「結局のところ、背はこれ以上は伸びない」
マーベリックスはアンソニー・デイビスの戦線復帰で上向きに転じた。直近の5試合でサンダーには敗れたものの、クリッパーズ、ナゲッツ、ヒート、ロケッツを撃破。それまで5勝15敗だったチームにはようやく勢いが生まれている。
その過程にライアン・ネムハードの台頭があったことは見逃せない。ペイサーズ躍進の中心選手であるアンドリュー・ネムハードの3歳年下の弟は、ドラフト外でNBAにやってきた小兵ガードだ。昨シーズンに兄がNBAファイナルをゲーム7まで戦い抜いた直後に彼はマブスと2ウェイ契約を結び、サマーリーグでデビューした。
マブスはカイリー・アービングが長期戦線離脱中だが、その復帰を待つ間のポイントガードとしてディアンジェロ・ラッセルを獲得していた。開幕から短期間はクーパー・フラッグをポイントガードとして起用し経験を積ませる中、メインでプレーメークを担うべきラッセルが周囲と噛み合わないプレーで評価を下げたことで、他のポイントガードにチャンスが回ってきた。指揮官ジェイソン・キッドが最初に試したブランドン・ウィリアムズはスピードと得点能力で結果を出した。その2番手として起用されたネムハードはパスファーストで周りの選手の力を引き出すタイプ。指揮官キッドはネムハードに先発を任せ、ウィリアムズはシックスマンに回すことを決めた。
速いテンポを作りつつ、デイビスにフラッグ、シューターのマックス・クリスティーの能力を生かすプレーメークがネムハードの持ち味。それでいて自ら攻める積極性も忘れず、ナゲッツ戦では28得点10アシストを記録した。
かつてNBAの歴史に残るポイントガードだった指揮官キッドはネムハードについて「チームメートがライアンと一緒にプレーすることを望み、楽しんでいる。良いタイミングでボールが出てくるのを分かっているからだ。それがポイントガードにとっては一番の評価だ」と語る。
ゴンザガ大のプレーメーカーとして大活躍したが、NBA入りにあたっては身長180cmというサイズのなさが問題視された。ドラフト前のワークアウトには実に20チームの招待を受けたという。しかし、彼を指名するチームはなかった。
「身長は生まれてからずっと付き合ってきた問題だよ。結局のところ、背はこれ以上は伸びないけど、この機会を生かして身長のことがもう話題にならないようにしたいと思っている」とネムハードは言い、こう続ける。「たくさんのチームの練習に行ったけど、結局自分に合わないチームだったんだろう。今の僕は正しい場所にいて、ここが僕の望んでいたチームだ。それは幸せなことだし、こうして成功をつかみつつある今は楽しいことばかりだよ」
Dallas trio combines for 84 POINTS in road victory!
Anthony Davis: 32 PTS, 13 REB
Ryan Nembhard: 28 PTS, 10 AST
Cooper Flagg: 24 PTS, 8 REB pic.twitter.com/sNiMXQlhax— NBA (@NBA) December 2, 2025
ネムハードがメインのポイントガードを務めてボールムーブが円滑になり、多くの選手が2桁得点を記録するようになって、チームは勝ち始めた。テンポ良くボールを動かす彼がその起点となっているが、特に相性が良いのはデイビスだ。デイビスの復帰とネムハードの先発起用のタイミングが合わさってマブスは復調した。
「いつも正しいプレーを心掛けているけど、ほとんどの場合はボールを預ければ後はAD(デイビス)が得点を決めてくれる。僕が難易度の高い判断やパスをする必要はないんだ。適切なタイミングで適切なスペースにボールを出せば得点になる」とネムハードは言う。
「僕のパスが彼の仕事を楽にしていると言われるけど、それは分からないな。ADはリムで得点するだけじゃなくミッドレンジでのスキルも多いし、ファウルをもらうこともできる。NBAでずっと活躍してきた偉大な選手なんだから。むしろ彼のおかげで僕のプレーはシンプルで済む。それでも、そうやってチームの勝利に貢献できるのは素晴らしいことだ」
自分自身の得点が伸びていることも、デイビスを始めとするチームメートのおかげだとネムハードは考えている。「ADはディフェンスを引き付ける。それで他の全員により多くのチャンスが生まれる。彼はパスも上手くて、バックドアカットに合わせてくれたりもする。そうやって試合の序盤にイージーシュートを決められると、やっぱり調子をつかむのは楽だよ」
デイビスもネムハードに良い印象を持っているのは間違いない。戦線復帰から素晴らしい活躍を見せることで優勝を狙えるチームへのトレードの噂が浮上しているが、デイビスは「僕のことよりライアンの契約問題のほうがずっと重要だよ」と冗談を言った。
ネムハードは2ウェイ契約で、レギュラーシーズンで50試合しかロスターに登録できないが、すでに18試合でロスター入りしている。今のマブスには空き枠がなく、標準契約に切り替えるには枠を空けなければならない。2月5日のトレードデッドラインを見据え、どこかでその決断を下すことになるだろう。
もっとも、それはネムハードの心配事ではない。「エージェントに全部任せている。確かに契約は大事だけど、僕はコート上で自分の仕事を高いレベルでこなすことに集中していればいい。そうすれば自然と解決する話さ」
