッドキャストも配信しているので聞いてくれたらうれしいです。みなさんと日本代表でまた会えるように、頑張りたいと思います。