安藤誓哉

安藤誓哉が4シーズンプレーした島根スサノオマジックを離れ、横浜ビー・コルセアーズに移籍を決めた理由の一つに、ラッシ・トゥオビヘッドコーチが志向する『コレクティブ・バスケットボール』がある。人とボールが多彩に動くことで相手に絞らせないチームオフェンスを、1対1に大きな強みを持つ安藤がどのように表現するのかが楽しみになるインタビュー後編。

「オンボール主体のバスケに限界を感じている」

──安藤選手は谷口光貴選手とともにチーム最年長となります。加入初年度ではありますが、チームを引っ張ったり、時によっては改革したりという役割も担うことになりそうですね。

こちらも現状は、徐々に「みんなと一緒に」という感覚ですね。もちろん良いものを加えたいですし。新加入だからといってすごく遠慮するつもりもありませんが、チームが1年間積み上げたものがあるので、そこに対して僕がアジャストして、さらに良いものを加えたいという考えでいます。

──どんな「良いもの」を加えたいですか?

ボールを動かし続けるはもちろん大事ですが、止めることによって変化をつけられればなとは思っています。早いだけだと慣れるし、遅いだけでも慣れる。やっぱり強弱が大事なので。たぶん昨シーズンも、「ボールを動かし続けるのはいいけど結局誰が攻めるの?」と困ることが絶対にあったと思うので、そういうときに自分の得点力やオフェンスクリエイト力を出していけたら良いかな。僕自身もオンボール主体のバスケに限界を感じているので、そこのバランス、バリエーションを増やしていきたいです。

──オフボールの動きが多いバスケットで大事なのはどのようなことだと思いますか?

スペーシングや味方の連携が大事になってきますね。

──安藤選手はボールを持ってナンボ、というイメージが強いので、どんなプレーが見られるか楽しみです。

オフボールの動きも好きなんですけどね。昨シーズンもニック(・ケイ)とやったりもしていましたし。おっしゃるとおり、みなさんがあまり見たことがないプレーをすると思うので、楽しみにしていてほしいです。

──対戦相手も、新しいスタイルでプレーする安藤選手の止め方に苦労しそうですね。

チームとしてもいろいろ新しいパターンが生まれると思いますよ。

──オフボールの動きが増えることに加え、もう1つ変化がありそうなのがプレータイムです。島根では30分以上出場するのが当たり前でしたが、横浜ではプレータイムが凝縮され、「長い時間プレーする」ということを念頭に置いた島根時代とはパフォーマンスの出し方も変わるのではないかと想像しています。

確かにそうですね。たくさん出る試合もあれば、あまり出ない試合もあったり、プレータイムでのリズムの変化もありそうです。まだ対外試合も始まっていない状況なのでなんとも言えないところですが、パフォーマンスもきっと変わると思います。

──そういったところも含めて楽しみですね。

そうですね。ポジティブな意味で「どうなるんだろうな」って感じですね。島根では交代する時間がだいたい決まっていたけど、ビーコルではリズムが悪いときは交代が増えるかもしれない。そういう面でもより良いプレーをしたいです。ベンチに下がることをポジティブにとらえて、フレッシュにもう一度コートに立つ。そういうことも大事になってくると思います。

安藤誓哉

「新しいバスケットボールを楽しみたい」

──新天地での新シーズン、個人として掲げる目標や指標はありますか?

指標……ないな。そういうものを持たないタイプなんですよ。

──過去のインタビューで「目標を持たず、今をとにかく全力で戦う」とお話しされていたことをすっかり忘れていました。それは今も変わらないということですね。

まあ、だから逆に迷わないことが大事ですかね。いろんなオプションが出てくるスタイルなので、どうしても迷ってしまうこともあるだろうけど、自分をしっかり信じきる。「正解もなければ間違いもない」ぐらいの感覚で、新しいバスケットボールをしっかり楽しみたいっていうのはありますよね。やっぱり自分がバスケットボールを楽しんでいないとファンの方たちも面白くないだろうし、「楽しんでる姿が見たい」って言ってくださる人もいるし、そういう気持ちや期待を大事にしたいなと思います。

──「自分を信じきる」ことが大事とのことですが、安藤選手は学生時代から一貫してそこに関する苦労をしていないようにも見えます。

どうなんですかね。いやあ、わかんないな……。

──何かに大きく迷うことって、あまりなかったのではないかなと。

そもそも「信じよう」みたいなことをあまり考えたことがないですね。信じようと思えば思うほど逆に迷っちゃいそうだから。

──確かに考え込まないことも大事かもしれません。

うん。本当にそうだと思いますよ。たとえ勝てなくても……もちろん勝てないのは辛いですけど、やっぱりしっかりとバスケットができているかどうかに集中しないと。シーズンが始まってみないとわからないことが多いし、今から「何勝したい」とか考えていても仕方がないですからね。今は新しいチームの練習を大事にすることとと、仲間とコミュニケーション取ることに焦点を置いています。

──チームメートとは仲良くなってきましたか?

仲が良いかどうかはよく分からないですが、かなり話はしています。やっぱり1年間積み上げているチームに入るのは、なかなか簡単ではないので。自分から積極的に、常にコミュニケーションを取っていますよ。それはもう僕が絶対やりたいこと、やらなければいけないことだと思っているので。

──横浜BCのファンも、島根時代からのファンも、新天地での安藤選手のプレーをとても楽しみにしていると思います。どんなプレーを見てほしいですか?

躍動してるところ、見せたいっすね。自分としても新しいスタイルになるかもしれないですし、成長していきたいので、成長していくところも見てほしいです。