
「自分からやってほしいことを伝えることも意識しています」
8月27日に開幕した『関東大学バスケットボールリーグ戦』は4試合が終了し、東海大は3勝1敗とスタートダッシュに成功している。9月3日に行われた日本大戦では、序盤から持ち味とする走るバスケットで主導権を握り、すべてのクォーターを20失点以下に抑えるタフなディフェンスを40分間を通して続け、81-54で勝利した。
東海大のリーグ戦の過去3シーズンの成績は、3位、5位、3位。優勝をあと一歩で逃すシーズンが続いている。優勝を目指すチームにおいて、1年生ながら欠かせない戦力になっているのがウイングプレーヤーの十返翔里だ。
十返は八王子学園八王子高時代から、世代屈指のスコアラーとして活躍。巧みなボールハンドリングとクイックネスを武器にしたドライブを得意とするスラッシャーは、昨シーズンに特別指定選手として群馬クレインサンダーズでBリーグデビューも果たし、今夏にはU23男子日本代表の一員としてカナダで開催された国際大会『GLOBL JAM 2025 Canada Toronto』にも出場。最終戦となる3位決定戦のカナダ戦で14得点を挙げ、チームの勝利に貢献した。
十返は日本大戦を「出だしから高いインテンシティのディフェンスを発揮して、速攻を40分間出せました」と振り返る。代表活動の影響で連携不足のままで迎えたリーグ戦序盤の自身のプレーについては、「周りと徐々に合わせていかないといけません。コミュニケーションで解決できるとこもあると思うので、できるだけ意思の疎通をとり、周りに合わせるだけでなく、自分からやってほしいことを伝えることも意識しています」と続ける。

「少しでも攻撃の要としてプレーしていきたい」
また、大きなステップアップを遂げたカナダでの経験については次のように手応えを語った。「最初は思うようにプレータイムがもらえなかったのですが、そこでめげずにベンチでアクションを起こしていたら、網野友雄ヘッドコーチが試合に出してくれました。そこで、自分がどれだけできるかを証明したいと思っていたので、最終日にスタッツを残せたのは大きな財産になりました」
そして、さらなる成長に貪欲な姿勢を見せる。「縦の動作であるドライブは通用しましたが、もう少しシューターの動きを磨いていかないといけないです。リーグ戦でも3ポイントシュートのアテンプトが少ないのは、自分の課題です」
十返はまだ1年生で、今の段階でチームの貴重な得点源となっているのは側から見れば評価に値することだ。だが、彼にそういった意識はない。
「チームが上に行くには、もっと自分もたくさん仕事をしていかないといけません。今はプレーがドライブだけになってしまっているので、その良さを消さず、いかに3ポイントシュートも決めていけるか。それができるようにならないとプロや代表選出に繋がっていきません」
1年生ながら、十返は主力の1人として強い覚悟を持ってコートに立っている。「春に比べたら自分の持ち味を出せていますが、もっと証明しないと。入野貴幸ヘッドコーチから『リーグ戦で殻を破ってほしい』と言われています。少しでも攻撃の要としてプレーをしていきたいです」
「殻を破ってほしい」という入野の言葉を、十返は下級生だからと一歩引かず、チームの中心としての覚悟を持つことだととらえている。「苦しい時間帯で、(轟)琉維さん、(赤間)賢人さんに頼ってしまうのは自分の悪いところです。『1年生だから』は言い訳でしかない。コートに立ったら学年関係なく自分が引っ張っていける選手になっていきたいです」