井上宗一郎

越谷アルファーズでの2シーズンを経て、多くの学びと経験を得た井上宗一郎。「プロバスケットボール選手とは何か」を再確認し、B1とB2のレベルの差も肌で感じてきた。3ポイントシュートを武器にしながらも、さらなる進化を目指す26歳は、今シーズンから仙台89ERSへ移籍した。新しい環境で自分自身を高め、チームに貢献する覚悟を語ってくれた。

「プロバスケットボール選手とは何かを再確認できた」

──このオフはどのように過ごされていたんですか?

延々と身体づくりをしていました(笑)。筋力が上がったし、体重も体脂肪率は変わらず5kgくらい増加しました。今シーズンはフィジカルでも頑張りますよ!

──2シーズンプレーした越谷での経験は、井上選手のキャリアにどんな影響を与えましたか? 

プロバスケットボール選手とは何か、というところを再確認できました。越谷で、ディフェンスやオフェンス、スペーシングなど、本当に細かい部分まで手を抜かずに指導をしてもらったことは、とても大きな学びになったし、キャリアの早い段階で気づけて良かったなと思うことがたくさんありました。

──2023-24シーズンにはB1昇格も経験されましたね。

外国人選手のケガもあって、最終的には優勝には届きませんでしたが、それでも『B1昇格』という大きな目標を達成できたことは、越谷アルファーズとして、埼玉県のプロバスケットボールチームとして誇らしいことでした。そして、そのチームの一員として参加できたことも本当に光栄だと感じました。ただ「自分自身はまだまだ成長しなきゃいけない」ということもその時に感じました。2年目はB1とB2のレベルの差を改めて知って「このままじゃだめだな」という気持ちにもなりました。

──どのようなところにB1とB2の差を感じましたか?

財政面での差はもちろん大きいですし、その分、選手としての責任にも差があると感じました。B2にももちろん良いチームはありますが、B1は選手、特に外国籍選手のレベルが格段に違いました。竜三さん(安齋竜三ヘッドコーチ)がよく言っていましたが、勝てるチームには独自のカルチャーというか、強い文化が根付いています。本当に強いチームは選手が入れ替わってもチーム力が変わらないどころか、さらに強くなっていくというイメージがあります。

井上宗一郎

「自分じゃないとダメっていうのを感じました」

──多くのオファーがあっただろうと想像しますが、その中で仙台に決めた理由は何ですか?

一番熱意を感じたからです。他のチームには正直「それ、自分じゃなくても良いんじゃないか?」と感じることもありましたが、仙台のプレゼンは「自分じゃないとダメなんだ」ということを感じました。ヘッドコーチと話す時間をたくさん設けてくれたことも良かったです。

──チームにはどんな印象を持っていますか?

メンバーもヘッドコーチも変わり、新たなステップを踏み出したところだと思います。上を目指せるチームだと思うので、僕もその一員として、1年目から結果を残していきたいと思っています。

──越谷では内外角のシュートなど多様なプレーでチームに貢献してきました。仙台では求められる役割に変化はありそうですか?

基本的な役割は大きくは変わらないと思いますが、求められることはもっと多くなっていくと思います。その中で、自分のストロングポイントをどれだけ伸ばせるかが大事かなと思ってます。

──井上選手の持ち味と言えば3ポイントシュート。他にどんなプレーでチームに貢献していきたいですか?

3ポイントシュートを打てなかった時に何をするか、ですね。僕はアウトサイドシュートがあるので、同じポジションの人の中ではスペーシングを取れるほうだと思いますし、ボールのない逆サイドでも、カッティングやスクリーンなどできることがたくさんあります。今僕が持っているアイディアはあまり多くありませんが、NBAを経験しているダン・タシュニーヘッドコーチは引き出しをたくさん持っていると思うので、教えてもらいたいです。

井上宗一郎

選手として「一生学び続けたい」

──201cmの上背でアウトサイドシュートを強みとする井上選手は、Bリーグの日本人ビッグマンとしては異色の存在です。プロを目指す意識が芽生えたきっかけや、今のプレースタイルを築くうえで影響を受けた経験を教えてください。

高校2年生の時に、JBLとbjリーグが統合されてBリーグが発足したのをテレビで見て、やっとプロバスケットのリーグができて、本格的に目指す場所ができたと実感したことが一番印象に残っています。大学の時は優勝した年もあれば、結果が出せなかった年もありました。特に3〜4年の時はコロナで練習が制限されたり、Bリーグも中断したりしていたので将来の不安を感じたことも覚えています。

学生の頃は国際試合をよく見ていました。ヨーロッパの選手がビッグマンでも3ポイントを打っている姿を見て、高校3年か大学1年生の頃には明確に「元々好きだったシュートの幅を3ポイントまで広げて武器にしよう」と考えていました。

──プロ選手としての理想や目指す姿はありますか?

順調に成長していって、30代ぐらいで優勝したいと思っています。メンタル面でもスキル面でも成長し続けて、最終的には自分がどれだけ優勝に貢献できるかにコミットしていきたいです。

──「30代ぐらい」と言われていますが、今すぐにでも掲げられる目標にも感じられます。

今はまだチームを勝たせられるような選手ではなく、これからチームにどれだけ貢献して力になれるかという段階だと思っています。その段階をどんどん上げていきたいです。そして、日本代表が最高成績を収めた時に僕もその一員でいたいと思っています。チームとしては本当に勝ちたいです。僕はまだチャンピオンシップを経験したことがないので、仙台と一緒に大きくステップアップしていきたいなと思います。

──現在26歳。まだまだ成長したいと考えているのですね。

そうですね。「一生学び続けたい」みたいな感じです。バスケはできるようになるのが分かりやすいから頑張ろうって思えるんです。僕は多分、人よりできないことが多いから、ちょっとずつできるようになるのが楽しいんです。

──最後に応援してくれる皆さんにメッセージをお願いします。

東北に住むのは初めてですが、僕は札幌出身なので寒いところは結構強いと思います(笑)。東北の人は気候が寒い分『熱い』とよく聞くので、 ぜひ会場を盛り上げてほしいな、と思っています。ゼビオアリーナ仙台という本当に素晴らしい会場で皆さんと会えることを楽しみにしています。