カワイ・レナード

オーナー出資企業がクリッパーズ残留を条件に高額支払いか

NBAコミッショナーのアダム・シルバーが、クリッパーズとカワイ・レナードのサラリーキャップ違反の契約疑惑について言及した。

これはクリッパーズオーナーのスティーブ・バルマーが出資していたカリフォルニア州のサステナビリティ事業会社『アスピレーション』が、2022年から25年にかけてクリッパーズでプレーすることを条件に、レナードに対して2800万ドル(約42億円)のスポンサー契約料を支払ったというもの。著名ジャーナリストのパブロ・トーレが自身のポッドキャストで「サラリーキャップ回避のための契約だった」という同社の元従業員の告発を報じている。

レナードが実際に同社の広告活動を行った実態はなし。現在同社は破産申請中だが、レナードは経営破綻後も、レオナルド・ディカプリオ、ドレイク、ロバート・ダウニーJr.といった同様の広告契約を結んだハリウッドスターよりも優先的に契約料の支払いを受けていたとみられている。

この件が報じられた後、クリッパーズは即座に疑惑を否定。「スティーブがカワイ・レナードに資金を渡す目的でアスピレーション社に出資したという主張は荒唐無稽だ。彼が同社に出資したのは顧客への誠実な対応と、環境保全の取り組みを掲げていたから」と声明で述べている。ただ、アスピレーション社は契約破綻前の2021-2222-23シーズンにはクリッパーズのチームスポンサーを務めており、共同創業者の1人が最近になって約350億円の巨額詐欺事件への関与を認めているなど、さまざまな要因から疑惑を払拭できているとは言いがたい。

ただ、バルマーは経済誌『フォーブス』の世界の富豪ランキング2025年版で10位にランクインするなど、NBAオーナーの中でも随一の資産家だ。マーベリックスの元筆頭オーナーであるマーク・キューバンが指摘するように、もしバルマーが違反行為を主導したならば発覚を恐れ、アスピレーション社を救済しただろう。実際に同社が経営破綻した際、債権者リストにレナードが関与する企業の名前が記載されていたことも、疑惑が注目される一因となった。

こういった状況を踏まえ、リーグ理事会終了後の会見でシルバーは「チーム、オーナー、選手などリーグを構成するメンバーを処分する場合、その責任はリーグにある」と、リーグ自ら調査を行うと語った。

「徹底的な調査を行う目的は、実際に不正があったのかどうかを明らかにするだめだ。世の中から大きな注目を集めるスポーツにおいて、大衆の印象によって下された結論が後になって完全に間違っていたと判明することもある。もし、私がバルマー氏、カワイ・レナードと同様に何らかの疑いをかけられている状況になったら、今回と同じく調査をしっかりと行ってほしいと願う」

リーグが今回の疑惑を事実と認めた場合、サラリーキャップ制度の根幹を揺るがす違反行為を犯したクリッパーズに厳罰が課されることは間違いない。すでに調査を開始しているリーグが、この一大スキャンダルに対してどんな結論を下すのかは、今シーズンのNBAを代表する出来事の1つとなるだろう。